6 / 9
この異世界に不幸があるわけない!
約束
しおりを挟む「いや~、コータの能力がまさかの【悪魔】だったなんてね~」
寮に戻り元の姿に戻ったアイリスはジョッキに入ったジュースを片手に乾杯をした。
「あの後、大変だったんだからな」
ため息をついた俺にアイリスはゲラゲラ笑っている。
ウィリアムに勝利した俺は、クラスメイトから質問攻め。
その場はうまくかわせても今日一日中は誰かに話しかけられてばかりだった。
しかも決まって…
「「何の能力なの?」ってしつこいんだよ!!察しろよ!」
机に並んだ料理を口を含みながらドンと机を叩いた。
「だって、クラストップクラスのウィリアムに勝ったんだよ?」
仕方ないよ~。と他人事のようにご飯を食うアイリスにカチンときた。
大事に取っておいたお肉を俺が奪ってやると見たことないくらい絶叫が寮に響いた。
不機嫌なアイリスから逃げ、部屋へ逃げ込むとベッドにダイブしポケットの中のカードを見た。
「悪魔かぁ…」
カードには、Demonと表記されている。アイリス曰くとても珍しい能力で今まで見たことがないらしい。
ちなみにアイリスは【星】の魔法を使うようだ。
なんでも、個々の能力は生まれてから潜在的に眠っているらしい。
「まぁ、これ言っちゃあれだけど…運だよね」
アイリスが気の毒そうに教えてくれた。
確かに、生まれ持った能力が最強に越したことはないが、最弱魔法だったならと考えるとどこも不平等なのかと痛感させられる。
生まれ持った能力以外は使えないらしい。
両親の能力どちらとも受け継ぐ場合、濃い方の能力が開花するらしい。
ごく稀に、均等に受け継ぎ二個の能力を器用に使いこなすものもいるようだが、使いこなすまでが大変らしい。
魔法は、潜在的に眠ってるためそれを引き出す。アイリスが言うには、強く想像するそうだ。
「強く想像する?そんなんで使いこなせたらここの学校の生徒みんな最強じゃねぇか」
「それがね…そう上手くいかないようになってるんだよね」
簡単な魔法。
例えば、治癒魔法や防御魔法なら誰でも簡単に使いこなせる。
それは、『想像しやすいからじゃないか』という説が一般的らしい。
試しに、俺はアイリスのテレポーテーションで周りに何もない草原へ行くとウィリアムに使った拘束魔法をアイリスに実験台になってもらい試した。
「な、なにこれ!!動けないし、まっ魔法も使えないじゃない」
実験台には、アイリス自身が志望した。最初、そういう性癖の持ち主なのかとドン引きしたが相手がいないと意味がないらしい。
そこでわかった事がある。
まず、アイリスやウィリアムに使った拘束魔法を使っている間は魔法が使えなくなってしまう事と最大の弱点ともいえる難点…。
すぐ、疲れてしまうことだ。
「やっぱり、魔法を使うからには魔力があってそれも生まれた時に量は決まってるのよ。多ければ、多いほどたくさんの魔法が使えるし、少ないとそれだけ不利になるの」
…どこまでも理不尽な世界なんだな。
魔力が尽きると気絶…。からだが動かなくなるらしい。
車のエンジンみたいなものと俺は理解したが、それは、睡眠や食事によって回復する事が可能らしい。
魔力も能力と一緒にカードに記載されているがアイリスが言うには俺の魔力量は多いほうらしい。
それでも、すぐ疲れてしまうのは俺の能力が凄まじいほどの魔力を消耗するほかない。
アイリスのテレポーテーションで寮に戻ると疲労感がどっと出ていた。
なんとなく、アイリスの言いたい事が理解出た気がした。
強い魔法には伴って魔力の消費量も多い。大技を使えば相手に当たったとしても自分が倒れてしまうし、使う前に魔力がなくなってしまう場合がある。
そこに、初めて修行する事で上手に使いこなせるようになるらしい。
ウィリアムに使った、拘束魔法と斬撃魔法の消費量はかなり多い。歩けるのがやっとのレベルなのだ。
アイリスが俺へに向けて言った「手加減」とは倒れないように気をつけろという意味だ。
つまり、自分の魔力量を考えて魔力を使用しなればならない。
アイリスも最初は、苦戦したらしい。使用できる魔法も少なかったが、慣れてくると使える魔法も増え発展的な魔法も使えるようになったらしい。
試しに…。寮に戻る前に、草原でアイリスの魔法【星】を間近で見る事になった。
「シャルのように私も物を使うんだけど…」
可愛い顔して大鎌振り回していたシャーロット。
さて、アイリスはどんなものか…
「コータ行くよ!スターダストミーティア!!」
アイリスの手から馬鹿でかいバズーカがあらわれ真上に向かって撃ち込んだ。
…え。なにすんの??
