28 / 43
27 レイヴンの一族 4
しおりを挟む結界の境目辺りからカンアのあとに続いて里の中心に移動していくレイヴン達。
徐々に家並みが増えてくるのに従い、里の住人も増えてきてブランシュはハッとしてフードを被ろうとした。
---あまり他の人に顔を見せるなって言われてたっけ。
ということを思い出したので。
だがソレをレイヴンが止めた。
不思議に思ったブランシュはレイヴンを見つめる。
『・・・レイヴン?』
「・・・・・・被らなくて良い。ココはブランシュの故郷にもなるんだから、皆に顔を知っておいて貰いたい。・・・・・・もの凄く不本意だが・・・」
渋い顔でそう言うレイヴンにキョトンとしたブランシュ。
カンアは訳知り顔でレイヴンを揶揄うように言った。
「おーおー、狭量な男は嫌われるよ、レイヴン。でも顔を知って貰うのは良いことだ。何かあってもすぐに手を貸せるからね」
「・・・煩い」
『えと? ありがとう?』
今イチ飲み込めていないブランシュに苦笑しつつ、その頭をポンポンと撫ぜる。
その手をはにかんで受け入れるブランシュに里の住人もほっこりしていたのだが、気付いていないのはブランシュだけだ。
「・・・可愛いねえ。素直で何でも信じちゃいそう。・・・この里にはまずいない人種だねえ」
「だから良い反面、悪いんだ。絶対、ブランシュが構われる未来しか見えない。・・・俺のブランシュなのに・・・!」
思わずといった具合のカンアに歯軋りするレイヴン。
自分達とは真逆のブランシュ。
まさしく真っ白い心の精霊・・・元人間だという、異世界からの転生者。
鴉一族の闇を照らし救ってくれるような『創造神の愛し子』を称号に持つ、まさしく愛おしい精霊。
---コレは必然だったのかもねえ・・・。
カンアは次期頭領として鴉一族の闇を引き継いでいく。
過去も現在も未来も、鴉一族の進む道は変わらない。
闇を味方にして主に暗殺を生業とする。
あらゆる情報を集め、ソレを元に情報操作をして一国を滅ぼすことも出来る。
もちろん無差別な殺略を好むわけではない。
雇い主があまりにも人道に反するような場合は例え雇い主であろうと首を斬る。
・・・もちろん言葉通りの意味で。
鴉一族の里は、そんな一族の隠里なのだ。
ソレをこの純粋で稚い精霊が知ったら、一体どんな反応をするのだろう。
カンアはソレを想像して、苦笑するのだった。
「さあさあ、広場に皆、集まって!! レイヴンの可愛いお嫁さんのお披露目をするよ!」
カンアが大きな声でそう告げると、ワッと言う声があちらこちらから聞こえてきた。
足音もさせずに大勢の気配だけ感じられる。
『・・・・・・なんか、忍びみたい』
「シノビ?」
レイヴンが不思議そうに聞き返してきたので、ブランシュは分かる範囲で説明した。
『ああ、うん。僕の前世で昔、実際にいた人達なんだけど、足音も立てずに闇に紛れて行動する人達でね。えーと、ご主人様に仕えてて敵をこっそり倒したり隠密行動をする人。普段は人の生活に普通に紛れてて正体不明なんだ。カッコいいよねえ』
ブランシュがそう言いながらちょっとうっとりしたので若干イラッとするレイヴン。
だが気になるところがあったので聞いてみた。
「・・・昔って事はブランシュが以前いたときは、もういなくなってたって事か?」
『うん。とっくに平和な世の中になってて、必要無くなっちゃったのかな? 子孫はいるらしかったけど。僕も話でしか聞いたこと無いの。でも凄く速く走れたり、高いところもピョンピョンと跳んで渡ったり出来るんだって。武器も投げたり戦ったり出来たんだって。凄いよねぇ。レイヴンみたい!』
---レイヴンみたい!
聞けば聞くほど鴉一族のようだな、と思っていたが、最後に言ったブランシュの一言に思わずグッときたレイヴンだった。
ソレを面白そうにカンアが見ていて、コレは後で絶対に揶揄われるなと思ったが、それ以上にブランシュが愛おしくて、思わず口吻をするレイヴン。
『---ッレイヴン! 人前は、はっ恥ずかしい・・・』
「すまん。だがブランシュが可愛いのが悪い」
『えええ・・・』
「はっはっは!」
何だか納得いかないという顔でむくれたブランシュを宥めつつ、朗らかに笑うカンアの後を追うレイヴンだった。
※遅くなりました。
まだお披露目出来てない・・・。
79
お気に入りに追加
459
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる