(仮)攫われて異世界

エウラ

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14 事情聴取 2

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僕は頭をフル回転させて開示する情報を取捨選択する。

───いや、言えないことの方が多いな。
でもさっき、無理には聞かないって言質を取ったし。

「改めまして、僕の名前は唯颯ユラです。ナハトさんに最初に会ったときにもそう名乗りました」
「ああ」

エアリアルが確認するようにナハトを見ると、短く応えた。

家名はこのまま、言わないでおこう。この世界では一般人は家名がないかもしれないし、そもそも五十嵐の家名を名乗っても分からないだろう。

・・・・・・それにもう、あの家とは、いやあの世界とはとっくに縁が切れてるだろうし。
ココではただのユラで生きていく。

ただ、僕がここで生きていくためにはおそらく今までの暗部の力が必要になるはず。
だからこの力は下手に誤魔化さず、正直に打ち明けた方がいい。
例え異質であっても、今の僕にはこの身体一つしかないんだから。

「・・・・・・あの、僕は物心つく前から、色々と訓練を受けていて」
「───っうん」
「それは、いわゆる戦闘訓練というか、主に対人戦闘で、その・・・・・・」

息を呑んだエアリアルの反応がちょっと怖くて目を逸らす。
なんて言えばいいんだろう。こっちではどういう位置づけ? よく分からなくて言い淀んでしまう。

するとエアリアルの方から意を汲んで話してくれた。

「それはつまり、暗殺とかの類いの訓練ってことかな?」
「っそうです。それで小さな頃から、そういう作戦に加わったり、最近は・・・・・・自ら手を下していて・・・・・・」

これは家のため、仕事だと言い聞かせて任務を熟した。感情を消して、僕はただの道具だって思い込んだ。

だってそうじゃないと───。

「・・・・・・分かった。もういいから、泣くな」
「・・・・・・え?」

ナハトがぎゅっと抱きしめてそう言ったので、僕は不思議に思った。
泣いてる? 誰が? 僕が?

手を頬にあてると、濡れていた。

「・・・・・・何、で」

始めこそ辛くて泣いたけど、だからって訓練を止めてはくれない。それが分かって早々に諦めた。
それからそれ以降は泣くことなんてなかったのに。

「やりたくなかったんだろう? 無理矢理やらされて、それしか生きる道がなかった、そうだろう?」

何で、この人は僕自身気付かない、いや、封印した感情をくみ取ってくれるの?

「ここには君を害するモノはないと言ったろう。だからもう、苦しまなくていいんだ」

そう言ってくれて嬉しい反面、何もかも分かりきったような言葉が僕を苛立たせて───。

「───せに・・・・・・」
「ユラ?」
「───っ何も知らないくせに! 何でそう言いきれるんだ! 僕はっ・・・・・・僕が今までどんな気持ちでいたのか───」
「ッユラ!」
「誰にも愛されない、捨てられた僕に優しくしないでっ!!」

───じゃないと、僕は、独りに戻れなくなる───。

今まで押さえ込んでいた感情がついに耐えきれなくなって爆発した。

苦しい、辛い、独りでいい、独りはイヤだ。
優しくして、優しくしないで。愛さないで、愛して欲しい。
───愛せない。僕にそんな資格、ない。

無意識につむじ風のようなモノを身体から巻き起こし、火事場の馬鹿力でナハトの腕から抜け出すと出入り口の扉に走った。

とにかくここから、ナハトから今すぐ逃げ出したかった。
僕が僕じゃいられなくなる恐怖。
ココにいちゃダメだ。そう思って扉を開くと廊下に出た。

───アレ? でももういいんじゃないか?
だってここは僕のことを誰も知らない異世界なんだから。

出てすぐにそんなことを思った一瞬、ナハトに後ろから抱きしめられた。

「ユラ、逃げるな! 自分の気持ちから目を逸らすな! 俺ならユラを一生涯愛し続けられるから!」
「───っは、離・・・・・・!! ・・・・・・へ?」

暴れ藻掻いたそのとき、思いも寄らぬ言葉がナハトから飛び出し、ピタッと動きを止めた。ついでに涙も止まった。

一体何の騒ぎだと、下の階の冒険者達やギルト職員達が階下から覗き込んだり聞き耳を立てていた。

「───・・・・・・なんて?」

全注目を浴びる中、ナハトは僕を正面に向き直すと真剣な顔で告げた。

「ユラが好きだ。愛してる。俺と生涯を共にしてくれ」

───まさかの公開プロポーズ・・・・・・!?






※そろそろ作者のシリアス展開が限界なのでギャグ路線に入っていきます。悪しからず。

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