54 / 80
51 ラヴァの店に突撃隣の昼ご飯 2
しおりを挟む
僕が黙々とパンにかぶりついていると、料理をしながらラヴァがナハトに話しかけてきた。
「ソレにしたって何でこんなに飢えてるんだ? 今朝顔を見たときは魔力満タンだったろう?」
「あー、ソレはさっきまで冒険者ギルドの地下鍛錬場でバンバン使ってたからだな」
ナハトは僕の口端に付いたソースを親指の腹で拭って、その指をペロリと舐めて言った。
・・・・・・その仕草が色っぽいな、なんて見ていたらラヴァが驚いた顔をした。
「───はぁ!? ・・・・・・いや、俺が見ても相当な魔力量だったと思うけど、何をどうしたらそんなに腹減るまで使えるんだよ?」
この数時間で普通に生活してたら毛ほども魔力なんて使わないだろう、とぼやいているラヴァ。
そこにナハトが世間話のように淡々と話す。
「さすがにユラの魔力量はお前でも分かるよな。まぁ、破壊した鍛錬場の一部を魔法で直して、なおかつ鍛錬場全体に魔法・物理攻撃耐性の防御結界魔法も張ったしな」
「は?」
ナハトがそう言ったらラヴァは引き攣った顔になった。
「あと、ハンドガンの試し撃ちとかナハトとの死合いで魔法攻撃もガンガンやったしね」
僕も食べ物を飲み込んでから付け足してあげたらラヴァは更にドン引きした。
失礼な。
「死合いって何!? お前ら何しちゃってんの!? ソレ絶対エアリアル達が胃が痛くなる案件!」
ラヴァの叫びにナハトがちょっと考え込む。どうやらさっきまでの記憶を浚っているようだ。
「・・・・・・ああ、そういえば銃の試し撃ちのときから胃を押さえてたような・・・・・・。だから二人とも顔色悪そうだったのか」
「いや分かってんなら死合いなんて止めたげて!」
そう言うラヴァを安心させてあげようと僕はにっこり笑って言った。
「大丈夫。エアリアル達は模擬戦って言い張ってたから! 死合いじゃないから!」
「そういうことじゃないから! やってることはどうせ一緒だろうが! もうヤだ、お前ら二人ともどこかで常識を教わってこい!」
即座にそうラヴァに返されてちょっとむくれる。
でもなあ、コッチの世界の常識って誰に教わればいいんだ?
「じゃあ、誰か教えてくれる人紹介してくれない?」
僕がそう言うと、今まで騒いでいたラヴァは虚を突かれたようにキョトンとした。
「え? ぁ・・・・・・うーん、そういうのを紹介とか、全く心当たりないわ・・・・・・エアリアルは?」
そう言われて見れば確かに適任だとは思ったけど・・・・・・。
「うーん、でもギルマスって役職って忙しそうだしなあ。ナハト、誰かいない?」
「・・・・・・俺じゃダメなのか」
若干不満そうにそう言うナハトにラヴァが速攻でツッコむ。
「お前はユラとは違うベクトルで非常識だから却下!」
「・・・・・・ッチ」
めちゃくちゃガラ悪く舌打ちしたよ、この人。
でも、じゃあどうしよっか?
「別に今すぐじゃなくてもいいから、いろんなヤツに聞いてみろよ。冒険者の中にも常識人はいるぜ。・・・・・・少しは」
「あーうん、やっぱり冒険者って非常識な人が多いんだね?」
何となく文字も書けないような学があまりなくて荒くれ者が多いイメージだったけど、割とあってるらしい。
「そりゃあ、好きでやってるヤツも多いが、大半は生活に困って冒険者になるのが多いし。そうなると勉強よりも飯のタネになる方へ自然と偏るってモンだ」
「確かにねえ。世知辛い世の中だよなー」
「・・・・・・お前、達観した老人みたいなこと言うな。見た目詐欺か?」
「ええ? ピチピチのハタチですけどぉ?」
失礼な。うん? ピチピチって古いか?
