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21 僕の本当の出自? 1
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気になった僕はナハトの掌にある自分のドッグタグを鑑定してみた。そういえば湖で所持品の鑑定をしたときはドッグタグには鑑定魔法を使わなかったな。そこまで気が回らなかった。
『鑑定』───心の中で唱える。
そして見えてきたモノは───。
【亡国ウィステリアの王族の証
特に王位継承権を持つ王族に与えられる特別な身分証。本人のみ使用可能。他者は偽って使うことが出来ない。
通常は隠蔽魔法でただのタグにしか見えない。
この隠蔽魔法は所有者本人にも効果が及び、姿を変える幻惑魔法と合わせて周りには人族の姿に見える。
通常は任意で解除・発動が出来るが、ユラの持つこのタグは任意で解除出来ない条件付き。
現在は条件をクリアしたため隠蔽も解除も自由に出来る。
現在は解除状態】
───ええと、これはどういうことなのかな?
僕には今イチ内容が理解できない。
ただのタグだったよね? 何、このウィステリア国の王族って?
確かに藤花の刻印があるけど、これは五十嵐家の家紋なだけだ。他に意味はないと思うんだけど。
それと隠蔽魔法とか条件とか。
条件て何? いつ、何をクリアしたの、僕!?
自分も大いに困惑してしまい、難しい顔で黙り込んでしまった三人にも僕は声をかけづらくて黙りこんだ。
あの三人にもこれと同じモノが見えてるんだろうか?
僕は気持ちを落ち着かせたくて、何かないかと思考を巡らす。
───そうだ。ハンドガンの手入れをしとこう。
無事に使えることも分かったし、さっきは数発しか撃っていなかったから、あとであの鍛錬場で気の済むまで試し撃ちさせて貰おうかな。弾は僕の魔力で撃ち放題だと思うし。
そう思ってハンドガンを二丁取り出し、一丁ずつ丁寧に確認していく。・・・・・・といっても鑑定すれば異常がないか即座に分かって拍子抜けした。
よく見ると、どうやらポーチに収納すれば瞬時に修復されて新品同様に戻るらしい。
ナニソレ、まじ!?
魔導具化したハンドガンが凄いのか、それとも魔導具化したポーチが凄いのか。
・・・・・・もしかして僕の身に着けてた服とかライターなんかも綺麗に元に戻るのか?
そう思って確認すると、ライターはパッと見た感じは綺麗だなくらいで分からないが、食べて減ったはずのレーションが謎技術で個数が戻っていた。
「・・・・・・わー・・・・・・四次元○ケット?」
これはたぶん僕だけの異世界特典だろうな。
僕の脳裏には白いポケットからジャジャーンと効果音がつきそうな仕草をするアレが浮かんでなんともいえない気分になった。
そんな現実逃避をしていると、ふとナハト達が自分を見ていることに気付いて、顔をあげた。
「・・・・・・何?」
「いや、ええと・・・・・・。さっきは色々と聞かないと言ったが、少し事情が変わった」
「───あー、僕のタグのせい? どこかおかしかった?」
自分で鑑定したのは黙っておいて、なんでもない風に聞いてみた。
すると言い辛そうに躊躇ったあと、エアリアルが口を開いた。
「───ユラ君は、このタグのことをどういう風に聞かされているのかな? どういう認識でいるの?」
「・・・・・・僕が暗部に所属しているという身分証だって言われました。でもそう言われたのは物心ついた頃で、タグ自体は物心つく前からずっと身に着けてましたけど」
これはその通りなので偽りなく告げる。
すると困ったような顔をしてエアリアルが更に聞いてきた。
「その、暗部の身分証という以外にこのウィステリアという言葉と紋章に何か心当たりはある? 例えば別の意味があるとか」
・・・・・・これはどう応えれば正解なのか。僕は少し悩んでこう応えた。
「意味はないと思うけど・・・・・・それは、僕を捨てた人達の象徴であり、僕を縛り付ける呪紋だと思ってる」
僕のこの言葉に三人は息を呑んだ。
でも、正直、そうとしか言えない。
僕を見捨てた、切り捨てた家族だった者の象徴で、それでも離れられない、僕を縛り付ける呪い。
離れたいと思っても出来ない。
あのときあの海辺で言ったことは本心だ。誰も僕を知らない場所へ行きたかった。呪縛から逃れて生きたかった。
───それがこんな形で叶えられたというのに。異世界に来てやっと離れられたと思ったのに、こんなところまで追いかけてくる。
呪い以外に何があるというんだ。
もういい加減、解放してよ。
※次話はナハト視点。
『鑑定』───心の中で唱える。
そして見えてきたモノは───。
【亡国ウィステリアの王族の証
特に王位継承権を持つ王族に与えられる特別な身分証。本人のみ使用可能。他者は偽って使うことが出来ない。
通常は隠蔽魔法でただのタグにしか見えない。
この隠蔽魔法は所有者本人にも効果が及び、姿を変える幻惑魔法と合わせて周りには人族の姿に見える。
通常は任意で解除・発動が出来るが、ユラの持つこのタグは任意で解除出来ない条件付き。
現在は条件をクリアしたため隠蔽も解除も自由に出来る。
現在は解除状態】
───ええと、これはどういうことなのかな?
