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42.ハイディー様

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 ようこそいらっしゃいませ、ハイディー様。わたくしがエリザベートですわ。

 はい、えぇ、ございますよ。クリームコロッケとポテトコロッケとメンチカツですね。お飲み物はビール、はい、かしこまりました。

 
 あら、まあ、本当ですの? 推しキャラの義弟様とご結婚されたのですか? それは、おめでとうございます。ハイディー様が伯爵家の後を継がれるのですね? あぁ、今はお父様がご健在でいらっしゃって、十年後を目処にハイディー様と旦那様が領政を引き継がれると。


 まぁ、覚えることが多すぎて不安に? そうですわよねぇ、責任重大ですわ。えぇ、旦那様と二人三脚で……大変ですけれど、きっとやりがいも多いと思いますわ。


 えぇ、はい、ああ、なるほど……つまりお家にお客様を呼びたくないと、そういうことですわね? まぁ、少なくとも週に一度はお茶会、月に一度は晩餐会ですか。伯爵家の後継として、社交は大事ですもの。そうはいっても、わずらわしいですわよね……。


 そう、そうなのですよ、やることが多すぎますのよ。招待客を一覧にし、招待状を出し、返事が来るたび一覧を更新し、メニューと席順を決め、屋敷を整え、お迎えすると。分かります、エクセルがあったら、メールがあったらって、ハンカチを噛み締めたものですわ。


 えぇ、もちろん執事や侍女がほとんどやってくれますけれど、指示は出さなければいけませんものねぇ。分かりますわ、ずーっとお茶会に追われて仕事どころではありませんわねぇ。なるほど、伯爵家の家長になる前になんとかしたいですわね。


 そうですわ、前世でそういう習慣なかったですものねぇ、家に呼ぶのはよほど仲の良い友だちぐらいですわよ。外で食べて飲んででしたわ。部屋を片付けなくていいですし、料理もしなくていいですし、後片付けもいりませんもの。気楽でしたわよねぇ。


 えぇ、確かに、レストランやカフェでできるなら、随分ましですわね。そう、問題はそういう文化がないということですわねぇ。

 
 あぁ、そうですわ、伯爵家でレストランを経営なさってはいかがかしら? えぇ、既存のお店を買い上げてしまってもいいと思いますわ。レストランのお披露目ということで、しばらくお茶会と晩餐会はそちらで開催すれば自然ですわ。その後なし崩し的に、伯爵家の社交はレストランで行うという流れを作ってしまえばよろしいですわ。


 えぇ、一般客が食べる場所とは別に、大きな部屋が必要ですわね。大小様々な部屋を用意して、部屋貸しビジネスも始めればよいのではないかしら? 他の貴族の方にも、そちらでお茶会を開催してもらえばいいですわ。きっと、口には出さないけれど、家でやりたくないご夫人はいらっしゃると思いますわ。


 えぇ、その通りですわ、財政難の貴族家は喜ぶのではないかしら。屋敷の調度品の格や使用人の質を値踏みされるのは屈辱ですものねぇ。


 これがうまくいくと、伯爵家は情報面でとても有利になりますわ。えぇ、他貴族がいつ誰と会っているのか把握できますもの。お茶会での会話内容も、レストランの従業員から筒抜けですし。


 部屋での会話をレストラン従業員に聞かれたくない貴族は、屋敷の使用人を連れてくればいいのですわ。レストラン従業員は部屋には入らないと言えば、貴族は安心するのではないかしら? とはいえねぇ、屋根や壁に細工すれば盗み聞きし放題ですれど。ほほほほ。



 お主も悪よのう。



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