カウンターに並べてくれたステーキとコーンスープを目の前に気もそぞろで、適当な感じで言う僕に苦笑する二人。
また食べやすいようにサイコロ状にカットされた山盛りの肉に目をキラキラさせている僕を見てご満悦のラヴァが僕の頭をポンと撫ぜた。
「まぁ、俺が店にいる間は飯を食わしてやるから遠慮しないで来い。お代はナハトからたんまり貰うから心配すんな」
そう優しい目で言うラヴァにクスッと笑う。
「───ありがとう! 頂きます!」
「ま、仕方ないな。ラヴァ、頼んだ」
ナハトが真顔でそう言うとラヴァも真面目な顔になってナハトに言った。
「一応念押しするが、出来合いの料理でもいいからユラにちゃんと食わせろよ! ウチは基本的に飲み屋であって食堂じゃねえんだよ!」
「じゃあ前払いでこれくらい・・・・・・」
「おい、聞いてたか!?」
ラヴァの声を無視して金貨をジャラッとカウンターテーブルに無造作に置くナハト。
ラヴァは眉に皺を寄せてツッコむ。
「このオジサンにいっぱい食べさせて貰えよ」
「うん」
「イヤ、オジサン言うな! オジサンだけど!」
どこぞの漫才かな? というようなボケとツッコミをしながら昨日と変わらない美味しい料理に舌鼓を打つ僕だった。
「ソレにしたって何でこんなに飢えてるんだ? 今朝顔を見たときは魔力満タンだったろう?」
「あー、ソレはさっきまで冒険者ギルドの地下鍛錬場でバンバン使ってたからだな」
ナハトは僕の口端に付いたソースを親指の腹で拭って、その指をペロリと舐めて言った。
・・・・・・その仕草が色っぽいな、なんて見ていたらラヴァが驚いた顔をした。
「───はぁ!? ・・・・・・いや、俺が見ても相当な魔力量だったと思うけど、何をどうしたらそんなに腹減るまで使えるんだよ?」
この数時間で普通に生活してたら毛ほども魔力なんて使わないだろう、とぼやいているラヴァ。
そこにナハトが世間話のように淡々と話す。
「さすがにユラの魔力量はお前でも分かるよな。まぁ、破壊した鍛錬場の一部を魔法で直して、なおかつ鍛錬場全体に魔法・物理攻撃耐性の防御結界魔法も張ったしな」
「は?」
ナハトがそう言ったらラヴァは引き攣った顔になった。
「あと、ハンドガンの試し撃ちとかナハトとの死合いで魔法攻撃もガンガンやったしね」
僕も食べ物を飲み込んでから付け足してあげたらラヴァは更にドン引きした。
失礼な。
「死合いって何!? お前ら何しちゃってんの!? ソレ絶対エアリアル達が胃が痛くなる案件!」
ラヴァの叫びにナハトがちょっと考え込む。どうやらさっきまでの記憶を浚っているようだ。
「・・・・・・ああ、そういえば銃の試し撃ちのときから胃を押さえてたような・・・・・・。だから二人とも顔色悪そうだったのか」
「いや分かってんなら死合いなんて止めたげて!」
そう言うラヴァを安心させてあげようと僕はにっこり笑って言った。
「大丈夫。エアリアル達は模擬戦って言い張ってたから! 死合いじゃないから!」
「そういうことじゃないから! やってることはどうせ一緒だろうが! もうヤだ、お前ら二人ともどこかで常識を教わってこい!」
即座にそうラヴァに返されてちょっとむくれる。
でもなあ、コッチの世界の常識って誰に教わればいいんだ?
「じゃあ、誰か教えてくれる人紹介してくれない?」
僕がそう言うと、今まで騒いでいたラヴァは虚を突かれたようにキョトンとした。
「え? ぁ・・・・・・うーん、そういうのを紹介とか、全く心当たりないわ・・・・・・エアリアルは?」
そう言われて見れば確かに適任だとは思ったけど・・・・・・。
「うーん、でもギルマスって役職って忙しそうだしなあ。ナハト、誰かいない?」
「・・・・・・俺じゃダメなのか」
若干不満そうにそう言うナハトにラヴァが速攻でツッコむ。
「お前はユラとは違うベクトルで非常識だから却下!」
「・・・・・・ッチ」
めちゃくちゃガラ悪く舌打ちしたよ、この人。
でも、じゃあどうしよっか?
