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63 初依頼報酬とか不穏な気配とか 1
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なんやかんやあって非常に疲れた初討伐依頼だったな───いや、僕が悪いんだけど。
案の定やらかしの一部始終をガッツリ見られていたらしく、オジサンからの苦笑を貰った。
「無事ならいいんだ」
そう言って笑ったあのオジサンは門衛隊の一番隊という隊の隊長さんだった。
名前はサムスさん。
色々気にかけてくれてありがとうございます。心配かけてごめんなさい、と頭を下げて冒険者ギルドに戻ってきた。
街中は僕のやらかしが塀のおかげで見えてなかったらしく、出かける前と何ら変わりがなかったのでホッとする。
ギルドに入ると、朝、依頼の手続きをしてくれた受付の職員がこちらに気付いて視線を投げてから首を傾げた。
「あれ? お早いお帰りですね。まだ受注してから二時間くらいですよね? 何かありました?」
ああ、そういう・・・・・・。確かにまだお昼にはずいぶん早い時間だ。なのに帰ってきたからどうしたのかと思ったんだな。
そりゃあそうか、フォレストウルフを最低でも五頭は討伐する依頼だったもんな。
「何かっていうか、依頼達成の報告に戻ったんだけど・・・・・・」
うん、何かはあったよ。あったけどここで言うことじゃないしね。依頼とは関係ないし!
そう思っていることがナハトにも伝わったんだろうか。頭上でクスッと笑う声が微かに聞こえた。
僕は肘でナハトの脇腹を軽く突く。
「え、フォレストウルフですよね? 最低五頭からっていうアレですよね? もう五頭見つけたんですか!?」
うん? フォレストウルフってそんなに見つかりづらい魔獣だった?
僕はチラリとナハトを見上げる。するとニヤリと笑った。
「フォレストウルフはウルフ系の魔獣だが、他のウルフ系と違ってあまり群れを作らない孤高のウルフなんだ。数頭いればいいほうだ」
「え? さっきめちゃくちゃいたじゃん。じゃあアレって異常だったってこと?」
「え、めちゃくちゃいたって、どういうことです!?」
僕とナハトが受付前でそんな話をしていると、受付職員が慌てたように立ち上がった。
僕はギルドタグを差し出して言った。
「えーとね、一二七頭いたかな?」
「ああ、数えたらいたな」
「───は?」
タグをチェックすれば何をどれだけ討伐したか分かるんだよね? まあ、現物もちゃんとポーチに収納されているけど。
しかし周りの職員やちらほらいた冒険者達がそれを聞いて一斉にザワついた。
誰かが『ギルマスかサブギルマスに連絡を!』とか言って走って行くのが見えた。
「・・・・・・え、そんな大事? ていうか新米冒険者の僕の言うこと信じるんだ?」
「そりゃあ初日からアレだけやらかして、なおかつ俺の番いだからな。疑う方がおかしいだろう」
「そう?」
忙しなく動いている職員達をぽけっと眺めながら呑気に話す僕達の元にダオラがやって来た。
「おいナハトさん、ユラ君! エクシズの森にフォレストウルフの群れだって!?」
いつもの飄々としたオネエっぽい口調はなりを潜め、見た目通りの厳つい言葉になっている。
それを聞くとサブギルマスも威厳というかオーラを感じるなぁなんてどうでもいいことを思った。
「今朝ユラが受けたフォレストウルフの討伐依頼でエクシズの森に行ったんだが、浅いところだったのに出たぞ」
ナハトの説明に僕も補足を入れる。
「うん。最初に三頭、ナハトが斥候だって言ってた。それを倒したら奥からぞろぞろと現れてきたね」
それを聞いたダオラは僕を見て聞いた。
「それで? ユラが全部討伐したのか?」
「うん。僕の受けた依頼だし? で、数えてみたら一二七頭だった」
「それ以降は周りに気配がなかったから戻ってきたんだが」
僕も周囲の気配を読んだしナハトも念のために索敵してくれたけど、それ以降はフォレストウルフの気配はなかった。
「・・・・・・森の奥の方で何かあったのか? 念のため調査をしたほうがよさそうだな。誰かギルマスに報告をして───」
ブツブツと呟きながら職員達に指示を出すダオラに悪いと思いつつも僕は声をかけた。
「そんなに異常事態なんだ?」
「ああ、数頭現れることはたまにあるが、百頭を越えるような数はおかしい。下手をしたらスタンピードの予兆かもしれん」
「スタンピード・・・・・・」
「ユラ、ひとまずダオラに任せよう。お前は討伐完了の手続きが必要だろう?」
真剣な顔でそう告げるダオラ。僕は気になるもナハトの言葉に気持ちを切り替えた。
「そうだ。あの、依頼完了の手続きお願いします。あとフォレストウルフをどこに出せばいいですか? 量が量なので・・・・・・」
「あっ! そうでした。スミマセン。タグで討伐数と種類を確認しますので、そのあと向こうの解体作業場に提出をお願いします」
タグを確認したあと返して貰って、向こう、と指示された場所に向かう。
アッチで素材や魔物などを査定して報酬を決めて貰うそうだ。
「あそこで提出すると今回のように必要な素材を査定して金額を出したり買い取ってくれたりするんだ」
「なるほど」
僕の依頼のように毛皮が欲しいという場合はこっちで査定がいるんだね。
「そこでタグに査定額などを記録して貰い、もう一度さっきの受付にタグを出すと依頼完了かの判断と査定金額の支払いをしてくれる」
毛皮の状態によっては討伐数がクリアされてても完了扱いにはならないってことかな。
「討伐だけの依頼だったら受付だけですむ?」
「ああ、討伐数や種類が分かれば受付だけで終わりだ。別途、素材を売りたいときはあとで直接解体作業場に行けばいい」
「ふーん」
ナハトに説明をして貰いながら僕達は解体作業場に移動した。
案の定やらかしの一部始終をガッツリ見られていたらしく、オジサンからの苦笑を貰った。
「無事ならいいんだ」
そう言って笑ったあのオジサンは門衛隊の一番隊という隊の隊長さんだった。
名前はサムスさん。
色々気にかけてくれてありがとうございます。心配かけてごめんなさい、と頭を下げて冒険者ギルドに戻ってきた。
街中は僕のやらかしが塀のおかげで見えてなかったらしく、出かける前と何ら変わりがなかったのでホッとする。
ギルドに入ると、朝、依頼の手続きをしてくれた受付の職員がこちらに気付いて視線を投げてから首を傾げた。
「あれ? お早いお帰りですね。まだ受注してから二時間くらいですよね? 何かありました?」
ああ、そういう・・・・・・。確かにまだお昼にはずいぶん早い時間だ。なのに帰ってきたからどうしたのかと思ったんだな。
そりゃあそうか、フォレストウルフを最低でも五頭は討伐する依頼だったもんな。
「何かっていうか、依頼達成の報告に戻ったんだけど・・・・・・」
うん、何かはあったよ。あったけどここで言うことじゃないしね。依頼とは関係ないし!
そう思っていることがナハトにも伝わったんだろうか。頭上でクスッと笑う声が微かに聞こえた。
僕は肘でナハトの脇腹を軽く突く。
「え、フォレストウルフですよね? 最低五頭からっていうアレですよね? もう五頭見つけたんですか!?」
うん? フォレストウルフってそんなに見つかりづらい魔獣だった?
僕はチラリとナハトを見上げる。するとニヤリと笑った。
「フォレストウルフはウルフ系の魔獣だが、他のウルフ系と違ってあまり群れを作らない孤高のウルフなんだ。数頭いればいいほうだ」
「え? さっきめちゃくちゃいたじゃん。じゃあアレって異常だったってこと?」
「え、めちゃくちゃいたって、どういうことです!?」
僕とナハトが受付前でそんな話をしていると、受付職員が慌てたように立ち上がった。
僕はギルドタグを差し出して言った。
「えーとね、一二七頭いたかな?」
「ああ、数えたらいたな」
「───は?」
タグをチェックすれば何をどれだけ討伐したか分かるんだよね? まあ、現物もちゃんとポーチに収納されているけど。
しかし周りの職員やちらほらいた冒険者達がそれを聞いて一斉にザワついた。
誰かが『ギルマスかサブギルマスに連絡を!』とか言って走って行くのが見えた。
「・・・・・・え、そんな大事? ていうか新米冒険者の僕の言うこと信じるんだ?」
「そりゃあ初日からアレだけやらかして、なおかつ俺の番いだからな。疑う方がおかしいだろう」
「そう?」
忙しなく動いている職員達をぽけっと眺めながら呑気に話す僕達の元にダオラがやって来た。
「おいナハトさん、ユラ君! エクシズの森にフォレストウルフの群れだって!?」
いつもの飄々としたオネエっぽい口調はなりを潜め、見た目通りの厳つい言葉になっている。
それを聞くとサブギルマスも威厳というかオーラを感じるなぁなんてどうでもいいことを思った。
「今朝ユラが受けたフォレストウルフの討伐依頼でエクシズの森に行ったんだが、浅いところだったのに出たぞ」
ナハトの説明に僕も補足を入れる。
「うん。最初に三頭、ナハトが斥候だって言ってた。それを倒したら奥からぞろぞろと現れてきたね」
それを聞いたダオラは僕を見て聞いた。
「それで? ユラが全部討伐したのか?」
「うん。僕の受けた依頼だし? で、数えてみたら一二七頭だった」
「それ以降は周りに気配がなかったから戻ってきたんだが」
僕も周囲の気配を読んだしナハトも念のために索敵してくれたけど、それ以降はフォレストウルフの気配はなかった。
「・・・・・・森の奥の方で何かあったのか? 念のため調査をしたほうがよさそうだな。誰かギルマスに報告をして───」
ブツブツと呟きながら職員達に指示を出すダオラに悪いと思いつつも僕は声をかけた。
「そんなに異常事態なんだ?」
「ああ、数頭現れることはたまにあるが、百頭を越えるような数はおかしい。下手をしたらスタンピードの予兆かもしれん」
「スタンピード・・・・・・」
「ユラ、ひとまずダオラに任せよう。お前は討伐完了の手続きが必要だろう?」
真剣な顔でそう告げるダオラ。僕は気になるもナハトの言葉に気持ちを切り替えた。
「そうだ。あの、依頼完了の手続きお願いします。あとフォレストウルフをどこに出せばいいですか? 量が量なので・・・・・・」
「あっ! そうでした。スミマセン。タグで討伐数と種類を確認しますので、そのあと向こうの解体作業場に提出をお願いします」
タグを確認したあと返して貰って、向こう、と指示された場所に向かう。
アッチで素材や魔物などを査定して報酬を決めて貰うそうだ。
「あそこで提出すると今回のように必要な素材を査定して金額を出したり買い取ってくれたりするんだ」
「なるほど」
僕の依頼のように毛皮が欲しいという場合はこっちで査定がいるんだね。
「そこでタグに査定額などを記録して貰い、もう一度さっきの受付にタグを出すと依頼完了かの判断と査定金額の支払いをしてくれる」
毛皮の状態によっては討伐数がクリアされてても完了扱いにはならないってことかな。
「討伐だけの依頼だったら受付だけですむ?」
「ああ、討伐数や種類が分かれば受付だけで終わりだ。別途、素材を売りたいときはあとで直接解体作業場に行けばいい」
「ふーん」
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