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39 ブランシュのスキル 1
しおりを挟むあのあとサンドの家に招かれて紹介された家族は多すぎて覚えられなかった。
辛うじてサンドのお嫁さんとその子供達の名前くらい。その子供達だって六人もいたんだよ? 僕にはもう無理。
ぽやぽやな頭に何とか名前を詰め込んだけど、たぶん三歩歩いたら忘れる。レイヴンに抱っこされてて歩かないだろうって? モノの例えだし!
なんて考えてたらいつの間にかサンドの家を出てて、案の定せっかく詰め込んだ名前はきれいさっぱり忘れた。
何となくレイヴンは察したようで苦笑い。
「ブランシュ、この里が見渡せる大樹があるんだが、そこに行ってみないか?」
『え? そんなに大きい樹あったっけ?』
「昨日はそこまで気が回らなかったろう? 羊やらお披露目やらで。───ほら、あそこだ」
レイヴンに促されて振り向いた先に、枝を大きく広げた大きな樹が目に入った。それはそれは大きな樹で・・・・・・。
『・・・・・・この木なんの木気になる木・・・・・・』
「・・・・・・うん?」
思わず前世のテレビで流れてたCMを思い出してしまうくらい、枝ぶりのいい一本の大樹だった。しかもレイヴンのお家の裏山だった。
『・・・・・・昨日は全然、気が付かなかったよ』
「俺も特に何も言わなかったしな。御神木なんだ」
え、御神木!?
『ふええ・・・・・・確かに立派。・・・・・・ん? それなら僕、お参りしたいな。この世界の神様が連れて来てくれたから今があるんだし』
「そうか? まあ、どうせ行くからついでにいいか。じゃあ翔ぶぞ。掴まっていろ」
『はぁい』
レイヴンにしがみ付くと、静かな羽音と共にふわりと身体が浮いた。
そのまま御神木に向かって、あっと言う間に到着すると木の根元に降り立つ。
『そういえば里が見渡せるって言ってたよね?』
「ああ。天辺付近の枝に乗ればよく見える」
『・・・・・・御神木でしょ? 乗っていいの?』
「俺達は物心つく頃には普通に木登りとかしてたが・・・・・・」
『怒られないんだ。じゃあ大丈夫なのかな?』
転生前に見た神様は優しそうだったから許されるのかもしれない。───アレ? そういえば・・・・・・。
『・・・・・・僕、重大なことに気付いちゃった』
「何だ?」
『神様の名前・・・・・・知らない・・・・・・』
あの時は神様も特に名乗らなかったし、それ以降接触はなかったし。
「・・・・・・ああ、そうなんだ? ここの神様はオニャメ神って言うんだ」
『・・・・・・オニャメ神・・・・・・』
なにそれ、めちゃくちゃ可愛いんだけど。ネコか何かですか?
え? マジですか? ソウデスカ、本当なんだね。レイヴンが真面目な顔だから。
「割と気軽に喚べるらしい」
『───へー、さすが異世界・・・・・・』
《んなわけないでしょー!》
『にゃっ!?』
「・・・・・・来てるじゃねえか」
《───っは! しまった。つい、思わず来ちゃった・・・・・・》
レイヴンが軽い感じでそう言うので、異世界凄いなーなんて思っていたら、あの時聞いた神様の声が聞こえて驚いてレイヴンに抱き付いてしまった。
レイヴンの呆れた声にハッとしたようなオニャメ神が目の前にふわりと浮いている。
見た目は一五歳くらい。可愛らしい顔でちょっと吊り目がちの猫のようなグリーンの瞳に薄金色のふわふわな髪が腰まである美少年だった。
※髪が神って誤字ってました。スミマセン。
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