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25 ファティマからの贈り物
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「あ、そうそう。桜雅にプレゼント持ってきたんだ」
王様そっちのけで、ファティマが思い出したようにそう言って俺の目の前に移動してきた。
ちなみにファティマは不老不死で陽光もへっちゃらだそうで、普通に顔を晒して陽光を浴びている。凄いな。
「プレゼント?」
「うん。はい、コレ。僕お手製の魔導具」
そう言ってパチッと右耳の耳朶に嵌められたのは、触ってみた感じシンプルなイヤーカフっぽい。
「え、ありがとう。でも何で? コレってどういうヤツ?」
嬉しいけど装飾品じゃなくて魔導具って言ったよね?
「ソレはね、桜雅が無意識に漏らしちゃう『魅了』のスキルをちょっと抑えてくれる魔導具だよ」
「・・・・・・チャーム? え、ソレって吸血鬼特有の? 俺、ダダ漏れ?」
言われなきゃ気付かなかった。じゃあ今までもあの騎士団でやらかしてた? 誰も何も言わないから。
───いや、たぶん吸血鬼のコトを分かってない俺のために黙ってたんだろう。
気を使わせちゃったんだな。
「慣れれば要らないんだけど、まあ、垂れ流しちゃってアチコチで誑し込んじゃって襲われても困るし」
そう言ってファティマがチラリと見たのはベオウルフと、何故か王様。
ベオウルフは、まあ、嫉妬的な意味だろうと分かるけど、何で王様?
「───絶対、手ぇ出す気満々だっただろう」
低い声で王様を威嚇するファティマにキョトンとする。
「え? だって竜人って番い以外に───」
あからさまに言えないけど欲情しなくて勃たないって・・・・・・。
そう思っていたらファティマが眉間にシワを寄せて教えてくれた。
「いくら竜人が番い以外に手を出さないって言われてても絶対じゃないから。運命の番いなんて早々見つからないから。普通に婚姻するのもザラだから」
「・・・・・・はあ、そうなんだ?」
まあ確かにいつまでも結婚できなければいくら長生きって言っても絶滅しちゃうよね。そりゃあそうか。
「じゃあ今の王様は独身ってコト?」
「そう。でもさすがに他人の番いには手を出さないから安心して。ソコまでクズじゃないから」
僕の言葉に続けてユールングが不敬だろうって感じの言葉を発言しているのに周りの人達が何も言わないから、たぶん今までもそういうことがたくさんあったんだろうな。
まあ番いが出来れば番い一筋らしいから、早く見つかるといいね。自分にも周りの人達にも絶対イイコトだよね。
そんなやり取りを何とも形容しがたい顔で黙って見ていたササキ陛下がコホンと咳を一つして言った。
「───もういいだろうか? ひとまず移動しよう。・・・・・・始祖殿は───」
「もちろんついて行くに決まってるじゃん」
「・・・・・・ですよね。ではユリアンに案内させましょう。其方らも部屋で寛いでいてくれ。のちほど窺う」
「分かりました」
「ありがとうございます」
王様はそう言うと近衛騎士達を引き連れ、若干重い足取りで疲れたように去って行った。
辺りは俺達以外の人の気配が消えて静まり返った。
「・・・・・・ひとまずは安心、なのかな?」
俺がちょっと不安げに言うと、ファティマとユールングが頷いた。
「ひとまずどころでなく、安心していい」
「吸血鬼の始祖という立場の僕がいるからね。これで手を出してきたらよほどの無知かバカだな」
「そうなんだ? ファティマって凄いんだね」
「もっと褒めていいんだぞ!」
俺がフードの中から尊敬の眼差しで見つめると、ソレに気付いたファティマがドヤ顔をした。
今更ながら、俺にそっくりな顔でそういう表情をされるとなんともいえないむず痒さを覚えるなぁ。
俺はあんなにあざと可愛くないけど。
「桜雅は桜雅で可愛いから心配するな」
「え、あ、うん。・・・・・・ありがとう、ベオウルフ」
俺の気持ちを察したように言うベオウルフに照れながら応える。
ベオウルフの言葉って、嬉しくてムズムズしちゃうんだよな。
ともかく、これで一応安心して滞在出来そうだ。
王様そっちのけで、ファティマが思い出したようにそう言って俺の目の前に移動してきた。
ちなみにファティマは不老不死で陽光もへっちゃらだそうで、普通に顔を晒して陽光を浴びている。凄いな。
「プレゼント?」
「うん。はい、コレ。僕お手製の魔導具」
そう言ってパチッと右耳の耳朶に嵌められたのは、触ってみた感じシンプルなイヤーカフっぽい。
「え、ありがとう。でも何で? コレってどういうヤツ?」
嬉しいけど装飾品じゃなくて魔導具って言ったよね?
