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60 初報酬の前に 1
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討伐後、もう少し森の探索でもしようと思っていたんだけど、僕のお腹が空腹を我慢できずにぐうぐうと鳴ってしまったので一旦森を出て軽く何か食べようということになった。
平原まで戻って適当な岩の上に座って、ポーチから昨日買い溜めした屋台料理を出す。
ポーチは時間停止付きだから出来たてほやほやの串焼きやスープ、パンなどを広げておやつタイムになった。
え? 食事タイムじゃないのかって?
だって時間的にはまだお昼前の時間なんだもの。
食べ物はガッツリ食事用の料理だけどね。
「いただきます!」
洗浄魔法で全身綺麗にしてから串焼きにかぶり付く。ナハトも僕に付き合い、スープを飲んでいた。
「美味っ! ラヴァのトコのお肉も美味しいけどコレも美味しいよね。何のお肉なんだろう?」
「ああ、それはワイルドボアという猪の魔物だな。思ったよりもクセがなくて柔らかいそうだ」
「へえ。前の世界では野生の動物って獣臭いって言われてて、臭み消しとか調理に手間をかけてたけど、こっちはそうでもないんだね」
ナハトの説明に美味いなら何でもいいや、なんて思いながらバクバクと食べる僕を微笑ましそうに見つめているナハト。
「・・・・・・何?」
ゴクンと飲み込んでから首を傾げてナハトにそう言うと微笑みながら応えた。
「いや、美味そうにたくさん食べるのを見てるだけだが?」
「それ、楽しい?」
「ユラのことなら何でも楽しいし、なんか幸せってこういうことなんだなって思うよ」
「───っ、そ、そうなんだ」
もの凄く優しげな顔でそう言われて僕はドキドキして思わず目を逸らしてしまう。
「も、もうご馳走様して帰ろうか! 初依頼で初報酬貰って、何か買い物してみたいし!」
「そうだな。初めての報酬でお祝いでもするか」
焦ってそんなことを言えば、ナハトは気にもせず同意してそう言った。
僕は食べかけの料理をバクバク食べ終えると残りはポーチに戻して帰り支度を始めた。
そこに来てふと、ナハトが言った。
「───ああ、せっかくだから魔法の試し撃ちしてみないか? ここなら拓けてるし、幸い周りに人気はないし」
「あ、そうだね、確かに。ボコってもあとで元に戻せばいいよね?」
まだ日は天辺まで昇りきっていないから時間に余裕はあるし、ということで僕達は街道から外れた平原の一画に移動した。
「ここら辺でいいかな。うーん、何の魔法にしよう?」
「火系は森が延焼でもしたらマズいから、水とか風とか?」
「そうだね。火事になったら消火が大変だもんね。じゃあ危なくなさそうな水を使ってみるか」
ナハトの提案に乗っかって、とりあえず水系を使ってみる。
向こうに大きな岩があるから、そこを的にして水のレーザーみたいに───。
「『ウォータージェット』」
細くて凄い勢いのある水鉄砲のようなものが発生して岩を貫いた・・・・・・と思う。
「・・・・・・ユラ?」
「・・・・・・あれ?」
二人して岩に近付いて確認すると、五ミリほどの穴が開いていた。
「お前のハンドガンと威力が変わらないようだが・・・・・・?」
「そう・・・・・・かもね?」
ジト目で見つめられたが、僕はそう言うしかない。まぁ、ハンドガンの弾も元はといえば同じ魔力だしね?
「気を取り直して、次は風魔法で───」
「───エアバレットとかはたぶん同じような威力だと思うぞ」
「『エアカッター』・・・・・・アレ?」
「・・・・・・」
ナハトが先廻りしてツッコんできたので、僕は咄嗟にかまいたちのような空気の刃をイメージして放った。
そうしたら、さっきの岩ごとスッパリサッパリその後ろの林を広範囲で奥の方まで伐採した。
・・・・・・うん。前世で言うところの大型バスが二台余裕で並ぶくらいの幅で、数百メートル先まで綺麗に開拓された。
そのせいで土埃や葉を巻き上げ倒れる木々の音が辺り一面に響き渡った。
「・・・・・・マズいな。コレ、北門にも聞こえただろうし、何なら土埃も見えてるだろう」
至極真面目な顔でそう言うナハトに僕も今更ながら焦る。
「・・・・・・怒られる?」
「どちらかというと心配されそうだが・・・・・・いや、それはともかく。ユラ、急いで修復しよう」
「あっ! そうだった。えーと地面を均して、切れちゃった木はどうしよう・・・・・・」
しょうがないから倒木はポーチにしまう。容量が多くて助かるな。
しかしさすがに森の原状回復は無理かと項垂れると、ナハトは不思議そうな顔をして言った。
「? ハイエルフなんだから、緑の魔法を使えばいいだろう?」
「・・・・・・緑の魔法?」
とはなんぞや?
