【完結】悪役令嬢のカウンセラー

みねバイヤーン

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94.バーバラさん

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 ようこそいらっしゃいませ、バーバラさん。わたくしがエリザベートですわ。

 あら、わたくしが最もおいしいと思うケーキが食べたいのですか? まあ、それは難問だわ。そうねぇ、わたくしが小さい頃に母がよく……いえ、料理人が作ってくれたケーキでよければ。

 はい、ヨーグルトケーキですわ。さっぱりしていて、わたくしは好きなのです。まあ、ホント? ふふふ、それはよかったですわ。


 はい、ええ、なるほど。バーバラさんはお姉さんが三人いらっしゃるのね。みんな割とかわいくてモテていて、調子にのってたら二十歳をすぎたらパタっとモテなくなって、今焦っている? ええ、ピークが早い……。


 まあ、上の惨状を見ているから、十代のうちにいい男をつかまえて結婚したい? なんて現実的な……。


 あら、便利屋ギルドで結婚前に気をつけるべきことを? ああ、新聞記事が掲示板に貼ってあったのね。若い子は今、定職もってて実家が太い男を見つけようと必死? ……わあ。


 パフィリア様の講演会は抽選で外れて行けなかった? ええ、でも講演内容が掲示板にあげられていたのね。結婚したからって幸せになるとは限らない、手に職つけるのが大事と、なるほど。それでバーバラさんは十代のうちに手に職をつけて、貯えを増やして、相手を見つけようとがんばっているのね。


 ううう、わたくし早まったかしら……。え、そんなことない? 間に合ううちに現実が知れてよかった? そ、それならいいですけど……。


 それにしても、二十代でモテなくなるって、早すぎません? 二十代なんて若くて美しい盛りなのに。え、二十五すぎたら、おばさんって呼ばれるの? え、誰に? ええ、男性と若い女性から? ひ、ひどい。


 そのー、男性の場合もそうなのかしら? 二十五すぎるとおじさんって呼ばれるの? あら、そんなことないのね。男性は年取ってもそれなりに相手が見つかるのね。ああ、男性の方がいい仕事につけるから。なるほど……。どこも一緒だわ……。


 ええっと、そうね、書物で読みましたのよ。女性は出産で仕事を休まなければならないから、男性の方が雇われやすいのよね。同じ実力であっても、男性の方が選ばれるのですわ。その上、女性の方が有能なのに、上にいくのは男性ばかりということもあるのですわ。


 そうねぇ、例えばある会社がAランクだとしましょう。男性はAランクもしくはBランクでも雇われますわ。ところがね、女性はSランクかSSランクでないと雇われないのよ。だって同じ優秀さなら男性が選ばれるのですもの。女性は常に男性より有能であると見せつけなければ雇われ続けませんわ。


 そうしてね、Aランクの会社にBランクの男性とSSランクの女性が入りますでしょう。出世するのはBランクの男性なのよ。ええ、SSランクの女性は、女性であり、出産で休むから上にはいけないのよ。ええ、やってられませんわ。腹が立ちますわ。わたくしもそれで、どれほどの憂き目にあったか……。


 え? あら、そうですね、公爵令嬢のわたくしは憂き目にはあっておりませんことよ。ほほほ。知り合い、知り合いの話ですわ。


 歯がゆいわ。なんとかしたいわ。理不尽ですもの。せっかく力を得たのですもの、なんとかしたいですわ。
 

 まあ、そのあたりは時間をかけて考えるとして……。それで、バーバラさんは手に職をつけられそうですの? ああ、迷っていらっしゃるのね。そうなの、確かに料理や裁縫の仕事は始めやすいけれど、給金が安めですものねぇ。読み書き計算は得意ではなく……。そうねぇ、看護師の仕事は手堅いですけど、難易度が高いですしねぇ。


 え、思いつきました? まあ、助産師? それはどうやったらなれるのかしら? ははあ、なるほど、助産師の弟子になって学ぶ。あの、お金は稼げるのかしら? 分からない……。


 でも、いい案かもしれませんわね。男性と職を争わなくてもいいというのは、大きな利点ですわ。定期収入が得られるのか、というところが不安ですけれども。


 ある国では、産まれたあとも、ひと月は助産師さんがお母さんと赤ちゃんの様子を見にきて、助言をするのですって。そうねぇ、確か産まれてから十日ほどは毎日、そのあとは状況に応じて頻度を変えるのですわ。赤ちゃんの成長具合、お母さんの体調、母乳の出方などなどですわね。


 でもそういうのって、ご近所の経験豊富な女性たちに聞けばすむような気もしますし、お金を払ってまで頼んでもらえないかも……。


 え、それでもやってみる? 赤ちゃん好きだし、一生できる仕事だし? そうね、その通りですわね。やってみないと分かりませんもの。



 はい、がんばってくださいね。全力で応援いたしますわ。


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