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85.マルタさん
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ようこそいらっしゃいませ、マルタさん。わたくしエリザベートですわ。
まあ、およしになって、ダメです。ひざまずいてはいけません。ね、そういうお約束でしょう? ここにいる間はカウンセラーとお客様、対等な立場ですわ。そんな無茶な、そう思ってらっしゃるわね? ええ、お顔にそのように。
ふふふ、大変なお役目を押しつけてしまって、ごめんなさいね。そうなの、マルタさんが記念すべき初めての目安箱採用者ですわ。そうね、こうしましょう、今日はおいしいお茶とお菓子を楽しみましょう。そしてね、お家に戻ってから、おいしくて楽しかった、そう伝えてくださればいいわ。最初ですもの、楽しめれば大成功ですわ。
え? ええ、もちろん、なんでも聞いてくださいな。はい、目安箱を設置した理由ですね。簡単に言うと、道楽ですわ。ええ、世間知らずで苦労知らずのお嬢ちゃんの気晴らしですわ。わたくしは運良く貴族の家に産まれましたでしょう。ありがたいことに大した苦労もしないで育ちましたわ。
でもそれでは立派な大人になれませんわよね。ですから、皆さんの困ってることを聞いて、少しでも力になれたらいいなって思いましたの。ですからね、わたくしの勝手な善意の押しつけですのよ。温室育ちの箱入り娘に、世の中の厳しさを教えてくださるとありがたいのですわ。
さあ、どうぞ、お茶とクッキーですわ。ね、サクッとして楽しい歯応えでしょう? お土産もご用意してますから、後でご家族と食べてくださいな。
マルタさんは何人家族でいらっしゃるの? まあ、お子さんが五人も……。上の子が八歳で下の子が二歳。ええっ、お腹に六番目が……それはおめでとうございます。あの、皆さんそれぐらいお子さんがいらっしゃるの? はあ、なるほど三人から五人ぐらいが多いと。
ええ、わたくしはまだ未婚ですし、子供もおりませんわ。そうですねぇ、貴族ですと二~三人が多いのではないかしら。はい、乳母もおりますし、侍女が子供の世話をしておりますわね。え? 貴族女性は何をしているのか、ですか? 本当ですわねぇ、何をしているのかしら。社交ですかしらねぇ……。
ごめんなさいね、不公平な世の中でやるせないですわね。貴族でも働いている女性はたくさんいますのよ。目安箱の仕組みを作ってくれたのは、わたくしの友人の貴族女性ですから。
それにしても五人のお子さんとは……。毎日どう過ごしていらっしゃるの? 家事と育児で一日が終わってしまいますわよね。ああ、なるほど、上の子が下の子の面倒を見てくれるのですね。ご家族や近所の人と助け合いながら。なるほど。
ええ、はい、そうですか、景気がよくなって、色んな仕事が増えて、働きたい女性がたくさんいらっしゃると。今までは持ち回りで子守りをしていたけど、働く人が増えて子供を預けることが難しくなってきた。なるほどなるほど、それはなんとかしたい問題ですわね。
ちなみにマルタさんはどんなお仕事を? はい、旦那さんが鍛冶屋で働いて、マルタさんは畑仕事、家畜の世話、近所の果樹園の収穫の手伝い、近所の牧場で羊の見張りやチーズ作り、家で糸紡ぎ、裁縫の下請け……。え、あの、お腹に赤ちゃんがいるんですわよね? 働きすぎでは? え、これが普通? ええー……。
分かりました。子守りの問題をなんとかしましょうよ。それだけ働いてる上に、育児もだなんて、ブラックが過ぎますわ。託児所を作るのがいいと思うけれど、これはもう少し調べてから検討が必要ですわ……。
もうひとつ気になるのですけど、色んなお仕事をされてますわよね? 旦那さんは毎日鍛冶屋で働いていらっしゃる? マルタさんは日によって仕事が違うのですか? ああ、なるほど、発生ベースの日雇いということですわね。この仕事やらないかと突然声がかかると。ええっとどこで? 畑仕事しているときに通りすがりの人から……。なるほど、伝言ゲームのように求人が回ってくるのですね。
それは、お給金はどのように決まりますの? ははあ、これぐらいでどうと事前に聞かれたり、行ってから知ったり。まあ、そうですの、なんというか、揉めそうな要素が山盛りですわね……。
あら、そうでもない? ええ、雇う方が圧倒的に強い? えええーーそれは……。そうですか。
はい、色々と課題が分かりましたわ。ええ、もちろんですわ。急に変えると大騒ぎになりますからね、じわじわやっていきましょう。気づいたらなんか変わってたぐらいのさりげなさで。
ええ、調べた上で、いくつか案を作ってみますわね。ご意見を聞きに誰かがマルタさんを訪ねてもよろしいかしら? ええ、現場の意見が何より大事ですもの。なるほど、ご近所の注目の的になってしまうのは避けたいと。分かりましたわ。何か方法を考えますわね。
今日は色んなお話が聞けて楽しかったですわ。来てくださってありがとうございました。ふふふ、本当ですか? マルタさんも楽しかったなら今日は大成功ということですわね。
ええ、ご近所の皆さんによろしくお伝えくださいな。お気軽に目安箱を使っていただきたいですもの。
では、ごきげんよう。
まあ、およしになって、ダメです。ひざまずいてはいけません。ね、そういうお約束でしょう? ここにいる間はカウンセラーとお客様、対等な立場ですわ。そんな無茶な、そう思ってらっしゃるわね? ええ、お顔にそのように。
ふふふ、大変なお役目を押しつけてしまって、ごめんなさいね。そうなの、マルタさんが記念すべき初めての目安箱採用者ですわ。そうね、こうしましょう、今日はおいしいお茶とお菓子を楽しみましょう。そしてね、お家に戻ってから、おいしくて楽しかった、そう伝えてくださればいいわ。最初ですもの、楽しめれば大成功ですわ。
え? ええ、もちろん、なんでも聞いてくださいな。はい、目安箱を設置した理由ですね。簡単に言うと、道楽ですわ。ええ、世間知らずで苦労知らずのお嬢ちゃんの気晴らしですわ。わたくしは運良く貴族の家に産まれましたでしょう。ありがたいことに大した苦労もしないで育ちましたわ。
でもそれでは立派な大人になれませんわよね。ですから、皆さんの困ってることを聞いて、少しでも力になれたらいいなって思いましたの。ですからね、わたくしの勝手な善意の押しつけですのよ。温室育ちの箱入り娘に、世の中の厳しさを教えてくださるとありがたいのですわ。
さあ、どうぞ、お茶とクッキーですわ。ね、サクッとして楽しい歯応えでしょう? お土産もご用意してますから、後でご家族と食べてくださいな。
マルタさんは何人家族でいらっしゃるの? まあ、お子さんが五人も……。上の子が八歳で下の子が二歳。ええっ、お腹に六番目が……それはおめでとうございます。あの、皆さんそれぐらいお子さんがいらっしゃるの? はあ、なるほど三人から五人ぐらいが多いと。
ええ、わたくしはまだ未婚ですし、子供もおりませんわ。そうですねぇ、貴族ですと二~三人が多いのではないかしら。はい、乳母もおりますし、侍女が子供の世話をしておりますわね。え? 貴族女性は何をしているのか、ですか? 本当ですわねぇ、何をしているのかしら。社交ですかしらねぇ……。
ごめんなさいね、不公平な世の中でやるせないですわね。貴族でも働いている女性はたくさんいますのよ。目安箱の仕組みを作ってくれたのは、わたくしの友人の貴族女性ですから。
それにしても五人のお子さんとは……。毎日どう過ごしていらっしゃるの? 家事と育児で一日が終わってしまいますわよね。ああ、なるほど、上の子が下の子の面倒を見てくれるのですね。ご家族や近所の人と助け合いながら。なるほど。
ええ、はい、そうですか、景気がよくなって、色んな仕事が増えて、働きたい女性がたくさんいらっしゃると。今までは持ち回りで子守りをしていたけど、働く人が増えて子供を預けることが難しくなってきた。なるほどなるほど、それはなんとかしたい問題ですわね。
ちなみにマルタさんはどんなお仕事を? はい、旦那さんが鍛冶屋で働いて、マルタさんは畑仕事、家畜の世話、近所の果樹園の収穫の手伝い、近所の牧場で羊の見張りやチーズ作り、家で糸紡ぎ、裁縫の下請け……。え、あの、お腹に赤ちゃんがいるんですわよね? 働きすぎでは? え、これが普通? ええー……。
分かりました。子守りの問題をなんとかしましょうよ。それだけ働いてる上に、育児もだなんて、ブラックが過ぎますわ。託児所を作るのがいいと思うけれど、これはもう少し調べてから検討が必要ですわ……。
もうひとつ気になるのですけど、色んなお仕事をされてますわよね? 旦那さんは毎日鍛冶屋で働いていらっしゃる? マルタさんは日によって仕事が違うのですか? ああ、なるほど、発生ベースの日雇いということですわね。この仕事やらないかと突然声がかかると。ええっとどこで? 畑仕事しているときに通りすがりの人から……。なるほど、伝言ゲームのように求人が回ってくるのですね。
それは、お給金はどのように決まりますの? ははあ、これぐらいでどうと事前に聞かれたり、行ってから知ったり。まあ、そうですの、なんというか、揉めそうな要素が山盛りですわね……。
あら、そうでもない? ええ、雇う方が圧倒的に強い? えええーーそれは……。そうですか。
はい、色々と課題が分かりましたわ。ええ、もちろんですわ。急に変えると大騒ぎになりますからね、じわじわやっていきましょう。気づいたらなんか変わってたぐらいのさりげなさで。
ええ、調べた上で、いくつか案を作ってみますわね。ご意見を聞きに誰かがマルタさんを訪ねてもよろしいかしら? ええ、現場の意見が何より大事ですもの。なるほど、ご近所の注目の的になってしまうのは避けたいと。分かりましたわ。何か方法を考えますわね。
今日は色んなお話が聞けて楽しかったですわ。来てくださってありがとうございました。ふふふ、本当ですか? マルタさんも楽しかったなら今日は大成功ということですわね。
ええ、ご近所の皆さんによろしくお伝えくださいな。お気軽に目安箱を使っていただきたいですもの。
では、ごきげんよう。
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