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6.ベアトリス様

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 ようこそいらっしゃいませ、ベアトリス様。わたくしエリザベートと申しますわ。

 さ、お座りになってくださいな。お飲み物は何がよろしいかしら? ああ、そうそう、メニューを作りましたのよ、ぜひ選んでくださいな。

 番茶と山菜うどんですね、はい、承りました。肌寒い季節になると、あったかいものがいいですわよねー。


 ベアトリス様、あまり顔色がよろしくありませんけれど……。ええ、長椅子に横になってくださいな。フワフワ毛布をかけて、まあっ、体が冷え切ってらっしゃるわ。いけませんわ。

 
 ちょうど番茶と山菜うどんが来ましたわ、いえ、そのままでぜひ。わたくしがお手伝いいたしますわ。


 ふーふー、あーん。


 少し顔色がよくなりましたわね。ええ、話すのが億劫であればこのまま少しお休みになってはいかが?ここは安全ですもの。


 
 お目覚めになられて? いいえ、ほんのわずかな時間でしたわ。でも表情が少し明るくなっていてよ。


 そう、そうなの。なんということでしょう……。わたくし少々お席を外しますわ。このままお待ちになっていて。


 お疲れ様です。……オグちゃーん、ごめーん、助けて欲しい人がいるんだ。そう、そうなの。前世の記憶が蘇ったのが、処刑前夜なんだって。そう、ついさっきよ、蘇ったショックでここに意識が飛んだっぽいよ。


 ごめんね、こんな重い案件持ってきちゃって。どうしたらいいかな、ここにずっといてもらえるならいいのに。そう、無理なんだよね、長くて一晩……。イヤー、詰んだわこれ。せめてもう少し早ければねー。いやいやいや、処刑された後にもう一回産まれなおして、やり直せる保証どこにもないから。リスクがデカすぎるよ。


 そうね、それしかないね。分かったー。りょうかーい。ホントにいつもありがとう。うん、うん、がんばるー。オグちゃんもよろしくね、オグちゃんの力にかかってる、マジで。じゃーまたねー。



 ベアトリス様、神託を得てまいりましたわ。残念ながら、物理的に救出する術がございませんのよ。ええ、それができれば話が早かったのですが。


 物理的には干渉できませんが、精神と魔力には多少できることがございます。


 牢屋の番人がベアトリス様に同情しますよーにー。せいっ

 牢屋のカギをうっかりかけ忘れちゃいますよーに。せいっ

 兵士が連行するときこけますよーに。せいっ

 民衆が同情して騒ぎますよーに。せいっ

 処刑人がお腹壊しますよーにー。せいっ

 処刑台が壊れていますよーにー。せいっ

 処刑台に雷が落ちてベアトリス様が逃げられますよーにー。せいっ

 ベアトリス様が隣国まで逃げられますよーにー。せいっ

 ベアトリス様の未来に幸あれ。せいっ、せいっ、せいやーーー




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