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45 そして思い知るチート 1
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というわけで、早速ハンドガンを一丁ポーチから取り出す。
とりあえず試し撃ちなので、今はダブルショルダーホルスターは身に着けない。
このあとに今までのようにポーチから出さないスタイルで確認するつもり。
「それが昨日使ってた銃か」
僕がくるくる回して不備がないかとか持ち手の感触とか確認していると、興味津々のナハトに声をかけられた。
「うん。これと同じのがもう一丁あるんだけど、僕専用にカスタマイズしてあるから他の人は使えないよ。もちろんナハトもだけど」
そう言うとナハトは頷いて言った。
「当然だな。自分の命を預ける武器を他人に使わせるなんてそもそもしない。それに俺の武器は銃じゃないから使うことはないし」
「あー、そういえばナハトはどんな武器なのか聞いても大丈夫? 普通は手の内を明かさないと思うけど・・・・・・」
僕は昨日大っぴらに使ったからナイフと銃はすでに隠す気ないけどね。
「構わない。隠すほどじゃないし知られても俺に勝てるヤツなんて早々いないし」
「確かに! Sランク冒険者だもんね」
ナハトがドヤ顔で言ったので、また笑ってしまった。
この人、俺に褒めて欲しすぎ。可愛いかよ。
「俺は腰に佩いた長剣と魔法、あとはあまりやらんが、自分の血を使った攻撃が出来る」
「・・・・・・血?」
何かヤバそうな技? っぽいのが聞こえたんだけど?
「ああ、自分の血をこう、血管を傷付けて流れ出た血を自在に操る能力だ。鞭にしたりナイフにも出来るぞ」
「・・・・・・うわあ・・・・・・でも使うときに血が流れてる状態になるってことでしょ? 想像しただけでも痛そう・・・・・・」
攻撃を食らっても自分で切っても結局痛いんじゃん。
それに───。
「そのとき使った血はどうなるの? 消えちゃうの? それとも身体の中に戻せるの?」
僕が眉をひそめて聞くと、ナハトはなんでもない様に言った。
「一度出た血はさすがに戻らないな。大量に出血すれば貧血で倒れることもある」
実際、過去に一度倒れたとか言ってるけど、それってナハトじゃなかったら死んでる案件じゃないの!?
「貧血で瀕死の吸血鬼・・・・・・そんなナハトは見たくない・・・・・・」
思わず想像してヘンな顔になった僕を見て苦笑するナハト。
「あのときは確かベヒーモス討伐依頼で他のSランク冒険者達と共闘して、さすがに手強かったんだよな。デカかったし」
「・・・・・・ベヒーモス・・・・・・」
───って、小説なんかの知識で名前くらいしか知らないけど、強そうな魔獣だって何となく分かる。でもSランク冒険者達と一緒に戦って死にかけてるって、その魔獣、相当ヤバかったんだな・・・・・・。
「生きててよかったね、ナハト」
思わずそう言えば、ナハトにぎゅっと抱きしめられた。
「───俺にそんなことを言うヤツなんかほとんどいないよ。・・・・・・ありがとう」
「どういたしまして?」
・・・・・・まあ、ナハトの知り合いはたぶんナハトが不死身だって知ってるだろうし、知らなくてもSランクなんてめっちゃ強くて不死身くらいの認識がされてるかもしれないし。
だから心配されないのが当たり前になってるんだろうな。
僕はナハトと根本的なところが違うけど、生きててよかったとか心配なんてされたことないから、気持ちは何となく分かるよ。
───だから。
「僕でよければいつでも何度でも言ってあげるよ。生きて、僕と出逢ってくれてありがとう」
「───っユラも・・・・・・ユラも生きていてくれてよかった。ありがとう、俺の元に来てくれて」
そう言ったナハトは少し声が震えていて、僕もナハトのその言葉に不覚にも泣きそうになってぎゅっと抱きしめ返した。
───生きてる。
ナハトと分け合える熱が嬉しくて、僕達はしばらく抱き合っていたのだった───。
「・・・・・・どうする?」
「・・・・・・もの凄く近付きにくいよねぇ」
「何をどうしたのか分からないが完全に二人の世界だな」
「面白そうだからこのまま傍観してようか?」
遠くで呟くエアリアルとダオラの声が耳に入るまで、たぶん数分くらいだったと思うけど。
───うーわー! そうだった! ここ、鍛錬場だったよ! 他にも冒険者達もいたじゃんか!