「ソレはね、桜雅が無意識に漏らしちゃう『魅了』のスキルをちょっと抑えてくれる魔導具だよ」
「・・・・・・チャーム? え、ソレって吸血鬼特有の? 俺、ダダ漏れ?」
言われなきゃ気付かなかった。じゃあ今までもあの騎士団でやらかしてた? 誰も何も言わないから。
───いや、たぶん吸血鬼のコトを分かってない俺のために黙ってたんだろう。
気を使わせちゃったんだな。
「慣れれば要らないんだけど、まあ、垂れ流しちゃってアチコチで誑し込んじゃって襲われても困るし」
そう言ってファティマがチラリと見たのはベオウルフと、何故か王様。
ベオウルフは、まあ、嫉妬的な意味だろうと分かるけど、何で王様?
「───絶対、手ぇ出す気満々だっただろう」
低い声で王様を威嚇するファティマにキョトンとする。
「え? だって竜人って番い以外に───」
あからさまに言えないけど欲情しなくて勃たないって・・・・・・。
そう思っていたらファティマが眉間にシワを寄せて教えてくれた。
「いくら竜人が番い以外に手を出さないって言われてても絶対じゃないから。運命の番いなんて早々見つからないから。普通に婚姻するのもザラだから」
「・・・・・・はあ、そうなんだ?」
まあ確かにいつまでも結婚できなければいくら長生きって言っても絶滅しちゃうよね。そりゃあそうか。
「じゃあ今の王様は独身ってコト?」
「そう。でもさすがに他人の番いには手を出さないから安心して。ソコまでクズじゃないから」
僕の言葉に続けてユールングが不敬だろうって感じの言葉を発言しているのに周りの人達が何も言わないから、たぶん今までもそういうことがたくさんあったんだろうな。
まあ番いが出来れば番い一筋らしいから、早く見つかるといいね。自分にも周りの人達にも絶対イイコトだよね。
そんなやり取りを何とも形容しがたい顔で黙って見ていたササキ陛下がコホンと咳を一つして言った。
「───もういいだろうか? ひとまず移動しよう。・・・・・・始祖殿は───」
「もちろんついて行くに決まってるじゃん」
「・・・・・・ですよね。ではユリアンに案内させましょう。其方らも部屋で寛いでいてくれ。のちほど窺う」
「分かりました」
「ありがとうございます」
王様はそう言うと近衛騎士達を引き連れ、若干重い足取りで疲れたように去って行った。
辺りは俺達以外の人の気配が消えて静まり返った。
「・・・・・・ひとまずは安心、なのかな?」
俺がちょっと不安げに言うと、ファティマとユールングが頷いた。
「ひとまずどころでなく、安心していい」
「吸血鬼の始祖という立場の僕がいるからね。これで手を出してきたらよほどの無知かバカだな」
「そうなんだ? ファティマって凄いんだね」
「もっと褒めていいんだぞ!」
俺がフードの中から尊敬の眼差しで見つめると、ソレに気付いたファティマがドヤ顔をした。
今更ながら、俺にそっくりな顔でそういう表情をされるとなんともいえないむず痒さを覚えるなぁ。
俺はあんなにあざと可愛くないけど。
「桜雅は桜雅で可愛いから心配するな」
「え、あ、うん。・・・・・・ありがとう、ベオウルフ」
俺の気持ちを察したように言うベオウルフに照れながら応える。
ベオウルフの言葉って、嬉しくてムズムズしちゃうんだよな。
ともかく、これで一応安心して滞在出来そうだ。
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やっぱり食べる気マンマンでしたかw
底の浅い王様(笑)
そして、それをわかってて、部下の前で全部言っちゃうファティマ最高❣️
ここまでクズ呼ばわりされたら。本当にクズでもなかなか実行にはうつせませんよね🤣
今までも一応同意の上で食べてたんでしょうが、今回ばかりはお味見出来ませんw
でも万が一そんなことになったら、ファティマはもちろんユールングもキレます。だってユールングの大好きなファティマと同じ顔ですから😅 (色々察し)
そのタグ良いですね(笑)
ジャンルとして成立しそうww
次はぜひ『やらかし王族』とタグに入れましょうw
うん、やらかしちゃう系王族ですね。
周囲が止めてくれると信じたいけど力業しそう。
こう見るとクリリンとか魔王陛下がかなりまともに見えるような(メーレさんの本質はオカンな薬師だし)
ん?王族の孕む側、猫被る率高いですね。
そして皆脱ぐか逃げるかしているw
王様、良い意味でわかる人だといいなぁ(希望)
でないと、騎士団のやらかした人のようにされてしまう……
やらかしそうだけど、この王様はまあ良い方のやらかし王族(何かそういう括りのタグが出来そうw)だと思います😄
たぶん桜雅の保護者(始祖)にビビってやりたいけど出来ない! みたいなw