(仮)攫われて異世界

エウラ

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51 ラヴァの店に突撃隣の昼ご飯 2

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僕が黙々とパンにかぶりついていると、料理をしながらラヴァがナハトに話しかけてきた。

「ソレにしたって何でこんなに飢えてるんだ? 今朝顔を見たときは魔力満タンだったろう?」
「あー、ソレはさっきまで冒険者ギルドの地下鍛錬場でバンバン使ってたからだな」

ナハトは僕の口端に付いたソースを親指の腹で拭って、その指をペロリと舐めて言った。
・・・・・・その仕草が色っぽいな、なんて見ていたらラヴァが驚いた顔をした。

「───はぁ!? ・・・・・・いや、俺が見ても相当な魔力量だったと思うけど、何をどうしたらそんなに腹減るまで使えるんだよ?」

この数時間で普通に生活してたら毛ほども魔力なんて使わないだろう、とぼやいているラヴァ。
そこにナハトが世間話のように淡々と話す。

「さすがにユラの魔力量はお前でも分かるよな。まぁ、破壊した鍛錬場の一部を魔法で直して、なおかつ鍛錬場全体に魔法・物理攻撃耐性の防御結界魔法も張ったしな」
「は?」

ナハトがそう言ったらラヴァは引き攣った顔になった。

「あと、ハンドガンの試し撃ちとかナハトとの死合いで魔法攻撃もガンガンやったしね」

僕も食べ物を飲み込んでから付け足してあげたらラヴァは更にドン引きした。
失礼な。

って何!? お前ら何しちゃってんの!? ソレ絶対エアリアル達が胃が痛くなる案件!」

ラヴァの叫びにナハトがちょっと考え込む。どうやらさっきまでの記憶を浚っているようだ。

「・・・・・・ああ、そういえば銃の試し撃ちのときから胃を押さえてたような・・・・・・。だから二人とも顔色悪そうだったのか」
「いや分かってんならなんて止めたげて!」

そう言うラヴァを安心させてあげようと僕はにっこり笑って言った。

「大丈夫。エアリアル達はって言い張ってたから! 死合いじゃないから!」
「そういうことじゃないから! やってることはどうせ一緒だろうが! もうヤだ、お前ら二人ともどこかで常識を教わってこい!」

即座にそうラヴァに返されてちょっとむくれる。
でもなあ、コッチの世界の常識って誰に教わればいいんだ?

「じゃあ、誰か教えてくれる人紹介してくれない?」

僕がそう言うと、今まで騒いでいたラヴァは虚を突かれたようにキョトンとした。

「え? ぁ・・・・・・うーん、そういうのを紹介とか、全く心当たりないわ・・・・・・エアリアルは?」

そう言われて見れば確かに適任だとは思ったけど・・・・・・。

「うーん、でもギルマスって役職って忙しそうだしなあ。ナハト、誰かいない?」
「・・・・・・俺じゃダメなのか」

若干不満そうにそう言うナハトにラヴァが速攻でツッコむ。

「お前はユラとは違うベクトルで非常識だから却下!」
「・・・・・・ッチ」

めちゃくちゃガラ悪く舌打ちしたよ、この人。
でも、じゃあどうしよっか?

「別に今すぐじゃなくてもいいから、いろんなヤツに聞いてみろよ。冒険者の中にも常識人はいるぜ。・・・・・・少しは」
「あーうん、やっぱり冒険者って非常識な人が多いんだね?」

何となく文字も書けないような学があまりなくて荒くれ者が多いイメージだったけど、割とあってるらしい。

「そりゃあ、好きでやってるヤツも多いが、大半は生活に困って冒険者になるのが多いし。そうなると勉強よりも飯のタネになる方へ自然と偏るってモンだ」
「確かにねえ。世知辛い世の中だよなー」
「・・・・・・お前、達観した老人みたいなこと言うな。見た目詐欺か?」
「ええ? ピチピチのハタチですけどぉ?」

失礼な。うん? ピチピチって古いか?

カウンターに並べてくれたステーキとコーンスープを目の前に気もそぞろで、適当な感じで言う僕に苦笑する二人。

また食べやすいようにサイコロ状にカットされた山盛りの肉に目をキラキラさせている僕を見てご満悦のラヴァが僕の頭をポンと撫ぜた。

「まぁ、俺が店にいる間は飯を食わしてやるから遠慮しないで来い。お代はナハトからたんまり貰うから心配すんな」

そう優しい目で言うラヴァにクスッと笑う。

「───ありがとう! 頂きます!」
「ま、仕方ないな。ラヴァ、頼んだ」

ナハトが真顔でそう言うとラヴァも真面目な顔になってナハトに言った。

「一応念押しするが、出来合いの料理でもいいからユラにちゃんと食わせろよ! ウチは基本的に飲み屋であって食堂じゃねえんだよ!」
「じゃあ前払いでこれくらい・・・・・・」
「おい、聞いてたか!?」

ラヴァの声を無視して金貨をジャラッとカウンターテーブルに無造作に置くナハト。
ラヴァは眉に皺を寄せてツッコむ。

「このオジサンにいっぱい食べさせて貰えよ」
「うん」
「イヤ、オジサン言うな! オジサンだけど!」

どこぞの漫才かな? というようなボケとツッコミをしながら昨日と変わらない美味しい料理に舌鼓を打つ僕だった。





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