【完結】悪役令嬢のカウンセラー

みねバイヤーン

文字の大きさ
上 下
44 / 100

44.ミュリエル様

しおりを挟む
 ようこそいらっしゃいませ、ミュリエル様。わたくしがエリザベートですわ。

 はい、クランベリージュースとフルーツ盛り合わせですね。承知いたしました。


 は? あ、あら、ありがとうございます。そんな面と向かって褒められるのは久しぶりで……。え? 美容ですか? はい、それなりに……。そうですわねぇ、運動と睡眠と食事と保湿ですかしら。


 はぁ、ミュリエル様は美容に気をつかっていらっしゃるのですね? え? はい、はい、なるほど…………はい、まぁ、そのように、ほう…………。


 はい、素晴らしいですわ。大変勉強になりましたわ。ほほほほほほほほ。


 さてと……本日はどういったご相談がございまして? え、美容について? ええっ?

 あのですね、おそらくですが、ミュリエル様はもう十分、ええ、それはもう過不足なく、美容についての知識をお持ちでいらっしゃいますわ。わたくしがつけ加えられることなど何もございませんわ。

 えぇ、残念ですが……忸怩たる思いですわ、慚愧に堪えませんわ……。


 はい、そういうことですので、ごきげん……


 え、老化が怖い? 若さと美貌を失う前にいっそシ……
 えええええー、そそそそれは、ええええーー


 あの……しばらくお待ちいただけますかしら? すぐ戻りますわ。


 お疲れお疲れー。オグちゃん、闇の深い子がきてて、そう、それよ、ヤバみが深いってやつよー。なんかさー、むっちゃくちゃかわいいんだよね。いわゆるドール系って感じで、妖精みたいよ。うん、だいぶいっちゃってるけど。うーん、なんでか分かんないけど、自分のかわいさが生きる支えになってるのかなー。いやー、そこは怖くて聞けんかった。

 老いてかわいさが減る前に消えたいんだって。うーん、あれは本気だと思うなー。いやー、あの感じの子に、老いても衰えてもそれなりに楽しいよって言ってもねー、いちミリも伝わる気がしない。どうしたもんかいねー。うーん、なるほどー、効き目あるかな、どうだろう。え、それやっちゃうの? 本気で言ってる? 倫理的に許される?

 それかー、禁じ手では。押し付けてる気がする。混ぜたら危険じゃね? うん、そうですね、他にいい案が思いつきません。無念なり、たらい回し……。え、違う? セカンドオピニオン? 治せないものを抱えこんだり、自信のない処方をする方が無責任? そ、その通りです。師匠、目が覚めました。つまらぬプライドで犠牲にする瀬戸際でした。はっ、閣下、全力を尽くします。これにて失礼いたします。


 ミュリエル様、お待たせいたしました。神託を得ましたわ。


 はい、ヤドヴィガ様という美の伝道師をご紹介いたします。はい、ヤドヴィガ様は以前オネエ様でいらっしゃいまして、美への情熱をお持ちです。ミュリエル様の美貌も更に磨きがかかることでしょう。僭越ながら、ミュリエル様の美貌はもはやほぼ完成形に近いとお見受けします。美の女神の救いの手、他の乙女に差し伸べていただきますよう。



 心安らかに
 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

二人の男爵令嬢の成り上がり!でも、結末は──

naturalsoft
恋愛
オーラシア大陸の南に姉妹国と呼ばれる二つの国があった。 西側のアネーデス王国 東側のイモート王国 過去にはお互いの王族を嫁がせていた事もあり、お互いにそれぞれの王族の血が受け継がれている。 そして、アネーデス王国で周辺国を驚かすニュースが大陸を駆け抜けた。 その国のとある男爵令嬢が、王太子に見初められ【正しい正規の手続き】を踏んで、王太子妃になったのである。 その出来事から1年後、隣のイモート王国でも、その国の男爵令嬢が【第一王子】の【婚約者】になったと騒がれたのだった。 しかし、それには公衆の面前で元婚約者に婚約破棄を突き付けたりと、【正規の手続きを踏まず】に決行した悪質なやり方であった。 この二人の結末はいかに── タイトルイラスト 素材提供 『背景素材屋さんみにくる』

【完結】悪役令嬢はおせっかい「その婚約破棄、ちょっとお待ちなさい」

みねバイヤーン
恋愛
「その婚約破棄、ちょっとお待ちなさい」まーたオリガ公爵令嬢のおせっかいが始まったぞ。学園内での婚約破棄に、オリガ公爵令嬢が待ったをかけた。オリガの趣味は人助け、好きな言葉はノブレス・オブリージュ。無自覚な悪役令嬢オリガは、ヒロインの攻略イベントをことごとくつぶしていく。哀れなヒロインはオリガのおせっかいから逃げられない。

踏み台令嬢はへこたれない

三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

悪役令嬢は所詮悪役令嬢

白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」 魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。 リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。 愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。 悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

婚約破棄された令嬢の父親は最強?

岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。

処理中です...