(仮)攫われて異世界

エウラ

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64 初依頼報酬とか不穏な気配とか 2

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解体作業場の受付窓口にいた職員に声をかける。

「スミマセン。さっき向こうの受付で討伐数の確認して貰って、獲物はこちらに提出するように言われたんですけど」
「あ、はい! じゃあタグを一度確認しますね。───はい・・・・・・はいっ!? え!?」

言われた通りにタグを出すと、確認していた受付職員が困惑した声をあげた。
まあ、あの数が異常だってさっき聞いたから分かるよ、その気持ち。

「向こうですでに報告済みで、サブギルマスが動いてるから心配ない」
「あっ、ナハトさん! そ、そうですか。じゃあいいのかな? えっとじゃあ、中にお入り下さい」

そう言って直接中に入れるようにカウンターを通してくれた。
大物や数によっては窓口で受け取れないため普通のことだそうだ。

なるほど確かに。

中はかなり広く、コレなら全部出しても余裕がある。よかった。

「こちらにお願いします。トーティさーん!」
「おー? 何だぁ? 呼んだかー?」

受付職員がトーティと呼んだ大柄な男の人がのっしのっしと近付いてきた。

栗毛色の緩めのくりくり天然パーマを刈り上げていて額にはラヴァのように角が生えていた。翡翠色の綺麗な瞳は三白眼の奥でギラついている。
筋骨隆々で背はナハトよりも大きい。二三〇センチメートルはあるかも。

捲った袖から見える太い二の腕や強面の頬にも細かい古傷があった。

僕には大きすぎて、近付かれると頭をだいぶ上に向けないと顔が見えない。しかしコレだと首がヤバい。

そんな葛藤をする僕に気付いたのか、単に抱っこがデフォなのか───いやきっと後者だろう、ナハトが僕をヒョイと抱え上げた。
おかげで目線が近くなった。助かる。

「おう、ナハトじゃねえか。最近番ったって聞いたが、その子が?」
「ああトーティ。そうだ。ユラという。よろしく・・・・・・して欲しくないが・・・・・・頼む」
「───っはは! 噂には聞いたがマジか! あのナハトがねえ! 安心しな。俺も家に番いが待ってる。気持ちは分かるよ!」

気易い態度で話す二人は、付き合いが長いのだろう。
不老不死のナハトが今のところは寂しくないことが知れてこういうのも悪くない。
人族以外は割と長寿っぽいし、すぐに逝かれることもなさそうな知り合いが多いのもよかった。

「おう、ユラって言うのか。俺はトーティ。解体作業場のリーダーで鬼人族だ。何かあれば遠慮なく頼ってくれ」
「ありがとうございます。ユラです。そのときはよろしくお願いします」

そう言って握手を交わそうとしたらナハトはトーティの手をはたき落とす。

「だから仲良くするなと───」
「いやお前、凄え嫉妬と独占欲。仲良くしてないと色々融通が利かねえだろうが。それに俺も番い持ちだから手なんか出さねえって」
「分かってはいるが、それとこれとは別ものだ」
「・・・・・・ねえ、そろそろフォレストウルフ出してもいい?」

二人の応酬に埒があかないと思った僕は溜め息を吐くとそう言った。

サッサと査定して貰って初依頼報酬受け取りたいんだけど。

そう思ってジト目で二人を見つめたら、ちょっとバツが悪そうに目を逸らされた。
うん。仕事して下さい。

「悪かったよ。じゃあこっちのテーブルの上に───いや待て。何頭いるんだ?」
「一二七頭」

トーティが示したテーブルもかなり大きかったが、絶対に乗らないよね。

受付職員がトーティに首をブンブン横に振っているのを見て何か察したのか、トーティが怪訝そうにしながら僕を見て聞いてきたから端的に応えてあげた。

「ハア? ・・・・・・嘘だろ。フォレストウルフだよな? ・・・・・・テーブルには乗らねえからアッチの床に出してくれ」
「了解です」

抱っこ状態でナハトが移動し、僕もそのままくっ付いていた。

「じゃあ出すけど、ひとまず一頭ね」

そう言って奥の石畳の床にポンと出すと、そのフォレストウルフの状態ですでにいいモノだったらしく、トーティの顔がみるみるイキイキとしてきて、ああこの人この仕事が天職なんだろうなって思った。

「残りも出す? それともアイテムボックスとかあればそっちに移すけど?」
「ああ、解体が終わるまではいい状態で保存したいから、そうだな、そっちに頼む!」

ウッキウキでアイテムボックスを持ってきて僕の足元に置いたので、サッサと移し替える。

「数が数だし、すぐには終わらねえから査定はちょっと待って貰えるか? なるべく今日中には出す」
「うん。別にいそがなくていいよ。夕方にまた来ればいい?」
「ああ、その頃には終わってるだろう」

そう言うトーティにナハトが返事をする。

「じゃあその頃また来る」
「じゃあまたね」
「おう。さあてお前ら! 一仕事するぜー!」
「オー!」

一気に活気づいた解体作業場をあとにして、僕達は一度冒険者ギルドを出るのだった。

フォレストウルフの大量発生の件?

呼ばれれば行くけど、自分から首を突っ込みたくはないかな?

初報酬はお預けになっちゃったから買い物は出来ないし。
それなら今はとにかく美味しいお昼ご飯ー!















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