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43 地下鍛錬場 再び! 1
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さてさて、面倒くさ──ゴホン、厄介事はその道に長けていそうな彼らに任せて。
再びやって来た鍛錬場。
さっきいた冒険者達のうちのパーティー組んでたっぽい人達の姿はなく、いるのは新人冒険者と指導役の冒険者だけだった。
「彼らは午前はここで説明と戦闘の仕方を教わって、午後は門の外に実地訓練の予定だ。薬草採取とか小型の弱い魔物の討伐とかな」
ナハトがそう教えてくれた。
「なるほど、一日レクチャーしてくれるんだ。凄いね」
「不安があれば、新人のみ希望すれば数日はタダで教えて貰える。それ以外は依頼料が発生するけどな」
「でもいい制度だよね」
そりゃあ冒険者に最低限必要な知識とはいえ、お金を支払って教わらないといけないってなったら本末転倒だよね。そもそもお金がないから冒険者になったんだろうし。
冒険者ギルドも初期投資してそのあと稼げる冒険者になってくれれば、さしたる費用じゃないんだろうし、回収率高いんだろうな。
───うん。僕も頑張って早くお金稼ごう。
そのためにもまずは魔法を色々教わらないと。
銃とかは扱いは問題ないから威力の確認くらいでいい。まずはとにかく未知の魔法の方をマスターしなくちゃ。
それにしても・・・・・・。
「ナハト、あの状態を魔法で直すのって結構大変じゃないの?」
さっき僕とダオラが組み手をしていた場所を見て、思ったよりも酷い惨状にちょっと眉が寄った。
うん、普通にクレーターだよね。やったのは自分達だけど、改めて見るとホント酷いな。
ソレにナハトが殴り飛ばしたダオラがツッコんだ壁もクレーター状に凹んで、地面には崩れたがれきの山。
「まあ、普通なら繊細な魔力操作がいるかな。だが俺を誰だと思ってる? 伊達に長生きはしてないぞ」
「自分でソレ言っちゃうんだ?」
ナハトがドヤ顔で自分の凄さと長寿を自慢している。
しかし知らない人からすれば、見た目二十代後半のイケメンが実は軽く一万歳越えだなんて誰が思うのか。
この世界の寿命、ホント凄いな。
「俺はユラにならいくらでも自慢するし褒めて欲しいぞ」
おお、そう来たか。こんな僕に褒められたいんだ?
心なしかぴんっと立ったケモ耳とぶんぶん振り回す尻尾の幻覚が見えるようだ。
おかしいな? ナハトは吸血鬼であって犬の獣人じゃないよな?
何か目もキラキラ輝いている気が・・・・・・。
「もちろんユラもいくらでも自分を自慢していいんだぞ。ユラがイヤと言っても俺はとことん褒めて愛してやるからな」
「───っ」
不意にナハトがドヤ顔じゃない柔らかい笑顔になって僕を抱きしめ、耳元で囁いてきてドキッとした。
たぶん顔中真っ赤だと思う。
「───っナハトって、タラシだよね」
慌てて手を突っぱって少し間を作る。すんなり離れたナハトは至極真面目な顔で僕を見た。
「何を言う。ユラにしかしないし言わないぞ。他の輩の対応を知ってるだろう?」
「・・・・・・確かに。そ、それでも恥ずかしいから、外では控えて欲しいんだけどな」
上目遣いでお願いすると、ナハトはウッという声を出したあとキリッとした顔になった。
「止めろとは言わないところが可愛いな。分かった。ユラのその顔や反応は俺だけが見られればいいから、気を付けよう」
「う、や、あの・・・・・・うん」
そうハッキリと言われて、ナハトの独占欲や嫉妬に嬉しく思う自分がいて、自覚したら恥ずかしい気持ちが湧いて思わずナハトの胸にしがみ付いて顔を埋めた。
「───っぐ」
ナハトの呻き声と力強い腕に、今までずっと感じられなかった幸せを噛みしめ、ナハトの良い匂いを無意識にすーはーと深く吸い込んでいた。
ああ、いい匂い。安心する。気持ちいい。
───うん。僕もナハトのこと、言えないかもしれない。
