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50 ラヴァの店に突撃隣の昼ご飯 1
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「くぅ」
「・・・・・・ン?」
『アレ? 何?』
「・・・・・・僕の空腹を訴える音だね」
精霊王達にお説教をしていると、僕の腹の虫が泣いた。いや鳴いた。
精霊王達も何だと首を傾げた。
そういえば僕、さっきまで魔力バンバン消費してたね。聞いたところによると、この世界って魔力減るとお腹も減るらしいし。
「そういえばさっきから魔法をガンガン使ってたな」
ナハトも気付いてそう言う。そこにエアリアル達も続けた。
「確かにアレだけ消費すればお腹空きますよね。今日はもう確認作業いらないんじゃないですか?」
「ていうか今日はじゃなくてもう確認作業いらないでしょ?」
「魔法は今度、更地になってもいい場所でやろうな」
いや、ソレもどうなんだというツッコミは僕の心の中だけで、ナハト達は納得顔なんだけど。
「・・・・・・ふぁーい。ねぇねぇ、じゃあラヴァの店のステーキ食べたい」
アレ、本当に美味しかったんだよね。ラヴァには悪いけど突撃しちゃうよ。
「ああ、昨日のアレか。気に入ったのか?」
「うん。あ、でも昼間は迷惑だよね? ラヴァのお店って夜の営業だし。僕は別に何でもいいから他のお店───」
「いや、たぶんユラに会いたがりそうだから気にせず行ってきなよぉ」
そう続けようとしたらダオラが被せるように言った。そこにエアリアルも続ける。
「そうですね。ラヴァは世話焼きだから口では文句を言っても怒ったりはしないですよ」
「ソレに美味しそうに食べてくれたら絶対に喜ぶから、気にしないでいいよー」
「んー、なら行こうかな? ナハトもいい?」
「俺はいつも寄ってるから気にしない」
「ソレはソレでラヴァが可哀想な気がする」
そうやっていつもお邪魔するからラヴァも仕方なく付き合ってるんだと思うよ? もの凄くいい人っぽいし。
ナハトは少し自粛してあげた方がいいと思う。
「体力バカの鬼人だから問題ない」
「・・・・・・せめて僕だけは労ってあげよう」
酷い言い草のナハトに気の置けない友人というのが分かって微笑ましくなるが、さすがにラヴァが憐れだ。
「自分くらいは昼間は常識の範囲で通ってあげよう」
「いや、それのどこが常識の範囲なんだ」
「普通の常識では営業時間外で閉まってる店に突撃はしないでしょ」
どうやらダオラとエアリアルにそうツッコまれるくらい斜め上の思考だったらしく苦笑された。
ええ? 回数減らすからいいでしょ? だってめちゃくちゃ美味しかったんだもん。
ブツブツ言いながら僕らは地下鍛錬場をあとにした。
ちなみに精霊王達は、説教のあと僕の空腹を訴えるお腹の音に生温い微笑みを浮かべながら還って行った。
どこかは知らないが、聖域にでも戻ったんだろう。
地下鍛錬場に残された冒険者達はしばらく放心状態で固まっていたらしいが、お腹が空いてそれどころじゃなかった僕はそんなギャラリーのことなんてすっかり頭から消えていたのだった。
「ラヴァー! ご飯ちょうだーい!」
「───お前らなぁ・・・・・・はぁ、言っても聞かないんだろうな」
昨日と同じく営業時間外のプレートが下がったドアを開けて、開口一番ご飯を所望する僕に呆れるラヴァ。
「ユラが空腹だ。昨日のステーキが美味かったらしい。作れるか?」
ナハトの言葉に眉を上げてちょっと嬉しそうなラヴァが奥のキッチンに移動しながら聞いてきた。
「そりゃ、作れるけど。何だ、急ぎか?」
「うーん、とりあえず何かお腹には入れたい」
そう言って、カウンター席に座るなり突っ伏す僕を気遣って、ササッとロールパンにウインナーとサラダを挟んでピリ辛のトマトソースみたいなのをかけて皿に乗せて出してくれた。
「ほら、ひとまずコレ食ってな。飲み物は───」
「俺がやる。だから急いでステーキ焼いてくれ。ユラ、紅茶飲むか?」
「うん。あ、アイスティーがいいな」
「分かった。ラヴァ、冷蔵庫勝手に開けるぞ」
「はいはい。扉側の棚に冷えた紅茶が入ってるから、好きにしろ」
「了解」
ポンポンと会話が飛んで、あっという間にアイスティーが出て来た。
僕は身体を起こして冷えたグラスを両手で持ってコクコクと飲んだ。
「───っふぁあ。美味しい!」
そう言った僕を見てラヴァもナハトも笑っていた。
「すぐに腹一杯食べさせてやるからな!」
「うん!」
「・・・・・・欠食児童」
「お前は食べなくても金があるんだから、屋台とかで出来合の料理とか色々と買ってきて食わせてやれよ?」
「・・・・・・スマン」
ラヴァの言葉に僕が満面の笑みで返事をすると微妙な顔でそう呟くナハト。