僕は我に返って恥ずかしくなり、ナハトの胸に顔を埋めてぐりぐり。ナハトは僕のつむじ辺りをちゅっちゅと口付けている。
「───あーあ、ナハトさん、デレッとした顔をしちゃって・・・・・・」
「ユラ君は真っ赤な顔で死にそうですね。いい加減助けましょうか」
「お前ら、寄るな見るな近付くな!」
そう言いながら近付いてきたエアリアル達をそう言って威嚇するナハトが警戒心丸出しの猫っぽくて、僕は思わず吹き出した。
「───っふ、ははっ、ナハト可愛いな」
「───は?」
「へ?」
「・・・・・・この人のドコに可愛げが?」
僕の言葉にナハトが固まり、ダオラはキョトンとし、エアリアルは眉をひそめてそう言った。
「ナハトの可愛さは僕だけが知っていればいいよ。ね?」
「・・・・・・まあ、そうだな?」
思いっきり疑問形のナハトに更に笑う僕を見て、皆はまあいいかとなったらしい。
「ところで試し撃ち? 確認はこれからです?」
「うん。ちょうど始めるところ」
僕がそう言ったら二人ともぱあっと瞳を煌めかせた。
「間に合った! じゃあまた私達も見学していい?」
「もちろん」
「まあ、その方がいいな」
「・・・・・・何やら含みのある言い方だね?」
「アレを見れば分かる」
ナハトの言い様にエアリアルがそう返せば、ナハトが顎で向こうを指した。
その先はさっき僕が直した地面と壁。
すでにドコが凹んでたのかも分からないほど綺麗に直ったところだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・なるほど。言いたいことは分かった」
ダオラは無言で笑顔のまま固まり、エアリアルは渋い表情で絞り出すように呟いた。
ああ、うん。
やっぱりちょっとおかしいんだね?
「・・・・・・試し撃ちやってもいい?」
ちょっと気まずくなった僕は、空気を変えようとそう言って笑った。
とりあえず試し撃ちなので、今はダブルショルダーホルスターは身に着けない。
このあとに今までのようにポーチから出さないスタイルで確認するつもり。
「それが昨日使ってた銃か」
僕がくるくる回して不備がないかとか持ち手の感触とか確認していると、興味津々のナハトに声をかけられた。
「うん。これと同じのがもう一丁あるんだけど、僕専用にカスタマイズしてあるから他の人は使えないよ。もちろんナハトもだけど」
そう言うとナハトは頷いて言った。
「当然だな。自分の命を預ける武器を他人に使わせるなんてそもそもしない。それに俺の武器は銃じゃないから使うことはないし」
「あー、そういえばナハトはどんな武器なのか聞いても大丈夫? 普通は手の内を明かさないと思うけど・・・・・・」
僕は昨日大っぴらに使ったからナイフと銃はすでに隠す気ないけどね。
「構わない。隠すほどじゃないし知られても俺に勝てるヤツなんて早々いないし」
「確かに! Sランク冒険者だもんね」
ナハトがドヤ顔で言ったので、また笑ってしまった。
この人、俺に褒めて欲しすぎ。可愛いかよ。
「俺は腰に佩いた長剣と魔法、あとはあまりやらんが、自分の血を使った攻撃が出来る」
「・・・・・・血?」
何かヤバそうな技? っぽいのが聞こえたんだけど?
「ああ、自分の血をこう、血管を傷付けて流れ出た血を自在に操る能力だ。鞭にしたりナイフにも出来るぞ」
「・・・・・・うわあ・・・・・・でも使うときに血が流れてる状態になるってことでしょ? 想像しただけでも痛そう・・・・・・」
攻撃を食らっても自分で切っても結局痛いんじゃん。
それに───。
「そのとき使った血はどうなるの? 消えちゃうの? それとも身体の中に戻せるの?」
僕が眉をひそめて聞くと、ナハトはなんでもない様に言った。
「一度出た血はさすがに戻らないな。大量に出血すれば貧血で倒れることもある」
実際、過去に一度倒れたとか言ってるけど、それってナハトじゃなかったら死んでる案件じゃないの!?
