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24 とりあえず言質を取ろう
しおりを挟む王城の中庭、というのか、拓けた一画にユールングは着陸? 着地? した。
ベオウルフと俺がその背から下りると、ぱあっと光って人型のユールングに戻った。
目の前で見ると本当に凄いな。どういう仕組みなんだろう? 物質量とか体積とかおかしいよね?
ちなみにファティマは瞬間移動的なことが出来るので、あとから来るそうだ。
確かに神出鬼没だった。
あれかな、吸血鬼って霧状になったり闇に溶け込んで、とかそういうイメージがあるな。コウモリはさすがに飛ぶ速さに限界あるだろうし。
俺も出来るかな?
今度ファティマに聞いてみよう。
そんなことをぼんやり考えていたら、中庭に集まっていた人の中にひときわ威厳のありそうな出で立ちのオジサンがいて、コッチにスタスタと歩いてきた。
後ろにぞろぞろといわゆる近衛騎士っぽい人達が続いてきたので、何となく察した。
彼がユールングが言ってた王様だ。
ユールングによく似た綺麗な角に、顔立ちもユールングをオジサンにしたらこうなんだろうなって感じのイケオジっていうヤツだ。
ただユールングみたいに胡散臭くはなくて、どっちかと言うと無邪気な感じ?
そんな王様がローブで全身すっぽり覆ったいかにも怪しげな俺を真っ直ぐ見て満面の笑みを浮かべた。
「よくぞ戻った! 仕事が早くて助かるぞ、ユリアン。そちらが・・・・・・?」
すでに隠しきれない好奇心で溢れている声音でユールングに尋ねてきた。ちなみに皆、ファミリーネームで呼んでたから忘れそうだけど、彼のファーストネームはユリアンだった。
一瞬、誰のこと? って思っちゃった。
「はい、ササキ陛下ご所望の吸血鬼の羽柴桜雅殿です。なお陽光の下では障りがありますので、今フードを脱がせることはお止め下さい」
「───おおっ! ならば陽光を遮った部屋を用意させておいたから、疾くそちらへ移動せよ!」
「───その前に少々お知らせがございます」
そう言って踵を返そうとする王様に待ったをかけるユールング。
うん、大事なことを言わないとね。ソレで言質を取っておかないとね!
「うん? 何だ?」
怪訝そうに立ち止まった王様が問いかけてきたので、ユールングはにっこり笑って告げる。
「実は羽柴殿には番いがございまして、この度愛でたく番われました。お相手は彼を保護したこちらの騎士団団長オルヴァ・ベオウルフ殿です」
「オルヴァ・ベオウルフと申します」
ベオウルフが頭を下げたので俺も倣ってお辞儀をする。
「ゆえに彼らは同室、行動もともにいたす許可をお願いいたします」
「───む、そうなのか? ・・・・・・番い同士ならば仕方あるまい。許可する。他にも何かあれば都度申すように。配慮しよう」
少し残念そうな声で、しかし番いというワードに無理強いはしないことにしたようだ。助かる。
「ありがとうございます。あともう一つ」
「何だ? まだ何かあるのか!?」
「はい。こちらもかなり重要でして・・・・・・羽柴殿の保護者的な方が、吸血鬼の始祖ファティマ殿なんです」
ユールングの言葉に王様以下、その場にいた俺達以外の人が固まった。
そんなに有名なんだ、ファティマって。
俺は知識がないからそこらへん全然分からないけど。
「・・・・・・は? 吸血鬼の、始祖殿・・・・・・?」
「そうだよ! 桜雅は僕の血を分けた半身なんだから、何かやらかしたら・・・・・・分かるよね?」
何の前触れもなく不意に現れたファティマに俺も王様達もビックリ。
いつの間にか俺の背後からバックハグをしていた。
ベオウルフとユールングは分かってたのか平然としている。
「───は、え? ファティマ殿の? え? ユリアン、お前いつの間にファティマ殿と子づく───むぐっ!?」
「───陛下、それ以上は慎んで下さい。そういうのではありませんからね?」
「ユールング、ナイス!」
最後まで言う前にユールングが王様の口を手で塞いで、俺に抱き付くファティマが親指をたててグッジョブした。
・・・・・・ソレ、不敬にならないの? 伯父・甥の関係だからいいの?
周りを見ると、皆平然としているのでコレが日常なのかもしれない。
※御無沙汰しております。
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