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15 告白という名のカミングアウト 3
しおりを挟むレイヴンの言葉に、僕は泣きそうになった。
この人なら大丈夫。
『・・・・・・僕は、タマミズキのドライアドとして生まれる前の記憶があります。あの・・・さっき夢で見て思い出したんですけど・・・』
「---そうか」
それだけ言って、後は聞く姿勢になったレイヴンに頷くと、話を続ける。
覚えてるのは大まかな生い立ちと死んだ時の気持ちくらいだけど。
『ココとは違う世界で、魔法とか無い、割と平和な国でした。でも僕は、小さい時に親に育児放棄されて施設に入り、大人になったら恋人だと思った人に・・・初めてを酷く手荒に奪われて・・・捨てられました。それが原因で死んだあと、たぶんこの世界の神様にココで生きてみないかって言われて、生まれ変わりました』
「うん」
レイヴンは顔色を変えず、頷く。
---驚かないのかな?
もしかして前世の記憶持ちって、結構いたりする?
ブランシュはそう思いながら話を続ける。
『でも、あの・・・こんな、精霊とかどうしてあの森にいたのかとかは、全然・・・・・・分からなくて・・・気付いたらレイヴンがいて、あんな・・・あんな・・・・・・』
「・・・そうか」
思わず真っ赤になって言葉に詰まった。
レイヴンも思い出したのか、一瞬口元がピクッとした気がする。
---きっと笑いを堪えてるんだ。
あの時の私は転けて藪にツッコんだ上に必死になってレイヴンを誘って、挙げ句、仕方無かったとは言え、アレっていわゆる青姦で。
あの時の行為をガッツリ思い出してしまった僕は、真っ赤になって熱を持った頬を手で隠しながらしどろもどろに言った。
『---あの・・・・・・おバカな私で、スミマセン。僕・・・前世を思い出しちゃって、今までのブランシュと混じっちゃって・・・色々と違っちゃってるけど、あの・・・その・・・・・・』
「うん」
『・・・・・・捨てないで・・・』
「ああ」
『・・・・・・嫌わないで・・・』
「もちろん」
か細い声で必死に言い募ると、レイヴンに即答された。
そろっと顔を上げると、厳ついけど相変わらずの優しい顔で僕を見つめていた。
『・・・・・・僕は、このまま、レイヴンの・・・お嫁さんで、いい?』
「ああ。何度でも言う。お前は俺の従魔で伴侶だ。これは死ぬまで変わらん。ブランシュはブランシュだ。それに元々僕の意識はあったんだろう。昨日ヤってる時、たまに様子が違った」
---精霊のクセに、幸せとか愛しいとか、まるで人の心を持ったようで嬉しかったんだ。
レイヴンがそう言いながらブランシュをぎゅうっと抱き締めた。
「お前という前世が表に出たことで、アホな子から人並みに昇格しただけだ。それ以外は変わらん」
『---貶されてるのか褒められてるのか良く分からないけど・・・うん、まあ良いか。ありがとう、受け入れてくれて。コレからも、末永くよろしくお願いしますね、旦那様』
「---っああ。じゃあ、コレ着けてくれるな?」
そう言って一度ぎゅっと抱き締めてから離れたレイヴンは、さっきの装飾品を改めて見せてきた。
『・・・はい。あの・・・・・・レイヴンが着けて?』
「・・・お前は、本当に・・・・・・いや、嬉しいが・・・意味分かってないだろう」
『?』
ブランシュの発言に色々と煽られているレイヴン。
それに全く気付かないブランシュ。
---コイツの『誘い受け』スキルは絶対前世からの才能だろ。無自覚で質が悪い!
内心で舌打ちすると、一呼吸してからブランシュの耳に触れる。
ほんのり桃色に色づいた可愛らしい耳たぶをふにふにと触る。
当然ピアスホールなど無いから穴を開け無くちゃいけないんだが・・・。
「・・・・・・ブランシュ? ピアスホールを開けるぞ? ちょっとだけ痛むかもしれんが」
『はははい、だっ大丈夫でっす! ひと思いにブスッとヤっちゃって下さいぃ・・・!!』
ギュッと目を瞑って両手の平をお祈りするみたいに胸元で組んでぷるぷるしている。
コワいのか恥ずかしいのかどっちともつかない感じだ。
---昨日までのブランシュだったら『痛くても大丈夫ですよぉ』ってのほほんと笑ってただろう事が想像できたが・・・このブランシュも人間味があって、可愛い。
・・・・・・小動物を苛めてる気分にもなるが。
「---じゃあ、遠慮なく」
『---ひっ』
サラマンダーの鱗を加工した紅いピアスを躊躇無くぷつっと刺してすぐに治癒魔法をかける。
---効くかどうか心配だったが、従魔兼伴侶になったからか、俺の精液で満たされているせいなのか、ちゃんと効果があったことにほっとする。
『・・・アレ、痛くない? レイヴン、何かしました?』
「ああ、治癒魔法をな」
『えっ?! 凄いです! レイヴンって色々と出来るんですねえ。コレがスパダリか』
「・・・・・・何だ、その、すぱだりって?」
『ええと、前世で聞いた言葉で、何でも出来る凄い旦那様って意味です! レイヴンにピッタリですよね!』
「---ああ・・・そうか」
思わず照れてしまい、ぶっきらぼうに言ってしまったが、内心嬉しくて仕方ないレイヴンだった。
そうしてネックレスはチョーカータイプ、左手の薬指には指環を、同じく左腕の手首に腕輪を付けて貰った。
「どれも外れないように俺の魔力で固定してあるから。失くすことも破損することも無いから安心しろ」
『ありがとうございます。・・・どれも羽根のデザインなんですね。素敵です』
「俺の翼だ。ちなみに俺の耳にもお揃いで着けてる」
ほら、といわれて見れば、黒髪からちらりと覗く紅がカッコいい。
『カッコいい・・・・・・お揃い、憧れてたんです。嬉しいな、生まれ変われて良かった』
そう言ってはにかむブランシュを思わずぎゅっと抱き締めるレイヴンだった。
※キリが良いところが無くて、ちょっとココで一旦切って、次話に続きます。
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