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11 就職先は食堂(ただし夜勤) 1
しおりを挟む買ってきてくれた服は既製品だということで若干ダブつくが、ベオウルフのよりは全然マシなので構わない。
というか、自分の感覚では着られればなんでもいいやっていう感じで。
「ありがとう、着替え終わったよ」
そう言った桜雅に振り向くと、うん、ちゃんと着ている。
「良かった。それなりに着られるサイズだった」
「ちょっとブカブカだけどね。まあ、もう少し肉付きが良くなればぴったりになるんじゃ無いかな?」
うんうんと頷くトーイに苦笑する。
吸血鬼が太るって、どうやって?
・・・・・・いっぱい血を飲めってコトかなあ?
若干苦々しい顔をした桜雅に気付かずにベオウルフがローブを羽織らせてからフードを被せた。
「これから食堂に移動するけど、これで直接陽の光を浴びなければ大丈夫らしい。夕方で陽も弱いからな。でも昼間の陽光は浴びるなよ」
「・・・分かった」
「じゃあ移動しようか」
そういって歩き出したトーイ達の後を、フードを深く被り直してついていくのだった。
ベオウルフの部屋から食堂までは結構歩く。
血を貰ったからか、初めの時のように息切れや吐き気もない。
陽射しも弱いからか、ちりっとした感じはあるが、爛れるようなことも無い。
若干赤くなるくらいか。
食堂には夕飯時なのだろう、大勢の騎士で溢れかえっていた。
活気というか熱気というか・・・。
いや、それもあるが、多種多様な種族の人達がたくさん・・・。
思わずポカンとして入り口で立ち止まった。
「・・・・・・桜雅?」
「・・・あ、いえ・・・ちょっとびっくりして、すみません」
「まあ、こんなにむさ苦しいところ、驚くよね」
「いや、えーと、色んな方々がたくさん・・・」
「ああ、桜雅は記憶が無いものなあ。俺やトーイくらい(アルスは除外)しか見てないもんな。ココは獣人が多いが、森人や小人もいるぜ。さすがに吸血鬼はいないけど」
あ、やっぱり吸血鬼はいないんだ。
ちょっとガッカリ。
まあ、昼間は全然役に立たないもんな。
いや、夜も役に立たない・・・?
吸血鬼って何して生活してんの?
「オルヴァ団長、ついでだし、ココにいる人にだけでも紹介しちゃえば?」
「おお、そうだな。お前ら!! 注目!!」
「「「ウッス!! 団長!!」」」
野太い大声にビクッとする桜雅。
「ひえっ」
「・・・ゴメンね、驚かせて、煩いけど大丈夫だから」
ビクッとした桜雅の背中を擦って宥めてくれるトーイ。
うう、ありがとう。
「コイツが先日保護した吸血鬼だ。名を桜雅という。名前くらいしか記憶が無いので、皆そのつもりで接してまともな常識を教えてやってくれ!! 良いな? くれぐれも正確な情報をだぞ! 俺が後見人だからそのつもりでな!!」
「「「了解しました!」」」
ビシッと返事をする騎士達に再びビクッとする桜雅。
隣で再びトーイが宥めている。
「・・・顔は覚えるまでも無いが・・・桜雅、フード取って良いぞ」
「・・・・・・はぃ・・・」
若干気圧されて震えながらフードを下ろすと、そこら中から息を呑む音が聞こえた。
「ちなみに血は俺のしか受け付けないから、お前らが咬まれる心配は無い。以上! 飯に戻れ!」
「「「はい!」」」
大きい返事の後、ビシッと敬礼をしてからガタガタと座って食べ始めたり食器を片づけたりとめいめいに動き出す騎士達に何故か尊敬の眼差しを向けた桜雅。
「・・・・・・凄くきっちりしてますね。動きがカッコいい・・・」
「───ぶっ。そ、そうか? 規律はキチンと守らせているからな・・・うん」
「───何時もこうなら良いんですけどね・・・」
桜雅のズレた感想にベオウルフが噴き出してトーイはちょっと呆れていた。
「ともかく、俺達も夕飯食べよう。桜雅は・・・食べてみるか? 食えるのか分からないけど」
「うーん、普通に美味しそうな匂いは感じますけど、ベオウルフのをちょこっと貰って試してみてもいいですか?」
「そうですねえ。それが良いでしょう。でも具合が悪くなったらすぐに言って下さいね」
「はい、すみません」
「・・・それ、口癖かもしれないですけど、謝るんじゃ無くて、御礼の方が良いですよ」
そういってにこっと笑うトーイが可愛い・・・じゃなくて。
そうか、確かに言われるなら御礼の方が嬉しいかも。
「はい、ありがとうございます」
そう言えばトーイもベオウルフもにこっと笑ってくれた。
桜雅も心がほわんとした。
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