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決着の三分後
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「どうなった……!?」
砂埃が晴れる。気づけば山のようにいた骸の姿はどこにもなくて、残っていたのは円形に削り取られた地形、クレーターと、両膝をつくルーティ。そして彼女に槍を向けるザラキアの姿だった。
「終わりだ、ルーティ。これ以上は不要な苦しみを生むだけだ」
「うっ……」
フードを目深に被り、ルーティは俯く。
「さあ、魔王様と我に詫びろ。あとついでに婿にもだ」
「ううっ……!」
何かをこらえるようにルーティは頭を抱えた。その様子を怪訝そうに見つめるザラキアだったが、突如響いてきた爆音に思わず体を引いた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん、ザ、ザラキアなんかに負けちゃったぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「あらあら」
ルシファルは困ったように声を漏らしたが、私とザラキアはそれどころじゃない。あの人見知りの小さな体躯のどこにこんな声量が隠れていたのか、疑問しかない。頭の奥でガンガンと反響するのを堪えて音源地を確認すると、「な、なんかにとはなんだ!!!!」と必死に叫ぶ彼の姿があった。声量も迫力も微塵も追いついていないので、どちらかと言えばザラキアの方が負けてるみたいだったが。
「だ、だって……ザラキアに負けるって、格下に負けたみたいでなんだかすごく悔しいから……」
「なんで我の評価がそんなに低いのだ!? 同じ四地王だから同格だろう!?」
「でも後輩だし……『奴は四地王の中でも最弱!』って言われそうなポジションだし……」
「なんだその認識はァ!? 我が王よ、この不埒物に何か言ってくださいませッ!!」
「わかるわ、ルーティ」
「だ、だよね!!」
「魔王様ァァァァァァァァァ!?!?」
感慨深そうに頷くルシファルに、ザラキアが思わず叫んだ。そんな姿を見て、ルーティは「ふ、ふひひ……!」と、堪えたような笑い声を漏らす。同時に、何かに気づいたようにこちらに視線を向けた。
「まおう……と、婿。その……ごめんなさい」
「私は別にいいわ。この人を侮辱されたことに怒ってただけだから。だから、貴方が許すかどうか。それだけよ」
三人の目がこちらに向く。勘弁してくれ、そんな思いを込めながら嘆息した。彼女の怒りはもっともなんだから。
「許すも何も、私も微塵も怒っていないので……大丈夫です。むしろ、私のせいで全員に迷惑かけちゃって、ごめんなさい」
「い、いや……私こそ」
お互いにいそいそとお辞儀をした。ルシファルがパン、と手を叩いて「これで一件落着ね」と微笑んだ。
「さて、みんなでご飯にでもしましょうか? いい魚があるのよ」
「それはよいですな! ご相伴に預からせてくださいませ!」
「まおうのごはん……たのしみ!」
「魚ってもしかして……」
脳裏に先日の、魔界の珍魚たちの姿が浮かんだ。嫌な予感を少しだけ抱えながらも、とりあえず黙っておいた。
砂埃が晴れる。気づけば山のようにいた骸の姿はどこにもなくて、残っていたのは円形に削り取られた地形、クレーターと、両膝をつくルーティ。そして彼女に槍を向けるザラキアの姿だった。
「終わりだ、ルーティ。これ以上は不要な苦しみを生むだけだ」
「うっ……」
フードを目深に被り、ルーティは俯く。
「さあ、魔王様と我に詫びろ。あとついでに婿にもだ」
「ううっ……!」
何かをこらえるようにルーティは頭を抱えた。その様子を怪訝そうに見つめるザラキアだったが、突如響いてきた爆音に思わず体を引いた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん、ザ、ザラキアなんかに負けちゃったぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「あらあら」
ルシファルは困ったように声を漏らしたが、私とザラキアはそれどころじゃない。あの人見知りの小さな体躯のどこにこんな声量が隠れていたのか、疑問しかない。頭の奥でガンガンと反響するのを堪えて音源地を確認すると、「な、なんかにとはなんだ!!!!」と必死に叫ぶ彼の姿があった。声量も迫力も微塵も追いついていないので、どちらかと言えばザラキアの方が負けてるみたいだったが。
「だ、だって……ザラキアに負けるって、格下に負けたみたいでなんだかすごく悔しいから……」
「なんで我の評価がそんなに低いのだ!? 同じ四地王だから同格だろう!?」
「でも後輩だし……『奴は四地王の中でも最弱!』って言われそうなポジションだし……」
「なんだその認識はァ!? 我が王よ、この不埒物に何か言ってくださいませッ!!」
「わかるわ、ルーティ」
「だ、だよね!!」
「魔王様ァァァァァァァァァ!?!?」
感慨深そうに頷くルシファルに、ザラキアが思わず叫んだ。そんな姿を見て、ルーティは「ふ、ふひひ……!」と、堪えたような笑い声を漏らす。同時に、何かに気づいたようにこちらに視線を向けた。
「まおう……と、婿。その……ごめんなさい」
「私は別にいいわ。この人を侮辱されたことに怒ってただけだから。だから、貴方が許すかどうか。それだけよ」
三人の目がこちらに向く。勘弁してくれ、そんな思いを込めながら嘆息した。彼女の怒りはもっともなんだから。
「許すも何も、私も微塵も怒っていないので……大丈夫です。むしろ、私のせいで全員に迷惑かけちゃって、ごめんなさい」
「い、いや……私こそ」
お互いにいそいそとお辞儀をした。ルシファルがパン、と手を叩いて「これで一件落着ね」と微笑んだ。
「さて、みんなでご飯にでもしましょうか? いい魚があるのよ」
「それはよいですな! ご相伴に預からせてくださいませ!」
「まおうのごはん……たのしみ!」
「魚ってもしかして……」
脳裏に先日の、魔界の珍魚たちの姿が浮かんだ。嫌な予感を少しだけ抱えながらも、とりあえず黙っておいた。
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