天然美人魔性植物と強面冒険者のアレコレ(仮)

エウラ

文字の大きさ
上 下
4 / 43

3 魔性植物・・・?

しおりを挟む

ギルマスの執務室に入ると、サブギルマスが防音の魔法を展開した。

このサブギルマスはエルフで、魔法が得意なのだ。
ちなみにギルマスは鬼人である。
見た目もゴツいし言動も粗野だが、実は心優しい鬼である事は街の住民達の知るところだ。

「とりあえず座れ。その、抱き上げているヤツも」
「・・・はい。・・・・・・ブランシュ、俺の隣に」
『お邪魔しますぅ』

ギルマスに促されて向かいのソファに腰掛けるとブランシュを左側に座らせた。
ちなみに冒険者ギルドに入ったときに同化透明化を止めたので今は普通に見えている。

「・・・で? ソイツ、どうしたんだ?」
「レイヴン、悪いけど、従魔登録の前に経緯を教えて貰って良いかな?」

ギルマスとサブギルマスが問いかけてきたので、隠すことでも無いな、と話すことにした。

「構いません。良いよな、ブランシュ?」
『良いですよぉ』

俺達のやり取りに呑気に返事をするブランシュ。
相変わらずのマイペースっぷりだな。

「・・・随分とおっとりした子だな」
「最初からこんな感じですね。・・・今日、俺は街外れの森に一人で入りました。数日はのんびり休養にあてようと思って、ふと行きたくなったんです」
「Sランクのお前が何にも無いあの森に、何故? ・・・まあ良い、ソレで?」

そう言われても、本当に思い立っただけで深い理由は無いんだが、と黙っているとギルマスが先を促したので続ける。

「適当にぶらついて奥まで行きましたが、やはり何も旨味が無いなと踵を返そうとしたらコイツに話しかけられました」
「・・・一応聞くが、なんて?」
「要約すると『今まで一度も栄養を摂って無くて死にそうだから、くれ』と言う感じで。で、足が根っこのように地面と一体化していたので『魔性植物か?』と・・・」

ソコまで言うとギルマスは眉間に皺を寄せてこめかみを指でぐりぐりした。

「---コレも一応聞くが、って?」
「『精液』です」
「「・・・は?」」

ギルマス達はポカンとブランシュを見つめた。

「『を貰ってくれ』と言うので、与えました。・・・・・・結果、コイツが勝手に従魔契約を結んでしまい、今に至ります」
『初めての精液ご飯、とっても美味しかったですぅ』

うっとりとしながら無邪気にそう言うブランシュを見て、レイヴンを見て、溜息を吐くギルマス達。

「・・・・・・ソレは何とも・・・・・・」
「・・・はあ、ソレはなんというか・・・ご愁傷様?」

レイヴンも面倒になってきたのでサッサと終わらせて帰ろうと思った。

「分かって頂けたなら、サッサと従魔登録して帰りたいんですが・・・」

そう言ったら、サブギルマスが待ったをかけた。

「---あー・・・、ソレね、ちょっと、確認なんだけど」
「・・・ミーティア?」
「ウォーレン、コレを確認しないとマズいんですよ」

怪訝そうにサブギルマスの名を呼ぶギルマスに、付き合いの長いサブギルマスもギルマスの名前を呼んで応えた。

「・・・・・・何でしょう?」

レイヴンがやや警戒すると、ミーティアが問いかけてきた。

「その子、本当に魔性植物なのかな?」
「・・・本人がそうだと・・・・・・いや、たぶん?みたいな事を言ってたが・・・・・・え? ・・・ブランシュ?」

思わずブランシュに問いかけると、気まずそうに笑いながらぽそっと言った。

『・・・・・・えっとねぇ・・・・・・忘れました・・・?』
「オイコラ!」
『だってぇ・・・、生まれてすでに幾星霜って言ったでしょ? 憶えてないんですもん。自分が何なのか・・・』

ソレを聞いてレイヴンもギルマス・・・ウォーレンも唖然としている中、サブギルマスのミーティアだけは確信を持った表情で頷いていた。

「・・・貴方、森の精霊ドライアドですね?」
「・・・・・・」
「・・・・・・はああっ?!」
『そうなんです?』

ミーティアの発言にレイヴンは固まり、ウォーレンは叫んだ。
ブランシュはのほほんと笑っている。

---防音にしておいて正解だったと、ミーティアは溜息を吐いた。







※さっき、女性向けhotランキングに入ってたのに気付き、ルンルンして調子こいて投稿してます!
皆様、読んで下さってありがとうございます!
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...