67 / 76
64 初依頼報酬とか不穏な気配とか 2
しおりを挟む
解体作業場の受付窓口にいた職員に声をかける。
「スミマセン。さっき向こうの受付で討伐数の確認して貰って、獲物はこちらに提出するように言われたんですけど」
「あ、はい! じゃあタグを一度確認しますね。───はい・・・・・・はいっ!? え!?」
言われた通りにタグを出すと、確認していた受付職員が困惑した声をあげた。
まあ、あの数が異常だってさっき聞いたから分かるよ、その気持ち。
「向こうですでに報告済みで、サブギルマスが動いてるから心配ない」
「あっ、ナハトさん! そ、そうですか。じゃあいいのかな? えっとじゃあ、中にお入り下さい」
そう言って直接中に入れるようにカウンターを通してくれた。
大物や数によっては窓口で受け取れないため普通のことだそうだ。
なるほど確かに。
中はかなり広く、コレなら全部出しても余裕がある。よかった。
「こちらにお願いします。トーティさーん!」
「おー? 何だぁ? 呼んだかー?」
受付職員がトーティと呼んだ大柄な男の人がのっしのっしと近付いてきた。
栗毛色の緩めのくりくり天然パーマを刈り上げていて額にはラヴァのように角が生えていた。翡翠色の綺麗な瞳は三白眼の奥でギラついている。
筋骨隆々で背はナハトよりも大きい。二三〇センチメートルはあるかも。
捲った袖から見える太い二の腕や強面の頬にも細かい古傷があった。
僕には大きすぎて、近付かれると頭をだいぶ上に向けないと顔が見えない。しかしコレだと首がヤバい。
そんな葛藤をする僕に気付いたのか、単に抱っこがデフォなのか───いやきっと後者だろう、ナハトが僕をヒョイと抱え上げた。
おかげで目線が近くなった。助かる。
「おう、ナハトじゃねえか。最近番ったって聞いたが、その子が?」
「ああトーティ。そうだ。ユラという。よろしく・・・・・・して欲しくないが・・・・・・頼む」
「───っはは! 噂には聞いたがマジか! あのナハトがねえ! 安心しな。俺も家に番いが待ってる。気持ちは分かるよ!」
気易い態度で話す二人は、付き合いが長いのだろう。
不老不死のナハトが今のところは寂しくないことが知れてこういうのも悪くない。
人族以外は割と長寿っぽいし、すぐに逝かれることもなさそうな知り合いが多いのもよかった。
「おう、ユラって言うのか。俺はトーティ。解体作業場のリーダーで鬼人族だ。何かあれば遠慮なく頼ってくれ」
「ありがとうございます。ユラです。そのときはよろしくお願いします」
そう言って握手を交わそうとしたらナハトはトーティの手をはたき落とす。
「だから仲良くするなと───」
「いやお前、凄え嫉妬と独占欲。仲良くしてないと色々融通が利かねえだろうが。それに俺も番い持ちだから手なんか出さねえって」
「分かってはいるが、それとこれとは別ものだ」
「・・・・・・ねえ、そろそろフォレストウルフ出してもいい?」
二人の応酬に埒があかないと思った僕は溜め息を吐くとそう言った。
サッサと査定して貰って初依頼報酬受け取りたいんだけど。
そう思ってジト目で二人を見つめたら、ちょっとバツが悪そうに目を逸らされた。
うん。仕事して下さい。
「悪かったよ。じゃあこっちのテーブルの上に───いや待て。何頭いるんだ?」
「一二七頭」
トーティが示したテーブルもかなり大きかったが、絶対に乗らないよね。
受付職員がトーティに首をブンブン横に振っているのを見て何か察したのか、トーティが怪訝そうにしながら僕を見て聞いてきたから端的に応えてあげた。
「ハア? ・・・・・・嘘だろ。フォレストウルフだよな? ・・・・・・テーブルには乗らねえからアッチの床に出してくれ」
「了解です」
抱っこ状態でナハトが移動し、僕もそのままくっ付いていた。
