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70.クリストフ(第一王子の従者)

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 俺はクリストフ、アレクサンドル第一王子殿下の従者兼護衛だ。よろしく頼む。

 しかし、どうしたものか……。殿下はエリザベート様のことをまだ忘れられないようだ。随分とあっさり振られたようだったが……。そのあとにパフィリア様にまで婚約を辞退され……。アレクサンドル様はしばらく廃人になっておられた……。


 なまじ学園で女生徒からチヤホヤされていたのがよくなかった。振られ耐性がついてなかったのだろう。まぁ、そもそも一国の王子が振られることって、あまりないよな……ないよなぁ……ないはず……。


 エリザベート様はなぁ、あれはどうしようもないな。皆一瞬で陥落したもんな。顔よし体よし身分よし性格よし。欠点がねーーー。男どもだけでなく、女生徒もとろけきってるし。普段はキリッと冷たい近寄りがたい雰囲気があるんだけど、話してみると意外と気さくで、たまに見せる素の笑顔がなぁー。あれは反則だろう。アレに落ちないヤツは人間じゃねー。

 お、あの人は……。

 
「ゲオルグ様、少しお時間よろしいですか? お伺いしたいことがありまして……」

「……クリストフ様。はい、どういったことでしょう?」

「実は、妹君のセラフィナ様のことで……セラフィナ様はまだ婚約しておられないですよね? 殿下の婚約者候補に、という話が出ておりまして……」

「……それは、既に父に伝わっていますか?」

「いえ、まだ内々の話しですので、お父上に打診する段階ではありません」

「それはよかった。であればお願いです。この話、なかったことにしてください。頼む……妹を不幸にしたくない……」

「それはそれは……アレクサンドル第一王子殿下の婚約者候補とは、そこまで忌避される立場ですか……聞き捨てなりませんねぇ」

「……セーラをエリザベート様の引き立て役にしたくない。それだけです。殿下に対して二心はない。信じてください」

「……あぁ、なるほど、そういうことですか……」

「クリストフ様、ご理解いただきたい。我々の年代は不遇であった。同年代に殿下、エリザベート様、聖女だ。太陽のように眩しく煌めくお三方の陰で、埋もれていく者の気持ち……。努力してもかすりもしない絶望、我が身の至らなさに恥じ入る日々……。セーラには、自分を卑下することなく真っ直ぐ育ってほしいのです」

「ゲオルグ様、分かりました。お約束はできませんが、心に留めておきます」


 はあぁぁ、エリザベート様は劣等感製造機かよ……。どいつもこいつも、こじらせてやがる。どうしたものか。いっそ他国の姫にするか……? 外交が絡むとなると、俺の手に余るな……。パフィリア様かあるいは……。どっちも会いたくねー。仕方ない、殿下の憂いを払うのが俺の仕事だ。はははははは。


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