僕は意味が分からず、キョトンとした。
平原まで戻って適当な岩の上に座って、ポーチから昨日買い溜めした屋台料理を出す。
ポーチは時間停止付きだから出来たてほやほやの串焼きやスープ、パンなどを広げておやつタイムになった。
え? 食事タイムじゃないのかって?
だって時間的にはまだお昼前の時間なんだもの。
食べ物はガッツリ食事用の料理だけどね。
「いただきます!」
洗浄魔法で全身綺麗にしてから串焼きにかぶり付く。ナハトも僕に付き合い、スープを飲んでいた。
「美味っ! ラヴァのトコのお肉も美味しいけどコレも美味しいよね。何のお肉なんだろう?」
「ああ、それはワイルドボアという猪の魔物だな。思ったよりもクセがなくて柔らかいそうだ」
「へえ。前の世界では野生の動物って獣臭いって言われてて、臭み消しとか調理に手間をかけてたけど、こっちはそうでもないんだね」
ナハトの説明に美味いなら何でもいいや、なんて思いながらバクバクと食べる僕を微笑ましそうに見つめているナハト。
「・・・・・・何?」
ゴクンと飲み込んでから首を傾げてナハトにそう言うと微笑みながら応えた。
「いや、美味そうにたくさん食べるのを見てるだけだが?」
「それ、楽しい?」
「ユラのことなら何でも楽しいし、なんか幸せってこういうことなんだなって思うよ」
「───っ、そ、そうなんだ」
もの凄く優しげな顔でそう言われて僕はドキドキして思わず目を逸らしてしまう。
「も、もうご馳走様して帰ろうか! 初依頼で初報酬貰って、何か買い物してみたいし!」
「そうだな。初めての報酬でお祝いでもするか」
焦ってそんなことを言えば、ナハトは気にもせず同意してそう言った。
僕は食べかけの料理をバクバク食べ終えると残りはポーチに戻して帰り支度を始めた。
そこに来てふと、ナハトが言った。
「───ああ、せっかくだから魔法の試し撃ちしてみないか? ここなら拓けてるし、幸い周りに人気はないし」
「あ、そうだね、確かに。ボコってもあとで元に戻せばいいよね?」
まだ日は天辺まで昇りきっていないから時間に余裕はあるし、ということで僕達は街道から外れた平原の一画に移動した。
「ここら辺でいいかな。うーん、何の魔法にしよう?」
「火系は森が延焼でもしたらマズいから、水とか風とか?」
「そうだね。火事になったら消火が大変だもんね。じゃあ危なくなさそうな水を使ってみるか」
ナハトの提案に乗っかって、とりあえず水系を使ってみる。
向こうに大きな岩があるから、そこを的にして水のレーザーみたいに───。
「『ウォータージェット』」
細くて凄い勢いのある水鉄砲のようなものが発生して岩を貫いた・・・・・・と思う。
「・・・・・・ユラ?」
「・・・・・・あれ?」
二人して岩に近付いて確認すると、五ミリほどの穴が開いていた。
「お前のハンドガンと威力が変わらないようだが・・・・・・?」
「そう・・・・・・かもね?」
ジト目で見つめられたが、僕はそう言うしかない。まぁ、ハンドガンの弾も元はといえば同じ魔力だしね?
「気を取り直して、次は風魔法で───」
「───エアバレットとかはたぶん同じような威力だと思うぞ」
「『エアカッター』・・・・・・アレ?」
「・・・・・・」
ナハトが先廻りしてツッコんできたので、僕は咄嗟にかまいたちのような空気の刃をイメージして放った。
そうしたら、さっきの岩ごとスッパリサッパリその後ろの林を広範囲で奥の方まで伐採した。
・・・・・・うん。前世で言うところの大型バスが二台余裕で並ぶくらいの幅で、数百メートル先まで綺麗に開拓された。
そのせいで土埃や葉を巻き上げ倒れる木々の音が辺り一面に響き渡った。
「・・・・・・マズいな。コレ、北門にも聞こえただろうし、何なら土埃も見えてるだろう」
至極真面目な顔でそう言うナハトに僕も今更ながら焦る。
「・・・・・・怒られる?」
「どちらかというと心配されそうだが・・・・・・いや、それはともかく。ユラ、急いで修復しよう」
「あっ! そうだった。えーと地面を均して、切れちゃった木はどうしよう・・・・・・」
しょうがないから倒木はポーチにしまう。容量が多くて助かるな。
しかしさすがに森の原状回復は無理かと項垂れると、ナハトは不思議そうな顔をして言った。
「? ハイエルフなんだから、緑の魔法を使えばいいだろう?」
「・・・・・・緑の魔法?」
とはなんぞや?
僕は意味が分からず、キョトンとした。
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