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3 魔性植物・・・?
しおりを挟むギルマスの執務室に入ると、サブギルマスが防音の魔法を展開した。
このサブギルマスはエルフで、魔法が得意なのだ。
ちなみにギルマスは鬼人である。
見た目もゴツいし言動も粗野だが、実は心優しい鬼である事は街の住民達の知るところだ。
「とりあえず座れ。その、抱き上げているヤツも」
「・・・はい。・・・・・・ブランシュ、俺の隣に」
『お邪魔しますぅ』
ギルマスに促されて向かいのソファに腰掛けるとブランシュを左側に座らせた。
ちなみに冒険者ギルドに入ったときに同化を止めたので今は普通に見えている。
「・・・で? ソイツ、どうしたんだ?」
「レイヴン、悪いけど、従魔登録の前に経緯を教えて貰って良いかな?」
ギルマスとサブギルマスが問いかけてきたので、隠すことでも無いな、と話すことにした。
「構いません。良いよな、ブランシュ?」
『良いですよぉ』
俺達のやり取りに呑気に返事をするブランシュ。
相変わらずのマイペースっぷりだな。
「・・・随分とおっとりした子だな」
「最初からこんな感じですね。・・・今日、俺は街外れのあの森に一人で入りました。数日はのんびり休養にあてようと思って、ふと行きたくなったんです」
「Sランクのお前が何にも無いあの森に、何故? ・・・まあ良い、ソレで?」
そう言われても、本当に思い立っただけで深い理由は無いんだが、と黙っているとギルマスが先を促したので続ける。
「適当にぶらついて奥まで行きましたが、やはり何も旨味が無いなと踵を返そうとしたらコイツに話しかけられました」
「・・・一応聞くが、なんて?」
「要約すると『今まで一度も栄養を摂って無くて死にそうだから、くれ』と言う感じで。で、足が根っこのように地面と一体化していたので『魔性植物か?』と・・・」
ソコまで言うとギルマスは眉間に皺を寄せてこめかみを指でぐりぐりした。
「---コレも一応聞くが、栄養って?」
「『精液』です」
「「・・・は?」」
ギルマス達はポカンとブランシュを見つめた。
「『処女を貰ってくれ』と言うので、気の済むまで与えました。・・・・・・結果、コイツが勝手に従魔契約を結んでしまい、今に至ります」
『初めての精液、とっても美味しかったですぅ』
うっとりとしながら無邪気にそう言うブランシュを見て、レイヴンを見て、溜息を吐くギルマス達。
「・・・・・・ソレは何とも・・・・・・」
「・・・はあ、ソレはなんというか・・・ご愁傷様?」
レイヴンも面倒になってきたのでサッサと終わらせて帰ろうと思った。
「分かって頂けたなら、サッサと従魔登録して帰りたいんですが・・・」
そう言ったら、サブギルマスが待ったをかけた。
「---あー・・・、ソレね、ちょっと、確認なんだけど」
「・・・ミーティア?」
「ウォーレン、コレを確認しないとマズいんですよ」
怪訝そうにサブギルマスの名を呼ぶギルマスに、付き合いの長いサブギルマスもギルマスの名前を呼んで応えた。
「・・・・・・何でしょう?」
レイヴンがやや警戒すると、ミーティアが問いかけてきた。
「その子、本当に魔性植物なのかな?」
「・・・本人がそうだと・・・・・・いや、たぶん?みたいな事を言ってたが・・・・・・え? ・・・ブランシュ?」
思わずブランシュに問いかけると、気まずそうに笑いながらぽそっと言った。
『・・・・・・えっとねぇ・・・・・・忘れました・・・?』
「オイコラ!」
『だってぇ・・・、生まれてすでに幾星霜って言ったでしょ? 憶えてないんですもん。自分が何なのか・・・』
ソレを聞いてレイヴンもギルマス・・・ウォーレンも唖然としている中、サブギルマスのミーティアだけは確信を持った表情で頷いていた。
「・・・貴方、森の精霊ドライアドですね?」
「・・・・・・」
「・・・・・・はああっ?!」
『そうなんです?』
ミーティアの発言にレイヴンは固まり、ウォーレンは叫んだ。
ブランシュはのほほんと笑っている。
---防音にしておいて正解だったと、ミーティアは溜息を吐いた。
※さっき、女性向けhotランキングに入ってたのに気付き、ルンルンして調子こいて投稿してます!
皆様、読んで下さってありがとうございます!
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