匂いを嗅いで気持ちいいなんて、自分もちょっと変態チックな癖があるかも、なんて思ったことはナハトには内緒だ。
再びやって来た鍛錬場。
さっきいた冒険者達のうちのパーティー組んでたっぽい人達の姿はなく、いるのは新人冒険者と指導役の冒険者だけだった。
「彼らは午前はここで説明と戦闘の仕方を教わって、午後は門の外に実地訓練の予定だ。薬草採取とか小型の弱い魔物の討伐とかな」
ナハトがそう教えてくれた。
「なるほど、一日レクチャーしてくれるんだ。凄いね」
「不安があれば、新人のみ希望すれば数日はタダで教えて貰える。それ以外は依頼料が発生するけどな」
「でもいい制度だよね」
そりゃあ冒険者に最低限必要な知識とはいえ、お金を支払って教わらないといけないってなったら本末転倒だよね。そもそもお金がないから冒険者になったんだろうし。
冒険者ギルドも初期投資してそのあと稼げる冒険者になってくれれば、さしたる費用じゃないんだろうし、回収率高いんだろうな。
───うん。僕も頑張って早くお金稼ごう。
そのためにもまずは魔法を色々教わらないと。
銃とかは扱いは問題ないから威力の確認くらいでいい。まずはとにかく未知の魔法の方をマスターしなくちゃ。
それにしても・・・・・・。
「ナハト、あの状態を魔法で直すのって結構大変じゃないの?」
さっき僕とダオラが組み手をしていた場所を見て、思ったよりも酷い惨状にちょっと眉が寄った。
うん、普通にクレーターだよね。やったのは自分達だけど、改めて見るとホント酷いな。
ソレにナハトが殴り飛ばしたダオラがツッコんだ壁もクレーター状に凹んで、地面には崩れたがれきの山。
「まあ、普通なら繊細な魔力操作がいるかな。だが俺を誰だと思ってる? 伊達に長生きはしてないぞ」
「自分でソレ言っちゃうんだ?」
ナハトがドヤ顔で自分の凄さと長寿を自慢している。
しかし知らない人からすれば、見た目二十代後半のイケメンが実は軽く一万歳越えだなんて誰が思うのか。
この世界の寿命、ホント凄いな。
「俺はユラにならいくらでも自慢するし褒めて欲しいぞ」
おお、そう来たか。こんな僕に褒められたいんだ?
心なしかぴんっと立ったケモ耳とぶんぶん振り回す尻尾の幻覚が見えるようだ。
おかしいな? ナハトは吸血鬼であって犬の獣人じゃないよな?
何か目もキラキラ輝いている気が・・・・・・。
「もちろんユラもいくらでも自分を自慢していいんだぞ。ユラがイヤと言っても俺はとことん褒めて愛してやるからな」
「───っ」
不意にナハトがドヤ顔じゃない柔らかい笑顔になって僕を抱きしめ、耳元で囁いてきてドキッとした。
たぶん顔中真っ赤だと思う。
「───っナハトって、タラシだよね」
慌てて手を突っぱって少し間を作る。すんなり離れたナハトは至極真面目な顔で僕を見た。
「何を言う。ユラにしかしないし言わないぞ。他の輩の対応を知ってるだろう?」
「・・・・・・確かに。そ、それでも恥ずかしいから、外では控えて欲しいんだけどな」
上目遣いでお願いすると、ナハトはウッという声を出したあとキリッとした顔になった。
「止めろとは言わないところが可愛いな。分かった。ユラのその顔や反応は俺だけが見られればいいから、気を付けよう」
「う、や、あの・・・・・・うん」
そうハッキリと言われて、ナハトの独占欲や嫉妬に嬉しく思う自分がいて、自覚したら恥ずかしい気持ちが湧いて思わずナハトの胸にしがみ付いて顔を埋めた。
「───っぐ」
ナハトの呻き声と力強い腕に、今までずっと感じられなかった幸せを噛みしめ、ナハトの良い匂いを無意識にすーはーと深く吸い込んでいた。
ああ、いい匂い。安心する。気持ちいい。
───うん。僕もナハトのこと、言えないかもしれない。
匂いを嗅いで気持ちいいなんて、自分もちょっと変態チックな癖があるかも、なんて思ったことはナハトには内緒だ。
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