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11 異世界の街並み 2
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ナハトの手の温もりにホッとしながら歩いていくと、体感で十五分ほど経っただろうか、人通りの多い道にぶつかった。
フードで隠れた視線を動かすと目に入る、たくさんの人───人?
「・・・・・・」
思考が停止する。
目に映る人達が現実とは思えなくて、思わず立ち止まった。
だって、たくさんの人の頭にある猫や犬みたいな耳やお尻の尻尾・・・・・・?
ヒゲもじゃで、でも僕よりももっと小さい背のおじさん・・・・・・?
何なら二足歩行してるトカゲっぽい見た目の人・・・・・・人って言うのか?
そんなアニメや映画の存在がたくさん行き交っていた。
───これぞ異世界あるある・・・・・・?
僕の手を繋いでいたナハトの腕がクンと引かれ、ナハトが僕が立ち止まったことに気付いたようで振り向いた。
「ユラ?」
「・・・・・・ぁ、え・・・・・・?」
ナハトは戸惑う声をあげる僕を心配して近付くと、ひょいと僕を軽々と抱き上げて、対面でぎゅっと抱きしめた。
ちょうど僕の顔がナハトの右肩に隠れる感じだ。
「え?」
驚いて声をあげた僕を宥めるように背中をポンポンと撫ぜるナハトの温かい手に、無意識に強張っていた身体から力が抜けた。
「・・・・・・大丈夫、ここには君を害するモノは何もない」
「───っなん、で」
───そんなこと言うの? 僕のこと、何も知らないよね? それとも何か知ってるの?
「大丈夫、心配ないって言っただろう」
「・・・・・・」
「安心して。このまま連れて行くから」
どういうことか、よく分からないけど。何故かナハトの言うことは安心できる。
さっきの温かい手も、声も、本当のことに感じられるから。
まだ一日も経ってない、何ならナハトとは数時間しか一緒にいないのに。
でも今の僕にはナハトしかいないから───。
「・・・・・・ん」
ナハトの胸に縋るようにしがみ付き、肩口に顔を埋めて、現実逃避をするように目を瞑った。
耳元でナハトがふっと笑ったような気がしたあと、僕の周りからざわめきが消えた。
それを不思議に思いながら、僕は詰めていた息をそっと吐き出した。
───それから更に十分くらい経った頃、音は聞こえなかったが周囲の空気が変わったのに気付いてハッと目を開けた。
目を開けた先には、声は相変わらず聞こえないが僕らを遠巻きに見つめて何かこそこそと話す様々な見た目の・・・・・・冒険者達?
ということはここが冒険者ギルドなのか。
フードの影から見える範囲の冒険者達の会話をこっそり読唇術で唇の動きを読み取ってみる。
『ナハトさんが連れてるヤツ、誰だ?』
『小っさいな』
『ガキか?』
『分からん、が普通じゃなさそうだ』
・・・・・・小っさい言うな。
ムッとしながら、大した情報もなさそうだったので唇を読むのは止めた。
それにしてもナハトはやっぱり凄い冒険者なのか、皆、敬称を付けて呼んでる。
気にはなったが、それよりも冒険者ギルドという場所に興味がある。
「すまない、ギルドマスターに取り次いでくれるか」
ナハトが誰かにそう言うのを聞きながらサッとギルド内をチェックする。逃走経路はまず確認しておかないと。
いつもの癖で視線を巡らせていると、その動きを読んだのか苦笑して僕の頭をフード越しに撫ぜるナハト。
「だから心配ないって言ったろう? 俺は強いから」
その言葉にハッとしていると、未だにナハト以外の声が聞こえない状況で気配だけはざわざわとしたのが分かって、咄嗟に唇の動きを読む。
『おい! あのナハトさんが笑った!?』
『うっそだろ!?』
『俺、初めて見たかも!』
───えーと? もしかしてナハトって笑わない人?
僕の前じゃ、よく笑ってると思うんだけど。
思わずナハトをジッと見つめた。
「ん?」
ニコッと笑うナハト。何なら僕よりも笑ってるよね?
更にざわめきの気配が大きくなった中、僕は首を小さくふるふると振った。
「何でもない」
「そう?」
そんな会話をしていたら、誰かが戻ってきて僕を抱えたままのナハトを二階へと案内してきた。
・・・・・・うん、楽ちんだからもういいかぁ。
おそらく今朝言っていた『ギルドマスター』とやらの部屋に行くんだろう。
すっかりドナドナされる牛の気分になって運ばれる僕だった。
フードで隠れた視線を動かすと目に入る、たくさんの人───人?
