(仮)攫われて異世界

エウラ

文字の大きさ
上 下
6 / 76

5 また攫われた(今度は物理的に)

しおりを挟む
※今日は攻めの情報のために二回行動します。夕方にもう一度更新します。その頃にタグも追加予定。


───柔らかくて触り心地のいいお布団。

こんなふかふかなお布団でぐっすり眠るなんて、いつ振りだろう。

一八歳の成人の日から連日熟すようになった裏家業の汚れ仕事。
おかげでそれ以前もろくにベッドに横になっていなかったのに、更に自室のベッドでまともに寝る間もなく、大抵は移動中の車内か潜入先でひっそり仮眠するのみだった。

いくら少しの睡眠で大丈夫なように訓練されているとはいえ、成長期の子供を酷使しすぎだって。だから身長が伸びなかったんだよ、きっと。

・・・・・・ああ、気持ちいい。
何か柔らかくて温かいモノが顔にあたる。ずっと欲しくて、でもずっと与えられなかったモノ。
訓練が始まった頃には、もう得られなかった温もり。

弟妹はあんなに当たり前のように享受していた、両親の愛情と温かい手。

僕には与えられなかったモノ───。

だからたぶん、僕も与えてあげられない。
愛情も温もりも知らないから。

だからこれ以上、僕には与えないで。辛くなるから。

無意識に温もりに擦り寄りながら、そう思った。

「───・・・・・・」

チュンチュン、鳥の囀る音が聞こえる。これが朝チュンか・・・・・・。
こんなに眠ったのは何年振りだろう。ふかふかなお布団の肌触りを全身で感じている。

───肌触りを、全身で?

「・・・・・・っ!?」

思わずガバッと身を起こす。待て待て待て!? おかしいだろ、手足ならともかく全身でって!

シーツを捲ると、一糸纏わぬすっぽんぽん。パンツも履いてない。あるのは首から下げたドッグタグだけだ。

「・・・・・・・・・・・・はあぁー!?」

なんだこれ、どうしてベッドに素っ裸で寝てんの!? そんでもって、ココはどこ!?

確かナハトが一緒に行こうとかなんとか言って、気付いたら眠ってて・・・・・・!?

「───ナハト!? どこにいるの!? ココどこ!?」

これにはさすがに僕も混乱して思わず大声を上げた。

「───ユラ? どうした───」
「ッナハト! ココどこ!? 今度は何!?」

扉を開けて急ぎ足でやって来たナハトが言い終える前にベッドから飛び降り、僕は無意識にナハトにしがみ付いた。

───素っ裸で。

「・・・・・・ユラ、落ち着いて?」
「だって、目が覚めたらまた知らない場所で、僕っ・・・・・・」
「ユラ、ここは俺の家だ。心配ない。すまない、眠っているうちに連れて来たから・・・・・・」

そう言って、ぎゅうぎゅうとしがみ付く僕にシーツをかけてくれた。
・・・・・・ん? シーツを?

「・・・・・・」
「ユラ?」

───そうだよ、よく考えたら僕、さっきまで裸でベッドに寝てたんだった。そこに思わずナハトに抱き付いて───。

うわああぁー!

その事実に気付いた途端、耳どころか首筋まで真っ赤に熱を持ったのが分かった。

「・・・・・・っ」

いや、男同士だし裸なんて気にしないだろうし、大体僕が裸だったのってナハトがシワにならないように気を使って服を脱がしてくれたのかもしれないし!?

でも僕は自分の恋愛対象が男だから、さすがに恥ずかしいんだけど!

───そう。日々訓練に明け暮れていた僕は、いつの間にか一緒にいる仲間の鍛えられた身体が好きになっていた。女の子の身体には性的な興味が湧かなかったんだ。

・・・・・・母親が純粋無垢な感じだったから、よけいに性欲が湧かなかったのかもしれない。

それに思春期にいつもいたのは男で、シモの話とか猥談も彼らから聞いていたから。
仕事のあとに仲間内の誰々とセフレでヤったとかの話題には事欠かなかったし。

・・・・・・うん、ナハトは正直、僕の好みドンピシャなんだよね。だからちょっと困る。

身分証というタグ以外に何も知らない異世界人なんだから、警戒しなくちゃいけないのに。
いや異世界人なのは僕の方か。

とにかく、ちょっと離れよう。

「ごめん、驚いて、つい。・・・・・・落ち着いたから、大丈夫」
「・・・・・・そう?」

心配そうなナハトからしがみ付いていた腕を離してシーツを掴むと、ベッドに逆戻りした。
・・・・・・顔はたぶん無表情だけど赤い気がする。

「ぼ、僕の服とか荷物は・・・・・・?」
「ああ、そこのサイドテーブルに置いてある。が、もしアレなら着替えを用意してあるから・・・・・・」
「あー、うん、じゃあお言葉に甘えて着替えを借りようかな」

もぞもぞしながらナハトの手にある着替えを受け取って背中を向けると着替えをしていく。

その背に、ジッと視線を感じながら───。






















※愛想笑いもポーカーフェイスも取り繕えないくらい、実は動揺してました。
異世界転移も興奮でおかしかっただけで実は冷静じゃなかったらしい。



しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

神獣の花嫁

綾里 ハスミ
BL
 親に酷い扱いを受けて育った主人公と、角が欠けていたゆえに不吉と言われて育った神獣の二人が出会って恋をする話。 <角欠けの神獣×幸薄い主人公>

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした

Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話 :注意: 作者は素人です 傍観者視点の話 人(?)×人 安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【書籍化進行中】ヒヨコの刷り込みなんて言わないで。魅了の俺と不器用なおっさん

tamura-k
BL
気づいたら知らない森の中に居た緑川颯太(みどりかわそうた)は、通りかかった30代前半のイケオジ冒険者のダグラスに運よく拾ってもらった。 何もわからない颯太に、ダグラスは一緒に町に行くことを提案した。 小遣い稼ぎに薬草を摘みながら町を目指して歩いていたが、どうやら颯太にはとんでもないスキルがあるらしいと判明。 ええ?魅了??なにそれ、俺、どうしたらいいんだよ? 一回りも違う気の良いイケオジ・ダグラスと年下・ツンデレなりそこない系のソウタ。 それはヒヨコの刷り込みと同じってバカにすんな! 俺の幸せは俺が決めるもんだろう? 年の差がお好きな方へ。 ※はRぽい描写あり ************ 書籍化の声をかけていただきまして、現在進行中です。 決まりましたら改めてお知らせいたします。 また、発売予定の一カ月前にはアルファポリス様の規約により、こちらは全て削除いたします。 (ムーンノベルの方ではそのままです)

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 飛竜騎士団率いる悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治を目指すこと、そして敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成のためグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後、少しずつ歴史は歪曲しグレイの予知からズレはじめる…… *主人公の股緩め、登場キャラ貞操観念低め、性癖尖り目、ピュア成分低めです。苦手な方はご注意ください。 *他サイト様にも投稿している作品です。

処理中です...