夢ﾉ瀬日記

7月17日

　跳ねる視界に酔う。雪が降り積る真夏の海に寝そべっていた。白い光が肌を強く焼いていく。涙色の水面が身体を抱き寄せる。ヒトの手足が形色を変えていき、黒い海月へ変身した。海蝙蝠が輝く深海を飛び回る。脂壁色ヤニカベイロの霧を飲む。骸と黒いグソクムシ。甘酸っぱい匂い。頭に雪が解けていく。
　また跳ねる視界に酔う。二度目も雪が降り積る真夏の海に寝そべっていた。白い光が肌を強く焼いて、涙色の水面が身体を抱き寄せる。ヒトの手足が形色を変えていく。変身したのは黒い海月。海蝙蝠が輝く深海を飛び回る。脂壁色の霧を飲む。骸と黒いグソクムシ。甘酸っぱい匂い。頭に雪が解けていく。
　……跳ねる視界に酔う。三度目も雪が降り積る真夏の海に寝そべっていた。白い光が肌を強く焼いて、涙色の水面が身体を抱き寄せる。ヒトの手足が形色を変えていく。変身したのは、黒い海月。海蝙蝠が輝く深海を飛び回る。何度も脂壁色の霧を飲む。骸と黒いグソクムシ。甘酸っぱい匂い。頭に雪が解けていく。

　目を覚ましたのは、浅い心の臓の中。脳に響く鼓動が黒雪を奏でる。光が包み、鼓動を置き去りにする。影が残る。虚空に果てる。光が包み、鼓動を置き去りにする。影が残る。虚空に果てる。繰り返す。果てる。果てる。
　散々な生命を浮かべる。甘い薬を飲み込む。水槽に閉じ込めた黒い海月をつつけば簡単に破裂した。泣いているヒトを夢が醒めるまで眺めていた。