「別に今すぐじゃなくてもいいから、いろんなヤツに聞いてみろよ。冒険者の中にも常識人はいるぜ。・・・・・・少しは」
「あーうん、やっぱり冒険者って非常識な人が多いんだね?」
何となく文字も書けないような学があまりなくて荒くれ者が多いイメージだったけど、割とあってるらしい。
「そりゃあ、好きでやってるヤツも多いが、大半は生活に困って冒険者になるのが多いし。そうなると勉強よりも飯のタネになる方へ自然と偏るってモンだ」
「確かにねえ。世知辛い世の中だよなー」
「・・・・・・お前、達観した老人みたいなこと言うな。見た目詐欺か?」
「ええ? ピチピチのハタチですけどぉ?」
失礼な。うん? ピチピチって古いか?
カウンターに並べてくれたステーキとコーンスープを目の前に気もそぞろで、適当な感じで言う僕に苦笑する二人。
また食べやすいようにサイコロ状にカットされた山盛りの肉に目をキラキラさせている僕を見てご満悦のラヴァが僕の頭をポンと撫ぜた。
「まぁ、俺が店にいる間は飯を食わしてやるから遠慮しないで来い。お代はナハトからたんまり貰うから心配すんな」
そう優しい目で言うラヴァにクスッと笑う。
「───ありがとう! 頂きます!」
「ま、仕方ないな。ラヴァ、頼んだ」
ナハトが真顔でそう言うとラヴァも真面目な顔になってナハトに言った。
「一応念押しするが、出来合いの料理でもいいからユラにちゃんと食わせろよ! ウチは基本的に飲み屋であって食堂じゃねえんだよ!」
「じゃあ前払いでこれくらい・・・・・・」
「おい、聞いてたか!?」
ラヴァの声を無視して金貨をジャラッとカウンターテーブルに無造作に置くナハト。
ラヴァは眉に皺を寄せてツッコむ。
「このオジサンにいっぱい食べさせて貰えよ」
「うん」
「イヤ、オジサン言うな! オジサンだけど!」
どこぞの漫才かな? というようなボケとツッコミをしながら昨日と変わらない美味しい料理に舌鼓を打つ僕だった。
686
お気に入りに追加
1,133
あなたにおすすめの小説


前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
異世界転生した俺の婚約相手が、王太子殿下(♂)なんて嘘だろう?! 〜全力で婚約破棄を目指した結果。
みこと。
BL
気づいたら、知らないイケメンから心配されていた──。
事故から目覚めた俺は、なんと侯爵家の次男に異世界転生していた。
婚約者がいると聞き喜んだら、相手は王太子殿下だという。
いくら同性婚ありの国とはいえ、なんでどうしてそうなってんの? このままじゃ俺が嫁入りすることに?
速やかな婚約解消を目指し、可愛い女の子を求めたのに、ご令嬢から貰ったクッキーは仕込みありで、とんでも案件を引き起こす!
てんやわんやな未来や、いかに!?
明るく仕上げた短編です。気軽に楽しんで貰えたら嬉しいです♪
※同タイトルの簡易版を「小説家になろう」様でも掲載しています。

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話
天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。
レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。
ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。
リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?

光と闇の子
時雨
BL
テオは生まれる前から愛されていた。精霊族はめったに自分で身籠らない、魔族は自分の子供には名前を付けない。しかしテオは違った。精霊族の女王である母が自らの体で産んだ子供、魔族の父が知恵を絞ってつけた名前。だがある日、「テオ」は消えた。
レイは生まれた瞬間から嫌われていた。最初は魔族の象徴である黒髪だからと精霊族に忌み嫌われ、森の中に捨てられた。そしてそれは、彼が魔界に行っても変わらなかった。半魔族だから、純血種ではないからと、蔑まれ続けた。だから、彼は目立たずに強くなっていった。
人々は知らない、「テオ」が「レイ」であると。自ら親との縁の糸を絶ったテオは、誰も信じない「レイ」になった。
だが、それでも、レイはただ一人を信じ続けた。信じてみようと思ったのだ。
BL展開は多分だいぶ後になると思います。主人公はレイ(テオ)、攻めは従者のカイルです。
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~
沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。
巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。
予想だにしない事態が起きてしまう
巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。
”召喚された美青年リーマン”
”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”
じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”?
名前のない脇役にも居場所はあるのか。
捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。
「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」
ーーーーーー・ーーーーーー
小説家になろう!でも更新中!
早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる