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77.コンスタンティン(父)

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 我が名はコンスタンティン、この国の宰相である。エリザベートの父だ。

 そうだな、エリザベートが変わったのは、妻が療養のため王都を離れてからだ。それから部屋に閉じこもって誰とも話さなくなってしまった。私も気に病んではいたが、当時は隣国との関係が悪く、ほとんど屋敷に戻れなかった。

 執事のセバスティアンや侍女のカトリンからは、度々エリザベートとエドゥアルトのために帰宅してくれと連絡をもらっていたが……。諸々の調整が終わってやっと帰ってみれば、屋敷の様子が一変していて驚いたものだ。

 エリザベートは溌剌と家内の采配をふるい、エドゥアルトは見違えるように素直に姉のうしろをついて回っていた。

 何があったのか聞いても、誰からもはっきりとした答えは返ってこなかった。カトリンは何か察していたようではあるが……。

 
 いつだったか、エリザベートが思い詰めたような目で言いにきたな。今後一切のプレゼントはいらない。その代わり、婚約者を自分で決める権利をくれと。ただならぬ雰囲気だったから、問いただすことなく了承したが……。


「ん? いたのか、フィリップ。気配を消すのがうまくなったな。……それで、エリザベートは息災か?」

「はっ、閣下。お嬢さまはお元気でいらっしゃいます。直接お目にかかってはおりませんが、気配は辿れますゆえ」

「そうか、ならばよい。そろそろ戻ってくるであろう。外野がうるさいのでのう。それで、そなたはまだ、かの御仁に張り付いておるのか?」

「はっ、お嬢さまから任務終了の命は出ておりませんので」

「……ほう、確か他は監視下から外れておるのだったな。ただ一人、エリーが動向を注視する人物……興味深い。昨今、皇位貴族の婚姻があいついでおるが、よもやエリーも……。……フィリップ、もう監視に戻ってよいぞ」

「はっ」




 不憫なものよのう。

 エリザベートは自分の周りから男性側近を極力排除していた。下手に近づけて、好きになられても困ると言っておったな。ありきたりの者が言えば笑止千万であるが、エリザベートの場合はただの事実であったな。

 フィリップを救い上げるのに、多少のためらいはあったようだが、結局側に置くことに決め、早々に通達していたな。わたくしを好きになるな、と。……言っても詮無いことであろうに。

 あのような環境から救ってくれた主、しかも女神に例えられる容姿を持つ女主人を、好きにならぬ男はおらんよ、エリー。まあ、分かってはいるのだろうが……。



 そなたが心に決めた男が、どんな人物か、父が見極めてくれよう。まあ、エリーは気にもとめないであろうがな。はあ……。



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