上を向いてしばらくしているとキラキラしたものが見えたと思ったら唇が引きつった。
「おいおい!これ、おれ死なねえよな」
キラキラ光るもの。それは、空に光り輝く星たちだった。
とっさに防御をはり直撃は免れたがちょっと気を抜いたら防御を突き破ってくるレベルに攻撃力が高い。
…これは、広範囲に及ぶし攻撃力も高い。
見かけによらずアイリスはスゲェな。
「どう?まだ、まだあるけど」
バズーカを軽々豪快に肩にかける。苦笑いしかでねぇよ。
防御に疲れて尻餅をついた俺をアイリスがドヤ顔で手を差し伸べてくる。
「そういう道具は誰でも使えるのか?」
「…えっと、使えないことはないよ」
カード見せて?というアイリスにカードを見せると【悪魔】とかかれた隣に【剣】とかかれていた。
…な、なんだこれ。
「ふぅーん、コータは剣なんだね」
「ほかにもいるのか?」
「能力と違って道具は自由なの」
「え?」
「理事長に何か聞かれたかった?」
ああ…思い出しながら理事長との会話を思い出す。
適当に「なんでもいいです」と言ったような。
マジか…よく聞いてりゃよかったな。俺も、シャーロットのみたいに大鎌かっこよく振り回したかったなぁ。
でも、剣ならかっこいいしいっか。
「まぁ、使わなくてもいいだけどね」
「…そうなのか?」
「うん」
使用方法を聞いてみると単純作業だった。渡されたカードに魔法を当てると出てくるらしい。
試しにやってみると俺の手に黒い剣が現れた。古びた剣で所々黒焦げになってる気がする。
軽いし安物?と首を傾げるもアイリスに持たせると重すぎて持てないらしい。
その人個人しか使えない代物で変わりがない。特別な武器といったところか。
せっかく武器が手に入ったので何か覚えようと残り少ない魔力量で考えた。アイリスに協力してもらい普通に斬りつけるとアイリスはぶっ倒れた。
「…ねぇ、コータ。流石に痛いんだけど」
「わ、悪い…」
アイリスは、何事もなかったかのようにピンピンしているが苦しそうに噎せ返っていた。
俺も立っているだけで精一杯だ。魔力量ギリギリまで使用してこれ以上魔法を使うと倒れそうな勢いだ。
そのことをアイリスに伝えると仕方ないなと言ったような顔をして寮に戻った。
「コータ、一つ…約束しない?」
ベッドに倒れた俺にアイリスからの提案だった。
「何の?」
「この学校には、主に個人を強化するための学校なんだけど、チームになってたたかうチーム戦ってものもあるの」
「それで?」
「原則、三人以上からチームを組めるんだけど。わたしのチームに入ってくれない?」
………。
首だけを動かすと眉を下げてるアイリスと目があった。
「それって、入んなきゃいけないのか?」
「そんな事はない…よ」
「入る」
「え?」
「え?」
なんだよ。そっちから聞いてきた癖にその間抜けヅラな顔は…
まぁ、アイリスには返しきれない恩がある。その恩返しと考えればいいだろう。
「だったら、もう一人集めないといけないな」
「それは、もう検討ついてるの!」
アイリスが拳を上に突き上げた。その目は自信に満ち溢れていた。
…なにも起こらないといいが。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした
星ふくろう
恋愛
カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。
帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。
その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。
数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。
他の投稿サイトでも掲載しています。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる