天然美人魔性植物と強面冒険者のアレコレ(仮)

エウラ

文字の大きさ
上 下
16 / 43

15 告白という名のカミングアウト 3

しおりを挟む

レイヴンの言葉に、僕は泣きそうになった。

この人なら大丈夫。

『・・・・・・は、タマミズキのドライアドとして生まれる前の記憶があります。あの・・・さっき夢で見て思い出したんですけど・・・』
「---そうか」

それだけ言って、後は聞く姿勢になったレイヴンに頷くと、話を続ける。

覚えてるのは大まかな生い立ちと死んだ時の気持ちくらいだけど。

『ココとは違う世界で、魔法とか無い、割と平和な国でした。でもは、小さい時に親に育児放棄されて施設に入り、大人になったら恋人だと思った人に・・・初めてを酷く手荒に奪われて・・・捨てられました。それが原因で死んだあと、たぶんこの世界の神様にココで生きてみないかって言われて、生まれ変わりました』
「うん」

レイヴンは顔色を変えず、頷く。

---驚かないのかな?
もしかして前世の記憶持ちって、結構いたりする?

ブランシュはそう思いながら話を続ける。

『でも、あの・・・こんな、精霊とかどうしてあの森にいたのかとかは、全然・・・・・・分からなくて・・・気付いたらレイヴンがいて、あんな・・・あんな・・・・・・』
「・・・そうか」

思わず真っ赤になって言葉に詰まった。
レイヴンも思い出したのか、一瞬口元がピクッとした気がする。

---きっと笑いを堪えてるんだ。

あの時のは転けて藪にツッコんだ上に必死になってレイヴンを誘って、挙げ句、仕方無かったとは言え、アレっていわゆる青姦で。

あの時の行為をガッツリ思い出してしまった僕は、真っ赤になって熱を持った頬を手で隠しながらしどろもどろに言った。

『---あの・・・・・・おバカなで、スミマセン。僕・・・前世を思い出しちゃって、今までのブランシュと混じっちゃって・・・色々と違っちゃってるけど、あの・・・その・・・・・・』
「うん」
『・・・・・・捨てないで・・・』
「ああ」
『・・・・・・嫌わないで・・・』
「もちろん」

か細い声で必死に言い募ると、レイヴンに即答された。
そろっと顔を上げると、厳ついけど相変わらずの優しい顔で僕を見つめていた。

『・・・・・・は、このまま、レイヴンの・・・お嫁さんで、いい?』
「ああ。何度でも言う。お前は俺のだ。これは死ぬまで変わらん。ブランシュはブランシュだ。それに元々の意識はあったんだろう。昨日ヤってる時、たまに様子が違った」

---精霊のクセに、幸せとか愛しいとか、まるで人の心を持ったようで嬉しかったんだ。

レイヴンがそう言いながらブランシュをぎゅうっと抱き締めた。

「お前という前世が表に出たことで、からに昇格しただけだ。それ以外は変わらん」
『---貶されてるのか褒められてるのか良く分からないけど・・・うん、まあ良いか。ありがとう、受け入れてくれて。コレからも、末永くよろしくお願いしますね、旦那様』
「---っああ。じゃあ、着けてくれるな?」

そう言って一度ぎゅっと抱き締めてから離れたレイヴンは、さっきの装飾品を改めて見せてきた。

『・・・はい。あの・・・・・・レイヴンが着けて?』
「・・・お前は、本当に・・・・・・いや、嬉しいが・・・意味分かってないだろう」
『?』

ブランシュの発言に色々と煽られているレイヴン。
それに全く気付かないブランシュ。

---コイツの『誘い受け』スキルは絶対前世からの才能だろ。無自覚で質が悪い!

内心で舌打ちすると、一呼吸してからブランシュの耳に触れる。

ほんのり桃色に色づいた可愛らしい耳たぶをふにふにと触る。
当然ピアスホールなど無いから穴を開け無くちゃいけないんだが・・・。

「・・・・・・ブランシュ? ピアスホールを開けるぞ? ちょっとだけ痛むかもしれんが」
『はははい、だっ大丈夫でっす! ひと思いにブスッとヤっちゃって下さいぃ・・・!!』

ギュッと目を瞑って両手の平をお祈りするみたいに胸元で組んでぷるぷるしている。
コワいのか恥ずかしいのかどっちともつかない感じだ。

---昨日までのブランシュだったら『痛くても大丈夫ですよぉ』ってのほほんと笑ってただろう事が想像できたが・・・このブランシュも人間味があって、可愛い。

・・・・・・小動物を苛めてる気分にもなるが。

「---じゃあ、遠慮なく」
『---ひっ』

サラマンダーの鱗を加工した紅いピアスを躊躇無くぷつっと刺してすぐに治癒魔法をかける。

---効くかどうか心配だったが、従魔兼伴侶になったからか、俺の精液魔力で満たされているせいなのか、ちゃんと効果があったことにほっとする。

『・・・アレ、痛くない? レイヴン、何かしました?』
「ああ、治癒魔法をな」
『えっ?! 凄いです! レイヴンって色々と出来るんですねえ。コレがか』
「・・・・・・何だ、その、すぱだりって?」
『ええと、前世で聞いた言葉で、何でも出来る凄い旦那様って意味です! レイヴンにピッタリですよね!』
「---ああ・・・そうか」

思わず照れてしまい、ぶっきらぼうに言ってしまったが、内心嬉しくて仕方ないレイヴンだった。


そうしてネックレスはチョーカータイプ、左手の薬指には指環を、同じく左腕の手首に腕輪を付けて貰った。

「どれも外れないように俺の魔力で固定してあるから。失くすことも破損することも無いから安心しろ」
『ありがとうございます。・・・どれも羽根のデザインなんですね。素敵です』
「俺の翼だ。ちなみに俺の耳にもお揃いで着けてる」

ほら、といわれて見れば、黒髪からちらりと覗く紅がカッコいい。

『カッコいい・・・・・・お揃い、憧れてたんです。嬉しいな、生まれ変われて良かった』

そう言ってはにかむブランシュを思わずぎゅっと抱き締めるレイヴンだった。






※キリが良いところが無くて、ちょっとココで一旦切って、次話に続きます。





しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

処理中です...