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5 また攫われた(今度は物理的に)
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※今日は攻めの情報のために二回行動します。夕方にもう一度更新します。その頃にタグも追加予定。
───柔らかくて触り心地のいいお布団。
こんなふかふかなお布団でぐっすり眠るなんて、いつ振りだろう。
一八歳の成人の日から連日熟すようになった裏家業の汚れ仕事。
おかげでそれ以前もろくにベッドに横になっていなかったのに、更に自室のベッドでまともに寝る間もなく、大抵は移動中の車内か潜入先でひっそり仮眠するのみだった。
いくら少しの睡眠で大丈夫なように訓練されているとはいえ、成長期の子供を酷使しすぎだって。だから身長が伸びなかったんだよ、きっと。
・・・・・・ああ、気持ちいい。
何か柔らかくて温かいモノが顔にあたる。ずっと欲しくて、でもずっと与えられなかったモノ。
訓練が始まった頃には、もう得られなかった温もり。
弟妹はあんなに当たり前のように享受していた、両親の愛情と温かい手。
僕には与えられなかったモノ───。
だからたぶん、僕も与えてあげられない。
愛情も温もりも知らないから。
だからこれ以上、僕には与えないで。辛くなるから。
無意識に温もりに擦り寄りながら、そう思った。
「───・・・・・・」
チュンチュン、鳥の囀る音が聞こえる。これが朝チュンか・・・・・・。
こんなに眠ったのは何年振りだろう。ふかふかなお布団の肌触りを全身で感じている。
───肌触りを、全身で?
「・・・・・・っ!?」
思わずガバッと身を起こす。待て待て待て!? おかしいだろ、手足ならともかく全身でって!
シーツを捲ると、一糸纏わぬすっぽんぽん。パンツも履いてない。あるのは首から下げたドッグタグだけだ。
「・・・・・・・・・・・・はあぁー!?」
なんだこれ、どうしてベッドに素っ裸で寝てんの!? そんでもって、ココはどこ!?
確かナハトが一緒に行こうとかなんとか言って、気付いたら眠ってて・・・・・・!?
「───ナハト!? どこにいるの!? ココどこ!?」
これにはさすがに僕も混乱して思わず大声を上げた。
「───ユラ? どうした───」
「ッナハト! ココどこ!? 今度は何!?」
扉を開けて急ぎ足でやって来たナハトが言い終える前にベッドから飛び降り、僕は無意識にナハトにしがみ付いた。
───素っ裸で。
「・・・・・・ユラ、落ち着いて?」
「だって、目が覚めたらまた知らない場所で、僕っ・・・・・・」
「ユラ、ここは俺の家だ。心配ない。すまない、眠っているうちに連れて来たから・・・・・・」
そう言って、ぎゅうぎゅうとしがみ付く僕にシーツをかけてくれた。
・・・・・・ん? シーツを?
「・・・・・・」
「ユラ?」
───そうだよ、よく考えたら僕、さっきまで裸でベッドに寝てたんだった。そこに思わずナハトに抱き付いて───。
うわああぁー!
その事実に気付いた途端、耳どころか首筋まで真っ赤に熱を持ったのが分かった。
「・・・・・・っ」
いや、男同士だし裸なんて気にしないだろうし、大体僕が裸だったのってナハトがシワにならないように気を使って服を脱がしてくれたのかもしれないし!?
でも僕は自分の恋愛対象が男だから、さすがに恥ずかしいんだけど!
───そう。日々訓練に明け暮れていた僕は、いつの間にか一緒にいる仲間の鍛えられた身体が好きになっていた。女の子の身体には性的な興味が湧かなかったんだ。
・・・・・・母親が純粋無垢な感じだったから、よけいに性欲が湧かなかったのかもしれない。
それに思春期にいつもいたのは男で、シモの話とか猥談も彼らから聞いていたから。
仕事のあとに仲間内の誰々とセフレでヤったとかの話題には事欠かなかったし。
・・・・・・うん、ナハトは正直、僕の好みドンピシャなんだよね。だからちょっと困る。
身分証というタグ以外に何も知らない異世界人なんだから、警戒しなくちゃいけないのに。
いや異世界人なのは僕の方か。
とにかく、ちょっと離れよう。
「ごめん、驚いて、つい。・・・・・・落ち着いたから、大丈夫」
「・・・・・・そう?」
心配そうなナハトからしがみ付いていた腕を離してシーツを掴むと、ベッドに逆戻りした。
・・・・・・顔はたぶん無表情だけど赤い気がする。
「ぼ、僕の服とか荷物は・・・・・・?」
「ああ、そこのサイドテーブルに置いてある。が、もしアレなら着替えを用意してあるから・・・・・・」
「あー、うん、じゃあお言葉に甘えて着替えを借りようかな」
もぞもぞしながらナハトの手にある着替えを受け取って背中を向けると着替えをしていく。
その背に、ジッと視線を感じながら───。
※愛想笑いもポーカーフェイスも取り繕えないくらい、実は動揺してました。
異世界転移も興奮でおかしかっただけで実は冷静じゃなかったらしい。
───柔らかくて触り心地のいいお布団。
こんなふかふかなお布団でぐっすり眠るなんて、いつ振りだろう。
一八歳の成人の日から連日熟すようになった裏家業の汚れ仕事。
おかげでそれ以前もろくにベッドに横になっていなかったのに、更に自室のベッドでまともに寝る間もなく、大抵は移動中の車内か潜入先でひっそり仮眠するのみだった。
いくら少しの睡眠で大丈夫なように訓練されているとはいえ、成長期の子供を酷使しすぎだって。だから身長が伸びなかったんだよ、きっと。
・・・・・・ああ、気持ちいい。
何か柔らかくて温かいモノが顔にあたる。ずっと欲しくて、でもずっと与えられなかったモノ。
訓練が始まった頃には、もう得られなかった温もり。
弟妹はあんなに当たり前のように享受していた、両親の愛情と温かい手。
僕には与えられなかったモノ───。
だからたぶん、僕も与えてあげられない。
愛情も温もりも知らないから。
だからこれ以上、僕には与えないで。辛くなるから。
無意識に温もりに擦り寄りながら、そう思った。
「───・・・・・・」
チュンチュン、鳥の囀る音が聞こえる。これが朝チュンか・・・・・・。
こんなに眠ったのは何年振りだろう。ふかふかなお布団の肌触りを全身で感じている。
───肌触りを、全身で?
