75 / 100
75.イグナーツ(作家)
しおりを挟む
えぇ、結婚が続いてますんで、もう大変なんですわ。書いても書いても即完売。笑いと悲鳴が止まりませんでね。
まずね、アレクサンドル第一王子殿下と聖女リリアンヌ様ね。本当にありがたい話しですわ。今をときめくお二方、ずどーんとど真ん中を突き抜く大恋愛ね。国を背負うという重圧に、ともすれば心が折れそうなこともある殿下ですよ。それをね、孤児院上がりの聖女がそっと手を差し伸べる。
身分差、これが刺さるんですわ。特に女性読者はね、障害のある恋愛に弱いからね。もう、びっくりするくらい売れちゃった。刷っても刷っても間に合わない。うちの借金全部消えたから。ワシもう王宮に足向けて寝れないね。
次がね、ええ、度肝を抜かれましたよ、まさかこの二人がーーですわ。王国の白百合パフィリア様とゲオルグ様ね。ゲオルグ様? え、誰それ? てなもんでしたから。まさかあの華やかなパフィリア様がねー。よもやあんな、えー地味目な男性と結婚されるとは。分からないもんですなぁ。
幼馴染のお二人がゆっくり愛を育んで、最後はゲオルグ様が押して押して結婚にこぎつけた、そんな話しですわ。ええ、パフィリア様にそんな感じでよろしくって言われたんですわ。まあ、空気と権力を読むには定評のあるイグナーツですから、そのように書かせていただきましたですよ、はい。
ところがね、ワシの見立てではね、逆なんだなー。ありゃあね、パフィリア様が囲い込んで外堀りを埋めて気づいたら結婚してたって感じですわ。
さらにさらに、騎士団長のご子息ダニエル様が、エリザベート様の侍女兼護衛のカトリン様に婿入りってね。どないなってんのってね。もうぶったまげましたよ。意味が分からないですわ。
身分差っていうか、えー格下に婿入りーー? 前代未聞が過ぎるでしょう? 事実しか書いてないのに、全部与太話に見えちゃう。話し盛るんも、たいがいにしときやーってね。いえいえ奥さん、これでもだいぶ抑えて書いてるんでっせーってね。作家泣かせ。
まあ、そんなこんなでね、大忙しなんですわワシ。あ、申し遅れました、作家のイグナーツです。
ということでね、次はね、マヌエッタさんでしょう? そうでしょう? 一体どなたとご結婚されるのかなー、おじさんちょっと早目に知りたいなーってね。それで今日はマヌエッタさんの取材に来たんですわ。
え? 本当っすか? 目のつけ所がいいっすか? ありがとうございます。
え? 本当っすか? 売れる本を書く手腕が素晴らしい? ありがとうございます。
え? ワシは独身っす。忙しくて結婚どころじゃありゃしませんでしてねぇ。
え? 採用? どういう意味っすか?
え? 嫁入りでも婿入りでもどっちでもいい?
え? 結婚? ワシとマヌエッタさんが?
ええええええーーーーそうきたかー。
これは次回作もバカ売れ必至ですわ。
まずね、アレクサンドル第一王子殿下と聖女リリアンヌ様ね。本当にありがたい話しですわ。今をときめくお二方、ずどーんとど真ん中を突き抜く大恋愛ね。国を背負うという重圧に、ともすれば心が折れそうなこともある殿下ですよ。それをね、孤児院上がりの聖女がそっと手を差し伸べる。
身分差、これが刺さるんですわ。特に女性読者はね、障害のある恋愛に弱いからね。もう、びっくりするくらい売れちゃった。刷っても刷っても間に合わない。うちの借金全部消えたから。ワシもう王宮に足向けて寝れないね。
次がね、ええ、度肝を抜かれましたよ、まさかこの二人がーーですわ。王国の白百合パフィリア様とゲオルグ様ね。ゲオルグ様? え、誰それ? てなもんでしたから。まさかあの華やかなパフィリア様がねー。よもやあんな、えー地味目な男性と結婚されるとは。分からないもんですなぁ。
幼馴染のお二人がゆっくり愛を育んで、最後はゲオルグ様が押して押して結婚にこぎつけた、そんな話しですわ。ええ、パフィリア様にそんな感じでよろしくって言われたんですわ。まあ、空気と権力を読むには定評のあるイグナーツですから、そのように書かせていただきましたですよ、はい。
ところがね、ワシの見立てではね、逆なんだなー。ありゃあね、パフィリア様が囲い込んで外堀りを埋めて気づいたら結婚してたって感じですわ。
さらにさらに、騎士団長のご子息ダニエル様が、エリザベート様の侍女兼護衛のカトリン様に婿入りってね。どないなってんのってね。もうぶったまげましたよ。意味が分からないですわ。
身分差っていうか、えー格下に婿入りーー? 前代未聞が過ぎるでしょう? 事実しか書いてないのに、全部与太話に見えちゃう。話し盛るんも、たいがいにしときやーってね。いえいえ奥さん、これでもだいぶ抑えて書いてるんでっせーってね。作家泣かせ。
まあ、そんなこんなでね、大忙しなんですわワシ。あ、申し遅れました、作家のイグナーツです。
ということでね、次はね、マヌエッタさんでしょう? そうでしょう? 一体どなたとご結婚されるのかなー、おじさんちょっと早目に知りたいなーってね。それで今日はマヌエッタさんの取材に来たんですわ。
え? 本当っすか? 目のつけ所がいいっすか? ありがとうございます。
え? 本当っすか? 売れる本を書く手腕が素晴らしい? ありがとうございます。
え? ワシは独身っす。忙しくて結婚どころじゃありゃしませんでしてねぇ。
え? 採用? どういう意味っすか?
え? 嫁入りでも婿入りでもどっちでもいい?
え? 結婚? ワシとマヌエッタさんが?
ええええええーーーーそうきたかー。
これは次回作もバカ売れ必至ですわ。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する
みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。
せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?
石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。
彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。
夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。
一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。
愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【短編】氷の令嬢はさえない婚約者を離さない「あなたの前でだけ笑えるのです」
みねバイヤーン
恋愛
「ずっとそばにいて」氷の令嬢と呼ばれるコーレリア侯爵令嬢が、さえない男爵の三男と婚約した。王都一の美貌を誇り、決して笑わないコーレリアは、さえない婚約者の前でだけ輝く笑顔を見せる。氷の令嬢に囲い込まれる男爵の三男には一体どんな秘密があるのやら……。今宵、夜会でその秘密が明かされる。
乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった
月
恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。
そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。
ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。
夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。
四話構成です。
※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです!
お気に入り登録していただけると嬉しいです。
暇つぶしにでもなれば……!
思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。
一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる