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36 家族
しおりを挟む僕はテーブルに並べられた料理を前に興奮していた。
西洋風な世界だと勝手に思っていたから、さっき飲んだお茶やお茶請けの羊羹みたいなお菓子に驚いたけど。
テーブル上の料理は、これぞ純和食って料理だった。
何の魚かは分からないけど煮魚があって、筑前煮みたいな煮物もある。
それに色んな野菜の天ぷらやお漬物!
陶器のお茶碗には白米がよそってあって、木のお椀には味噌汁が・・・味噌汁だよね?
そしてカトラリーは当たり前のようにお箸。
『・・・・・・和食だ』
思わず呟くとレイヴンが微笑んだ。
「ブランシュのところではワショクって言うのか。この里特有の郷土料理なんだが、食べられるか?」
『うんうん! お箸も大丈夫。ああ懐かしい。どれも馴染みのある料理だよ』
僕がそう言うと、レイヴンの家族・・・いやもう僕の家族だね、皆が微笑んだ。
「それは良かった。たくさんおかわりしてね」
「そうそう、遠慮はいらないからね」
ばぁばと母様がそう言って、じぃじと父様、兄様も頷く。
レイヴンは僕の頭を撫ぜてくれた。
「さあ食べよう」
『はい。頂きます!』
「「「「「「頂きます」」」」」」
皆がそう言って箸を付け始めた。
僕もお味噌汁を一口飲む。
ほわっと出汁の効いた優しい味にほっこり。
次に白米をパクリ。
これは見た目がすでにジャポニカ米で艶々だったから確信してたけど、間違いなくもちもち甘いお米!
感動でウルッとしちゃったけど、よく噛んで飲み込む。
お芋の天ぷらにお塩を付けてパクリ。
衣がサクサク。
サツマイモっぽいお芋がほくほくで甘い。
煮魚は、この里の近くには海が無いから川魚らしい。
白身魚で甘辛く煮付けてあって、身がふっくら。
筑前煮も前世とあまり変わらない根菜が使われていて味も似ていた。
───ただ・・・・・・。
『え? レンコンじゃないの?』
「それは普通に畑でニョキニョキ生えてるな。前世じゃ違うのか?」
レイヴンが不思議そうに聞いてくる。
父様達も気になるみたい。
『水の中の泥に埋まってる根っこの部分だったはず・・・・・・さすが異世界。不思議がいっぱい』
「じゃあ明日は農園を見に行くか?」
『良いの? イク!』
「・・・・・・行く、な?」
僕の発音?にレイヴンが掌で額を押さえてツッコみ、カンア兄様が爆笑していた。
何故に?
そんな感じで、前世含めて人生(精霊生)初の家族団欒を過ごした僕は、相当興奮していたんだと思う。
『おやすみなさい!』
「「「「「おやすみ」」」」」
「おやすみ」
レイヴンの部屋のお風呂に連れ込まれた僕は、無意識に自分のスキル『誘い受け』を発動したようで、お腹いっぱいなのにまたレイヴンにめちゃくちゃ明け方まで精液注がれて。
気絶するように眠って目が覚めたのがお昼過ぎだった。
レイヴンは一度起きてから僕の横で寝転んでいたらしく、軽装だけど着替えていた。
「おはよう。・・・・・・いやおそようか」
『・・・・・・おはよう。誰のせい?』
「俺と、半分はブランシュだな」
『・・・・・・だよねえ』
むうっとした顔でそう言うとレイヴンが笑って言った。
自業自得ってヤツだね。仕方がない。
「身体が平気なら、着替えたあと軽く食べて畑とか見に行くか?」
『うん、お願いします』
そうして支度したあと母様達に出くわして、一緒にお茶を飲みながら今朝はごめんなさいと謝った。
母様達はほのほの笑って言った。
「それだけ気を許してくれてるってコトよ。嬉しいわ。もう貴方の実家なんだから気にせずに好きに過ごしていいのよ」
「とっくに我が家の子なんだから」
そう言ってくれて、僕は本当に嬉しくて。
色々と今世も辛かったけど、『神様ありがとう』って心から思ったんだ。
※閏年だ。いえ話に関係ないですけど。
暇はないが追い詰められると書きたくなる。でも時間無いのでたまに。
イラスト描きたい。時間無い。ジレンマ。一日が短い。ウキーッ!
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