猫とお姉さんと幽霊

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お姉さんと猫

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「あらあら、こんなところに捨て猫がいるわ。」

夕立のような激しいが降っていた日だった。

 住宅街の道路の端に置かれたダンボール箱の中で、僕はニャーニャー鳴いていた。

ビニール傘を手に持ちながらも、優しい口調でダンボールの中身に声を掛ける人がいる。

黒い長髪に胸が大きくてスタイルの良い女性だった。
 驚くべきことに彼女は豪風で傘が逆立っても、車が跳ねた水飛沫で背中を濡らしても、全く動揺しなかった。

彼女は辺りを見回し、人がいないことを確認すると、僕にこう声を掛けた。

「この猫ウチで飼おうかしら。」

ああ、なるほど。

そんな事を思いながらもせっかく声を掛けられたのだからと。僕は返事を返す。

「ニャン。」

返事を返されて、驚いた表情を見せる彼女は恥じらいながらもまた質問してきた。

「ご飯は魚で良い?」

「ニャン。」

「生きて出られる保証はないわよ。」

「ニャン。」

「図太いわね。」

最後の質問には彼女自身も少し気が引けてたんだろう。だが僕は返事をした。

だって僕猫だから人間の気持ちなんて、言ってくれないとわからないし。

でも大切にはして欲しいな。 

しかし、魚は楽しみだ。

生きてから母猫の母乳と猫まんましか食べたことがない。

彼女は傘をさしながら、ダンボールごと僕を連れて帰ろうとした。

僕はなんて面倒なことするんだろうと思い、そこから彼女の肩に跳び乗った。

傘に額をぶつけたけど気にしない。

「さーウチに帰るよ。猫さん!」

なんてネーミングセンスだ。と僕は彼女の肩に乗りながら、新しい飼い主を見つめた。
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