ソレにラヴァがツッコんで若干凹むナハトに、僕は可愛いと思いながらロールパンにかぶりつくのだった。
「・・・・・・ン?」
『アレ? 何?』
「・・・・・・僕の空腹を訴える音だね」
精霊王達にお説教をしていると、僕の腹の虫が泣いた。いや鳴いた。
精霊王達も何だと首を傾げた。
そういえば僕、さっきまで魔力バンバン消費してたね。聞いたところによると、この世界って魔力減るとお腹も減るらしいし。
「そういえばさっきから魔法をガンガン使ってたな」
ナハトも気付いてそう言う。そこにエアリアル達も続けた。
「確かにアレだけ消費すればお腹空きますよね。今日はもう確認作業いらないんじゃないですか?」
「ていうか今日はじゃなくてもう確認作業いらないでしょ?」
「魔法は今度、更地になってもいい場所でやろうな」
いや、ソレもどうなんだというツッコミは僕の心の中だけで、ナハト達は納得顔なんだけど。
「・・・・・・ふぁーい。ねぇねぇ、じゃあラヴァの店のステーキ食べたい」
アレ、本当に美味しかったんだよね。ラヴァには悪いけど突撃しちゃうよ。
「ああ、昨日のアレか。気に入ったのか?」
「うん。あ、でも昼間は迷惑だよね? ラヴァのお店って夜の営業だし。僕は別に何でもいいから他のお店───」
「いや、たぶんユラに会いたがりそうだから気にせず行ってきなよぉ」
そう続けようとしたらダオラが被せるように言った。そこにエアリアルも続ける。
「そうですね。ラヴァは世話焼きだから口では文句を言っても怒ったりはしないですよ」
「ソレに美味しそうに食べてくれたら絶対に喜ぶから、気にしないでいいよー」
「んー、なら行こうかな? ナハトもいい?」
「俺はいつも寄ってるから気にしない」
「ソレはソレでラヴァが可哀想な気がする」
そうやっていつもお邪魔するからラヴァも仕方なく付き合ってるんだと思うよ? もの凄くいい人っぽいし。
ナハトは少し自粛してあげた方がいいと思う。
「体力バカの鬼人だから問題ない」
「・・・・・・せめて僕だけは労ってあげよう」
酷い言い草のナハトに気の置けない友人というのが分かって微笑ましくなるが、さすがにラヴァが憐れだ。
「自分くらいは昼間は常識の範囲で通ってあげよう」
「いや、それのどこが常識の範囲なんだ」
「普通の常識では営業時間外で閉まってる店に突撃はしないでしょ」
どうやらダオラとエアリアルにそうツッコまれるくらい斜め上の思考だったらしく苦笑された。
ええ? 回数減らすからいいでしょ? だってめちゃくちゃ美味しかったんだもん。
ブツブツ言いながら僕らは地下鍛錬場をあとにした。
ちなみに精霊王達は、説教のあと僕の空腹を訴えるお腹の音に生温い微笑みを浮かべながら還って行った。
どこかは知らないが、聖域にでも戻ったんだろう。
地下鍛錬場に残された冒険者達はしばらく放心状態で固まっていたらしいが、お腹が空いてそれどころじゃなかった僕はそんなギャラリーのことなんてすっかり頭から消えていたのだった。
「ラヴァー! ご飯ちょうだーい!」
「───お前らなぁ・・・・・・はぁ、言っても聞かないんだろうな」
昨日と同じく営業時間外のプレートが下がったドアを開けて、開口一番ご飯を所望する僕に呆れるラヴァ。
「ユラが空腹だ。昨日のステーキが美味かったらしい。作れるか?」
ナハトの言葉に眉を上げてちょっと嬉しそうなラヴァが奥のキッチンに移動しながら聞いてきた。
「そりゃ、作れるけど。何だ、急ぎか?」
「うーん、とりあえず何かお腹には入れたい」
そう言って、カウンター席に座るなり突っ伏す僕を気遣って、ササッとロールパンにウインナーとサラダを挟んでピリ辛のトマトソースみたいなのをかけて皿に乗せて出してくれた。
「ほら、ひとまずコレ食ってな。飲み物は───」
「俺がやる。だから急いでステーキ焼いてくれ。ユラ、紅茶飲むか?」
「うん。あ、アイスティーがいいな」
「分かった。ラヴァ、冷蔵庫勝手に開けるぞ」
「はいはい。扉側の棚に冷えた紅茶が入ってるから、好きにしろ」
「了解」
ポンポンと会話が飛んで、あっという間にアイスティーが出て来た。
僕は身体を起こして冷えたグラスを両手で持ってコクコクと飲んだ。
「───っふぁあ。美味しい!」
そう言った僕を見てラヴァもナハトも笑っていた。
「すぐに腹一杯食べさせてやるからな!」
「うん!」
「・・・・・・欠食児童」
「お前は食べなくても金があるんだから、屋台とかで出来合の料理とか色々と買ってきて食わせてやれよ?」
「・・・・・・スマン」
ラヴァの言葉に僕が満面の笑みで返事をすると微妙な顔でそう呟くナハト。
ソレにラヴァがツッコんで若干凹むナハトに、僕は可愛いと思いながらロールパンにかぶりつくのだった。
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