【完結】悪役令嬢のカウンセラー

81．ベネディクト(推し)

　私はベネディクト、王国史上最強の魔道士と言われている。まあ、それほどでもあるか……。

　今は国を代表する魔道士として、隣国に滞在している。魔術の発達したこの国は興味深いものであふれており、毎日が刺激的だ。一体どんな外交術を使ってこの話をまとめたのであろうか……？　宰相の手が入っていたように感じたが。

　まあよい、このような千載一遇の機会を得られることは二度とないであろう。なんとしても爪痕を残して、この国に長くいられるようにしなくてはな。

　宰相といえば、常に気配を感じていた影はもういないようだな……。国を離れる際、今までの迷惑料だと言って、ドラゴンの逆鱗を渡してきた者がいたな。女と見まごうような少年であったが……。最後に勝ち誇ったような顔をしたのは癇に障るが、まあ、あやつらには随分と世話になった、大目に見てやろう。

　なぜかは知らぬが、宰相の影がわずらわしい縁談を全て止めてくれたのは助かった。結婚などと無意味な制度にのる気はさらさらない。そもそも私は女性全般が苦手なのだ。特に豊満で妖艶な、そう宰相の娘のような女は近寄るのも肌が粟立つ。……母親が性に奔放で嫌な思いをしたことが多かったからな。


「これはこれはベネディクト様、ようこそお越しくださいました。ええ、伺っております。我が家に伝わる古文書をということですね。もちろんご自由にご覧くださいませ。……あぁ、その前に、ぜひお茶をご一緒にいかがですかな。さあ、エミリア、ベネディクト様をご案内しなさい……」


「ベネディクト様、お待ちしておりました。さあさあ、中へお入りください。ベネディクト様の勇名は我が国でもとどろいておりますぞ。ええ、この奥に古い魔女が使ったという薬草が保管されております。はい、優秀な研究員であるマルガレータにご説明させます。どうぞごゆるりと……」


「ようこそベネディクト様、我が一族一同、首を長くしてお待ちしておりました。そうです、我らにはエルフの血が混じっておりますのじゃ。古代エルフが使用した転移陣、ベネディクト様が共に研究をしてくださるとは頼もしいことじゃ。ところで、エルフの血が混じると、魔術が簡単に使えるようになりますぞ。どうです、ワシの孫娘と婚姻を結ばれては？　将来有望な子供ができますぞ。ふぉっふぉっふぉ」



　……誰か、誰か助けてくれ。どうして皆が女をすすめてくる？　おかしいであろう。宰相の影たち、ドラゴンの逆鱗を返すから、私を助けてくれ……。