「貧血で瀕死の吸血鬼・・・・・・そんなナハトは見たくない・・・・・・」
思わず想像してヘンな顔になった僕を見て苦笑するナハト。
「あのときは確かベヒーモス討伐依頼で他のSランク冒険者達と共闘して、さすがに手強かったんだよな。デカかったし」
「・・・・・・ベヒーモス・・・・・・」
───って、小説なんかの知識で名前くらいしか知らないけど、強そうな魔獣だって何となく分かる。でもSランク冒険者達と一緒に戦って死にかけてるって、その魔獣、相当ヤバかったんだな・・・・・・。
「生きててよかったね、ナハト」
思わずそう言えば、ナハトにぎゅっと抱きしめられた。
「───俺にそんなことを言うヤツなんかほとんどいないよ。・・・・・・ありがとう」
「どういたしまして?」
・・・・・・まあ、ナハトの知り合いはたぶんナハトが不死身だって知ってるだろうし、知らなくてもSランクなんてめっちゃ強くて不死身くらいの認識がされてるかもしれないし。
だから心配されないのが当たり前になってるんだろうな。
僕はナハトと根本的なところが違うけど、生きててよかったとか心配なんてされたことないから、気持ちは何となく分かるよ。
───だから。
「僕でよければいつでも何度でも言ってあげるよ。生きて、僕と出逢ってくれてありがとう」
「───っユラも・・・・・・ユラも生きていてくれてよかった。ありがとう、俺の元に来てくれて」
そう言ったナハトは少し声が震えていて、僕もナハトのその言葉に不覚にも泣きそうになってぎゅっと抱きしめ返した。
───生きてる。
ナハトと分け合える熱が嬉しくて、僕達はしばらく抱き合っていたのだった───。
「・・・・・・どうする?」
「・・・・・・もの凄く近付きにくいよねぇ」
「何をどうしたのか分からないが完全に二人の世界だな」
「面白そうだからこのまま傍観してようか?」
遠くで呟くエアリアルとダオラの声が耳に入るまで、たぶん数分くらいだったと思うけど。
───うーわー! そうだった! ここ、鍛錬場だったよ! 他にも冒険者達もいたじゃんか!
僕は我に返って恥ずかしくなり、ナハトの胸に顔を埋めてぐりぐり。ナハトは僕のつむじ辺りをちゅっちゅと口付けている。
「───あーあ、ナハトさん、デレッとした顔をしちゃって・・・・・・」
「ユラ君は真っ赤な顔で死にそうですね。いい加減助けましょうか」
「お前ら、寄るな見るな近付くな!」
そう言いながら近付いてきたエアリアル達をそう言って威嚇するナハトが警戒心丸出しの猫っぽくて、僕は思わず吹き出した。
「───っふ、ははっ、ナハト可愛いな」
「───は?」
「へ?」
「・・・・・・この人のドコに可愛げが?」
僕の言葉にナハトが固まり、ダオラはキョトンとし、エアリアルは眉をひそめてそう言った。
「ナハトの可愛さは僕だけが知っていればいいよ。ね?」
「・・・・・・まあ、そうだな?」
思いっきり疑問形のナハトに更に笑う僕を見て、皆はまあいいかとなったらしい。
「ところで試し撃ち? 確認はこれからです?」
「うん。ちょうど始めるところ」
僕がそう言ったら二人ともぱあっと瞳を煌めかせた。
「間に合った! じゃあまた私達も見学していい?」
「もちろん」
「まあ、その方がいいな」
「・・・・・・何やら含みのある言い方だね?」
「アレを見れば分かる」
ナハトの言い様にエアリアルがそう返せば、ナハトが顎で向こうを指した。
その先はさっき僕が直した地面と壁。
すでにドコが凹んでたのかも分からないほど綺麗に直ったところだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・なるほど。言いたいことは分かった」
ダオラは無言で笑顔のまま固まり、エアリアルは渋い表情で絞り出すように呟いた。
ああ、うん。
やっぱりちょっとおかしいんだね?
「・・・・・・試し撃ちやってもいい?」
ちょっと気まずくなった僕は、空気を変えようとそう言って笑った。
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