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9 ラッキースケベと彼シャツとベオウルフ
しおりを挟む倒れて数時間後、桜雅はぼんやりと目を覚ました。
目をキョロキョロさせると、カーテンはしっかりと閉じられていて時間は分からないがおそらく夜中と思われる。
耳を澄ませると水音がして、気になった桜雅はベッドから出ると、音のする方におもむろに歩き出した。
暗いのに辺りがはっきりと見えるのは吸血鬼の特性なのか・・・。
ただ単に『凄いな』くらいの感想で、未だに吸血鬼の実感がない。
「・・・なるようになるか・・・」
お腹いっぱいでひと眠りしたらスッキリしたようで、ちょっと開き直っている気がする。
その事にクスッと自嘲した。
「現金だな。でもお腹いっぱいでお布団で眠れたら俺でも生きていけそうだよね」
寝たら更に記憶が消えている気がするけど。
もう頭痛は無さそうだ。
夢で誰かに会った気がするけど、優しい声で『全部忘れて幸せになって』って言われて・・・目が覚めたらそれしか思い出せなかった。
でもたぶん、忘れた記憶は良い思い出じゃなかったんだろう。
そうすると、もしかして神様なのかなって思えた。
でももしそうなら、せめて一般常識くらいは覚えたままでいて欲しかったなと思う。
そんなことをつらつらと考えながら水音の源に来た。
・・・ああ、お風呂。
シャワーの音だったんだ。
───そういえば俺って倒れてからお風呂入ってないよね?
もしかして、臭い?!
なんて思ったら、なんかもうお風呂に入りたくて仕方がなかった。
だから思わず扉を開けたのは仕方がないと思うんだ。
「───あの、ベオウルフ・・・?」
「・・・・・・っ桜雅?!」
頭からシャワーを浴びていたベオウルフがハッとして振り向いた。
そして桜雅を見て目を見開く。
「───ななな、ちょっと、一回出て扉を閉めて!」
「・・・あ、ごめんなさい!!」
慌てて扉を締めてベッドの方に戻る桜雅。
え、いや何でこんなに心臓バクバクッて・・・。
同じ男じゃないか。
あれ?
でもトーイはここでは同性愛とか普通にあるって言ってなかったっけ?
じゃあ、俺が男の裸を見てドキドキしても普通のことなんだ?
・・・・・・じゃあ、良いのか?
それにしても・・・。
ベッドに座って、着ていたシャツをペロンと捲る。
そこに見えるのは真っ白くて頑張れば割れているかもってくらいの薄い腹と細い腰。
捲ってない方の手でぺたっと薄い腹を撫でる。
───筋肉あるのか?
その前に肉、あるのか?
思わずむにっと摘まむ・・・摘まめない。
「───コラ桜雅、ベッドで服を捲って意味深に腹を撫で回すんじゃない!」
「ひゃっ!」
急に上から降ってきた声にびくっとする。
心臓がまたバクバクだ。
「ベべべベオウルフ?! 急に声かけて脅かさないでよ?!」
「・・・お前がヘンなことしてるからだろ! だから襲われるって───ぁ、ヤベえ」
「・・・? ああ、襲われるからするなって言ってたっけ? だって、今は一人だと思ってたから・・・」
「・・・・・・やっぱり忘れてんのか? まあ、何にしても良かった」
ベオウルフがぽそっと呟いたがよく聞こえなかった。
「ああ、そうだ。俺もシャワー浴びても良いですか?」
「ああ、そうだな。構わないぜ。後、敬語は外して良いんだけど」
「・・・・・・でも命の恩人だし、年上っぽいし、団長さんって偉い人でしょう?」
「じゃあ他に誰もいないときは良いんじゃないか? どうせ名前呼び捨てだし」
「・・・・・・あ、確かに。ごめん、そうだね。じゃあお言葉に甘えて・・・あの、着がえってあるかな?」
十数分後、シャワーを浴びて出て来た桜雅はベオウルフの長袖シャツを羽織って、下はノーパンに半ズボン・・・桜雅が着ると太腿まで隠れる裾に萌え袖、7分丈ズボンになった。
ちなみにウエストは紐で頑張って縛っているが腰で辛うじて引っかかっている状態だ。
「───視覚の暴力・・・」
「?」
ベオウルフは目元を掌で覆って俯き、よく分かっていない桜雅はキョトンとしていた。
「まずはコイツの服を揃えねば」
次にやることが決まった瞬間だった。
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