僕には今イチ内容が理解できない。
ただのタグだったよね? 何、このウィステリア国の王族って?
確かに藤花の刻印があるけど、これは五十嵐家の家紋なだけだ。他に意味はないと思うんだけど。
それと隠蔽魔法とか条件とか。
条件て何? いつ、何をクリアしたの、僕!?
自分も大いに困惑してしまい、難しい顔で黙り込んでしまった三人にも僕は声をかけづらくて黙りこんだ。
あの三人にもこれと同じモノが見えてるんだろうか?
僕は気持ちを落ち着かせたくて、何かないかと思考を巡らす。
───そうだ。ハンドガンの手入れをしとこう。
無事に使えることも分かったし、さっきは数発しか撃っていなかったから、あとであの鍛錬場で気の済むまで試し撃ちさせて貰おうかな。弾は僕の魔力で撃ち放題だと思うし。
そう思ってハンドガンを二丁取り出し、一丁ずつ丁寧に確認していく。・・・・・・といっても鑑定すれば異常がないか即座に分かって拍子抜けした。
よく見ると、どうやらポーチに収納すれば瞬時に修復されて新品同様に戻るらしい。
ナニソレ、まじ!?
魔導具化したハンドガンが凄いのか、それとも魔導具化したポーチが凄いのか。
・・・・・・もしかして僕の身に着けてた服とかライターなんかも綺麗に元に戻るのか?
そう思って確認すると、ライターはパッと見た感じは綺麗だなくらいで分からないが、食べて減ったはずのレーションが謎技術で個数が戻っていた。
「・・・・・・わー・・・・・・四次元○ケット?」
これはたぶん僕だけの異世界特典だろうな。
僕の脳裏には白いポケットからジャジャーンと効果音がつきそうな仕草をするアレが浮かんでなんともいえない気分になった。
そんな現実逃避をしていると、ふとナハト達が自分を見ていることに気付いて、顔をあげた。
「・・・・・・何?」
「いや、ええと・・・・・・。さっきは色々と聞かないと言ったが、少し事情が変わった」
「───あー、僕のタグのせい? どこかおかしかった?」
自分で鑑定したのは黙っておいて、なんでもない風に聞いてみた。
すると言い辛そうに躊躇ったあと、エアリアルが口を開いた。
「───ユラ君は、このタグのことをどういう風に聞かされているのかな? どういう認識でいるの?」
「・・・・・・僕が暗部に所属しているという身分証だって言われました。でもそう言われたのは物心ついた頃で、タグ自体は物心つく前からずっと身に着けてましたけど」
これはその通りなので偽りなく告げる。
すると困ったような顔をしてエアリアルが更に聞いてきた。
「その、暗部の身分証という以外にこのウィステリアという言葉と紋章に何か心当たりはある? 例えば別の意味があるとか」
・・・・・・これはどう応えれば正解なのか。僕は少し悩んでこう応えた。
「意味はないと思うけど・・・・・・それは、僕を捨てた人達の象徴であり、僕を縛り付ける呪紋だと思ってる」
僕のこの言葉に三人は息を呑んだ。
でも、正直、そうとしか言えない。
僕を見捨てた、切り捨てた家族だった者の象徴で、それでも離れられない、僕を縛り付ける呪い。
離れたいと思っても出来ない。
あのときあの海辺で言ったことは本心だ。誰も僕を知らない場所へ行きたかった。呪縛から逃れて生きたかった。
───それがこんな形で叶えられたというのに。異世界に来てやっと離れられたと思ったのに、こんなところまで追いかけてくる。
呪い以外に何があるというんだ。
もういい加減、解放してよ。
※次話はナハト視点。
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