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15 桜雅の気持ちとベオウルフの想い
しおりを挟む「・・・えーと、その・・・不束者ですが、末永くよろしくお願いします?」
「───っふはっ!! 何だよその嫁入りするような台詞は・・・っ!」
気まずい空気の中、不意に桜雅が口を開いたかと思えば出て来た言葉がそれだった。
思わず噴き出したベオウルフは悪くないだろう。
「ええ・・・だって、ファティマも言ってたけど、俺って不老で滅多な事じゃ死なないらしいし・・・そうしたら、契約しちゃったベオウルフだってずっとこのままって事なんだろう? だから末永くって・・・」
むう・・・と口を尖らせて拗ねる桜雅が可愛くて思わずその唇に触れるだけの口付けをしたベオウルフ。
桜雅は驚いて目を瞠った。
「───っな、何・・・を・・・」
「桜雅が可愛いのが悪い。だから謝らないぞ」
「いや、そうじゃなくて、何で俺にキキキキスするの?!」
「・・・きす? 口付けの事か? そんなの、お前が好きだからに決まってる」
焦って真っ赤な桜雅とは対称的にいたって普通のベオウルフがキョトンとした。
───え、俺が好き?!
ベオウルフが、俺を?!
ボンッと音が聞こえそうになるほど真っ赤っかになった桜雅に、ベオウルフはおや?と思う。
「・・・・・・もしかして、口付け、初めてとか?」
「───た、たぶん? 憶えてないけど、純粋な好意は初めて、かも・・・なんかそういうの、気持ち悪いって感情しか無くて・・・」
───それはおそらく変態野郎から向けられる視線や感情だろうな・・・。
桜雅の容姿はとにかく美人だ。
傾国の・・・と言われても納得できる。
おそらく異常な感情を多くぶつけられたのだろう。
そして、私欲の為に殺されかけたところを始祖が救った。
本人に自覚が無い以上、俺が、俺達が護ってやらなくては。
だが少しでも自覚を持ってもらわなくては困る。
だからその手始めに、俺の気持ちを真っ直ぐにぶつけよう。
「俺はお前に一目惚れした。ファティマの頼みとか関係ない。お前が愛おしいから、ずっと側にいて護る。・・・お前に同じモノを返して欲しいとは言わないが、俺がそういう気持ちでいる事を知っていて欲しい」
真剣な表情でそう言ったベオウルフに、桜雅も真剣に向き合う。
「・・・俺、ベオウルフが好き、だけど。これが友人としての好きなのか恋愛の感情か分からないんだ。でも、うん、考えてみる。俺もベオウルフがいてくれて嬉しいから・・・時間かかるだろうけど、よろしく。・・・ありがとう」
それが今の桜雅の素直な気持ちなんだろう。
だがちゃんと考えてくれている。
「今はそれで良い。時間はたっぷりありそうだしな。さて、じゃあ寝るか!」
「・・・ベオウルフがベッド・・・」
「一緒で良いだろう。デカいんだし、どうせもう使ってるし」
「・・・じゃあ、お言葉に甘えて。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
そういって横になる桜雅。
一緒にと言ったのは俺なんだが・・・。
・・・ついさっき、愛の告白をした相手にこの無防備。
本当に心配なんだが。
数秒で熟睡した桜雅に呆れつつ、隣に潜って目を閉じるベオウルフ。
・・・・・・。
「って、寝れるか───!!」
思わず吠えた隣でスースーと寝息を立てる桜雅は全く起きる気配が無い。
───まーじーかー・・・・・・。
頭を抱えて暫く悶々とするベオウルフであった。
※遅くなりました。
・・・エロまで遠い・・・・・・。
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