「・・・・・・」
思考が停止する。
目に映る人達が現実とは思えなくて、思わず立ち止まった。
だって、たくさんの人の頭にある猫や犬みたいな耳やお尻の尻尾・・・・・・?
ヒゲもじゃで、でも僕よりももっと小さい背のおじさん・・・・・・?
何なら二足歩行してるトカゲっぽい見た目の人・・・・・・人って言うのか?
そんなアニメや映画の存在がたくさん行き交っていた。
───これぞ異世界あるある・・・・・・?
僕の手を繋いでいたナハトの腕がクンと引かれ、ナハトが僕が立ち止まったことに気付いたようで振り向いた。
「ユラ?」
「・・・・・・ぁ、え・・・・・・?」
ナハトは戸惑う声をあげる僕を心配して近付くと、ひょいと僕を軽々と抱き上げて、対面でぎゅっと抱きしめた。
ちょうど僕の顔がナハトの右肩に隠れる感じだ。
「え?」
驚いて声をあげた僕を宥めるように背中をポンポンと撫ぜるナハトの温かい手に、無意識に強張っていた身体から力が抜けた。
「・・・・・・大丈夫、ここには君を害するモノは何もない」
「───っなん、で」
───そんなこと言うの? 僕のこと、何も知らないよね? それとも何か知ってるの?
「大丈夫、心配ないって言っただろう」
「・・・・・・」
「安心して。このまま連れて行くから」
どういうことか、よく分からないけど。何故かナハトの言うことは安心できる。
さっきの温かい手も、声も、本当のことに感じられるから。
まだ一日も経ってない、何ならナハトとは数時間しか一緒にいないのに。
でも今の僕にはナハトしかいないから───。
「・・・・・・ん」
ナハトの胸に縋るようにしがみ付き、肩口に顔を埋めて、現実逃避をするように目を瞑った。
耳元でナハトがふっと笑ったような気がしたあと、僕の周りからざわめきが消えた。
それを不思議に思いながら、僕は詰めていた息をそっと吐き出した。
───それから更に十分くらい経った頃、音は聞こえなかったが周囲の空気が変わったのに気付いてハッと目を開けた。
目を開けた先には、声は相変わらず聞こえないが僕らを遠巻きに見つめて何かこそこそと話す様々な見た目の・・・・・・冒険者達?
ということはここが冒険者ギルドなのか。
フードの影から見える範囲の冒険者達の会話をこっそり読唇術で唇の動きを読み取ってみる。
『ナハトさんが連れてるヤツ、誰だ?』
『小っさいな』
『ガキか?』
『分からん、が普通じゃなさそうだ』
・・・・・・小っさい言うな。
ムッとしながら、大した情報もなさそうだったので唇を読むのは止めた。
それにしてもナハトはやっぱり凄い冒険者なのか、皆、敬称を付けて呼んでる。
気にはなったが、それよりも冒険者ギルドという場所に興味がある。
「すまない、ギルドマスターに取り次いでくれるか」
ナハトが誰かにそう言うのを聞きながらサッとギルド内をチェックする。逃走経路はまず確認しておかないと。
いつもの癖で視線を巡らせていると、その動きを読んだのか苦笑して僕の頭をフード越しに撫ぜるナハト。
「だから心配ないって言ったろう? 俺は強いから」
その言葉にハッとしていると、未だにナハト以外の声が聞こえない状況で気配だけはざわざわとしたのが分かって、咄嗟に唇の動きを読む。
『おい! あのナハトさんが笑った!?』
『うっそだろ!?』
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───えーと? もしかしてナハトって笑わない人?
僕の前じゃ、よく笑ってると思うんだけど。
思わずナハトをジッと見つめた。
「ん?」
ニコッと笑うナハト。何なら僕よりも笑ってるよね?
更にざわめきの気配が大きくなった中、僕は首を小さくふるふると振った。
「何でもない」
「そう?」
そんな会話をしていたら、誰かが戻ってきて僕を抱えたままのナハトを二階へと案内してきた。
・・・・・・うん、楽ちんだからもういいかぁ。
おそらく今朝言っていた『ギルドマスター』とやらの部屋に行くんだろう。
すっかりドナドナされる牛の気分になって運ばれる僕だった。
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