「・・・・・・っ!?」
思わずガバッと身を起こす。待て待て待て!? おかしいだろ、手足ならともかく全身でって!
シーツを捲ると、一糸纏わぬすっぽんぽん。パンツも履いてない。あるのは首から下げたドッグタグだけだ。
「・・・・・・・・・・・・はあぁー!?」
なんだこれ、どうしてベッドに素っ裸で寝てんの!? そんでもって、ココはどこ!?
確かナハトが一緒に行こうとかなんとか言って、気付いたら眠ってて・・・・・・!?
「───ナハト!? どこにいるの!? ココどこ!?」
これにはさすがに僕も混乱して思わず大声を上げた。
「───ユラ? どうした───」
「ッナハト! ココどこ!? 今度は何!?」
扉を開けて急ぎ足でやって来たナハトが言い終える前にベッドから飛び降り、僕は無意識にナハトにしがみ付いた。
───素っ裸で。
「・・・・・・ユラ、落ち着いて?」
「だって、目が覚めたらまた知らない場所で、僕っ・・・・・・」
「ユラ、ここは俺の家だ。心配ない。すまない、眠っているうちに連れて来たから・・・・・・」
そう言って、ぎゅうぎゅうとしがみ付く僕にシーツをかけてくれた。
・・・・・・ん? シーツを?
「・・・・・・」
「ユラ?」
───そうだよ、よく考えたら僕、さっきまで裸でベッドに寝てたんだった。そこに思わずナハトに抱き付いて───。
うわああぁー!
その事実に気付いた途端、耳どころか首筋まで真っ赤に熱を持ったのが分かった。
「・・・・・・っ」
いや、男同士だし裸なんて気にしないだろうし、大体僕が裸だったのってナハトがシワにならないように気を使って服を脱がしてくれたのかもしれないし!?
でも僕は自分の恋愛対象が男だから、さすがに恥ずかしいんだけど!
───そう。日々訓練に明け暮れていた僕は、いつの間にか一緒にいる仲間の鍛えられた身体が好きになっていた。女の子の身体には性的な興味が湧かなかったんだ。
・・・・・・母親が純粋無垢な感じだったから、よけいに性欲が湧かなかったのかもしれない。
それに思春期にいつもいたのは男で、シモの話とか猥談も彼らから聞いていたから。
仕事のあとに仲間内の誰々とセフレでヤったとかの話題には事欠かなかったし。
・・・・・・うん、ナハトは正直、僕の好みドンピシャなんだよね。だからちょっと困る。
身分証というタグ以外に何も知らない異世界人なんだから、警戒しなくちゃいけないのに。
いや異世界人なのは僕の方か。
とにかく、ちょっと離れよう。
「ごめん、驚いて、つい。・・・・・・落ち着いたから、大丈夫」
「・・・・・・そう?」
心配そうなナハトからしがみ付いていた腕を離してシーツを掴むと、ベッドに逆戻りした。
・・・・・・顔はたぶん無表情だけど赤い気がする。
「ぼ、僕の服とか荷物は・・・・・・?」
「ああ、そこのサイドテーブルに置いてある。が、もしアレなら着替えを用意してあるから・・・・・・」
「あー、うん、じゃあお言葉に甘えて着替えを借りようかな」
もぞもぞしながらナハトの手にある着替えを受け取って背中を向けると着替えをしていく。
その背に、ジッと視線を感じながら───。
※愛想笑いもポーカーフェイスも取り繕えないくらい、実は動揺してました。
異世界転移も興奮でおかしかっただけで実は冷静じゃなかったらしい。
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