「じゃあ出すけど、ひとまず一頭ね」
そう言って奥の石畳の床にポンと出すと、そのフォレストウルフの状態ですでにいいモノだったらしく、トーティの顔がみるみるイキイキとしてきて、ああこの人この仕事が天職なんだろうなって思った。
「残りも出す? それともアイテムボックスとかあればそっちに移すけど?」
「ああ、解体が終わるまではいい状態で保存したいから、そうだな、そっちに頼む!」
ウッキウキでアイテムボックスを持ってきて僕の足元に置いたので、サッサと移し替える。
「数が数だし、すぐには終わらねえから査定はちょっと待って貰えるか? なるべく今日中には出す」
「うん。別にいそがなくていいよ。夕方にまた来ればいい?」
「ああ、その頃には終わってるだろう」
そう言うトーティにナハトが返事をする。
「じゃあその頃また来る」
「じゃあまたね」
「おう。さあてお前ら! 一仕事するぜー!」
「オー!」
一気に活気づいた解体作業場をあとにして、僕達は一度冒険者ギルドを出るのだった。
フォレストウルフの大量発生の件?
呼ばれれば行くけど、自分から首を突っ込みたくはないかな?
初報酬はお預けになっちゃったから買い物は出来ないし。
それなら今はとにかく美味しいお昼ご飯ー!
「スミマセン。さっき向こうの受付で討伐数の確認して貰って、獲物はこちらに提出するように言われたんですけど」
「あ、はい! じゃあタグを一度確認しますね。───はい・・・・・・はいっ!? え!?」
言われた通りにタグを出すと、確認していた受付職員が困惑した声をあげた。
まあ、あの数が異常だってさっき聞いたから分かるよ、その気持ち。
「向こうですでに報告済みで、サブギルマスが動いてるから心配ない」
「あっ、ナハトさん! そ、そうですか。じゃあいいのかな? えっとじゃあ、中にお入り下さい」
そう言って直接中に入れるようにカウンターを通してくれた。
大物や数によっては窓口で受け取れないため普通のことだそうだ。
なるほど確かに。
中はかなり広く、コレなら全部出しても余裕がある。よかった。
「こちらにお願いします。トーティさーん!」
「おー? 何だぁ? 呼んだかー?」
受付職員がトーティと呼んだ大柄な男の人がのっしのっしと近付いてきた。
栗毛色の緩めのくりくり天然パーマを刈り上げていて額にはラヴァのように角が生えていた。翡翠色の綺麗な瞳は三白眼の奥でギラついている。
筋骨隆々で背はナハトよりも大きい。二三〇センチメートルはあるかも。
捲った袖から見える太い二の腕や強面の頬にも細かい古傷があった。
僕には大きすぎて、近付かれると頭をだいぶ上に向けないと顔が見えない。しかしコレだと首がヤバい。
そんな葛藤をする僕に気付いたのか、単に抱っこがデフォなのか───いやきっと後者だろう、ナハトが僕をヒョイと抱え上げた。
おかげで目線が近くなった。助かる。
「おう、ナハトじゃねえか。最近番ったって聞いたが、その子が?」
「ああトーティ。そうだ。ユラという。よろしく・・・・・・して欲しくないが・・・・・・頼む」
「───っはは! 噂には聞いたがマジか! あのナハトがねえ! 安心しな。俺も家に番いが待ってる。気持ちは分かるよ!」
気易い態度で話す二人は、付き合いが長いのだろう。
不老不死のナハトが今のところは寂しくないことが知れてこういうのも悪くない。
人族以外は割と長寿っぽいし、すぐに逝かれることもなさそうな知り合いが多いのもよかった。
「おう、ユラって言うのか。俺はトーティ。解体作業場のリーダーで鬼人族だ。何かあれば遠慮なく頼ってくれ」
「ありがとうございます。ユラです。そのときはよろしくお願いします」
そう言って握手を交わそうとしたらナハトはトーティの手をはたき落とす。
「だから仲良くするなと───」
