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25 レイヴンの一族 3
しおりを挟むそれから間もなく・・・と言ってもレイヴンの翔ぶ速度はかなり速いので距離はかなりあったがどうやら鴉一族の里に着いたようで、何やら結界のような膜を抜けたような感じがした。
『・・・? レイヴン、今何か・・・?』
「ああ、気付いたか。里の周辺を一定の距離で何重にも結界魔法で囲んでいるんだ。鴉一族の者か番いか、後は許可されたモノしか通れないようになってる」
『ふええ・・・。ずいぶん厳重なんだねぇ。あっ、僕はレイヴンの番い・・・お嫁さんだから入れるって事?』
「そうだな」
レイヴンがそう告げると、ブランシュは少し考えてから言った。
『・・・えっと、無いとは思うけど、万が一、僕が一人だったとしても入れる?』
心配そうなブランシュに、そんな日は来ないと断言したかったが、コレばかりはさすがに約束できないと眉を寄せるレイヴン。
「---万が一にも無いと思うが、そうだな。例えブランシュだけになっても入れる。だから、もし何かあって一人になったら、ココに逃げ込めば助かるからな。後でブランシュにだけ分かるように里の場所を示す魔法を付与してやる」
『・・・お願いします。実は僕、もの凄い方向音痴なんだよね・・・へへっ』
「---・・・・・・そうか・・・」
そう言うと照れくさそうに笑うブランシュ。
だがしかし、そのカミングアウトはどうかと思う。
コレは方角が分かるだけじゃダメなんじゃ・・・と心の中で溜息を吐くレイヴンだった。
そして幾つ目かの結界魔法をくぐり抜けて見えてきたのは、山の麓に広がる長閑な田園風景。
『・・・・・・なんか不思議。あ、アレか。外国の片田舎っぽい。放牧とかしてそうな・・・』
「ああ、放牧もしてるな」
『え?! 羊とかヤギとか牛さんとか?!』
「そうだな。羊毛とか刈ったり乳製品を自家製で作ったり」
『え、あのあの、後で近くで見られたりは・・・』
「出来るよー!! 後で案内してあげる!」
『ぅひゃあっ?!』
「---兄貴・・・。スマン、ブランシュ。驚いたな」
ブランシュがスキルを解いて景色を堪能していれば、不意にかけられた言葉にビクッと飛び跳ねた。
ソレを抱き締めて宥めつつ、声をかけた張本人を睨みつける。
「アレ、ごめんね? 驚かせちゃった? 初めまして。俺はこの鴉一族の里の次期頭領でレイヴンの兄のカンアって言います! レイヴンの3歳上でちょうど30歳だよ。ヨロシクね」
「ヨロシクしなくて良いぞ」
レイヴンがブスッとそう言ったが、ブランシュには聞こえなかったようだ。
もじもじしながらカンアに自己紹介をする。
『・・・え?! えっと、ブランシュと言います。レイヴンさんのお、お嫁さん、です。歳は・・・ちょっと分かんないです。あの、よろしくお願いします』
「おー、かっわいいねえ! うん、よろしく。・・・・・・レイヴン、ずいぶん可愛い子を番いにしたねえ。こりゃあ、里中、大騒ぎになるなあ」
レイヴンよりも頭半分背が低くレイヴンよりも線の細い、肩までの切り揃えた黒髪と柔らかい黒瞳のカンア。
人懐っこそうな笑みで挨拶を交わした後、レイヴンとこそこそ話をしている。
ブランシュはそれよりも、さっきカンアが言った事が気になっていた。
---生の羊さんとか牛さんとか、見せて貰えるの?!
もしかして乳搾りとかさせて貰えるかなあ?
前世、密かに動物と触れ合いたかったブランシュは、ソッチに気がいってレイヴンとカンアが何やら相談していることに気づかなかったのであった。
※遅くなりました。
レイヴンの年齢は27歳です。言ってなかった気がします。
ブランシュよりも年下です!
そんな要素どこにも無いけど、年下ったら年下なんです!
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