「いやお前、凄え嫉妬と独占欲。仲良くしてないと色々融通が利かねえだろうが。それに俺も番い持ちだから手なんか出さねえって」
「分かってはいるが、それとこれとは別ものだ」
「・・・・・・ねえ、そろそろフォレストウルフ出してもいい?」
二人の応酬に埒があかないと思った僕は溜め息を吐くとそう言った。
サッサと査定して貰って初依頼報酬受け取りたいんだけど。
そう思ってジト目で二人を見つめたら、ちょっとバツが悪そうに目を逸らされた。
うん。仕事して下さい。
「悪かったよ。じゃあこっちのテーブルの上に───いや待て。何頭いるんだ?」
「一二七頭」
トーティが示したテーブルもかなり大きかったが、絶対に乗らないよね。
受付職員がトーティに首をブンブン横に振っているのを見て何か察したのか、トーティが怪訝そうにしながら僕を見て聞いてきたから端的に応えてあげた。
「ハア? ・・・・・・嘘だろ。フォレストウルフだよな? ・・・・・・テーブルには乗らねえからアッチの床に出してくれ」
「了解です」
抱っこ状態でナハトが移動し、僕もそのままくっ付いていた。
「じゃあ出すけど、ひとまず一頭ね」
そう言って奥の石畳の床にポンと出すと、そのフォレストウルフの状態ですでにいいモノだったらしく、トーティの顔がみるみるイキイキとしてきて、ああこの人この仕事が天職なんだろうなって思った。
「残りも出す? それともアイテムボックスとかあればそっちに移すけど?」
「ああ、解体が終わるまではいい状態で保存したいから、そうだな、そっちに頼む!」
ウッキウキでアイテムボックスを持ってきて僕の足元に置いたので、サッサと移し替える。
「数が数だし、すぐには終わらねえから査定はちょっと待って貰えるか? なるべく今日中には出す」
「うん。別にいそがなくていいよ。夕方にまた来ればいい?」
「ああ、その頃には終わってるだろう」
そう言うトーティにナハトが返事をする。
「じゃあその頃また来る」
「じゃあまたね」
「おう。さあてお前ら! 一仕事するぜー!」
「オー!」
一気に活気づいた解体作業場をあとにして、僕達は一度冒険者ギルドを出るのだった。
フォレストウルフの大量発生の件?
呼ばれれば行くけど、自分から首を突っ込みたくはないかな?
初報酬はお預けになっちゃったから買い物は出来ないし。
それなら今はとにかく美味しいお昼ご飯ー!
496
お気に入りに追加
1,119
あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

【書籍化進行中】ヒヨコの刷り込みなんて言わないで。魅了の俺と不器用なおっさん
tamura-k
BL
気づいたら知らない森の中に居た緑川颯太(みどりかわそうた)は、通りかかった30代前半のイケオジ冒険者のダグラスに運よく拾ってもらった。
何もわからない颯太に、ダグラスは一緒に町に行くことを提案した。
小遣い稼ぎに薬草を摘みながら町を目指して歩いていたが、どうやら颯太にはとんでもないスキルがあるらしいと判明。
ええ?魅了??なにそれ、俺、どうしたらいいんだよ?
一回りも違う気の良いイケオジ・ダグラスと年下・ツンデレなりそこない系のソウタ。
それはヒヨコの刷り込みと同じってバカにすんな!
俺の幸せは俺が決めるもんだろう?
年の差がお好きな方へ。
※はRぽい描写あり
************
書籍化の声をかけていただきまして、現在進行中です。
決まりましたら改めてお知らせいたします。
また、発売予定の一カ月前にはアルファポリス様の規約により、こちらは全て削除いたします。
(ムーンノベルの方ではそのままです)

寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる