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エウラ

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13 ノスフェラトゥの王 1

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僕はこの世界に存在する様々な種族の中でもっとも永い時を生きている吸血鬼ノスフェラトゥ始祖だ。

始祖である僕だけは不老不死の為、陽光も何も全く効かない。
この世界の創造主が生み出した最初の生命。
創造主がうっかり流した血から偶然生まれたのが僕。

見た目は20歳くらいの青年だ。

腰まである長い黒髪に蒼い瞳。
ちょっと童顔で、そう、ちょうど今しがたストーカーに刺されたにそっくり。


───たまたま、そう、ほんの気まぐれで覗いた『地球』という異世界。

始祖である為、能力も桁違いで創造主に次ぐ力があって、たまに違う世界を覗いては界渡りをして刺激を受けていたんだけど。

どうやら彼はウチの世界から偶然界渡りをした誰か、吸血鬼自分の血を引く地球人らしかった。
その血はかなり昔のなのだろう、今はほとんど無いようにみえる。
吸血鬼の特性・・・陽光に弱いとか吸血衝動なども見られなかった。

興味を惹かれて暫く観察していれば、バイト帰りに襲われて、今まさに死にかけている。

自分にそっくりな容姿の青年が、自分の流した血の海に浸りながら『血がもったいない』なんて考えていることに気付き、思わず笑ってしまった。

ああ、こんな死に際でも本能が叫ぶのか。
食糧がもったいないなんて。

・・・・・・実際は桜雅が思っていたのは献血の方だったのだが、曲解した吸血鬼の始祖は今まさに死の淵にいる桜雅に告げた。

「僕の血をあげるから、吸血鬼ノスフェラトゥになって僕と永遠を生きよう。君なら絶対、吸血鬼になれる。だって僕の血をあげるんだもの。ねぇ、僕に瓜二つの桜雅。僕の半身。これは運命だよ。必然だ」


だから、僕には出来ないことをたくさん経験して、僕を楽しませて?


体が変容するまで、暫くおやすみ。
大丈夫、僕がちゃんとの世界に連れ還ってあげるから。


桜雅を刺したストーカーが何か叫んでいるが、構わず放置した。
どうせ僕の事なんて、この地球では絵空事だ。
誰も信じない。

・・・・・・ああ、そういえばUMAっていうのに当て嵌まるのかな?

クスッと笑って桜雅を抱えると、唖然としているその男を見返すこともなくそのまま界渡りをして戻った。



「・・・・・・さて、連れ還ったは良いが、どうしようか?」

そういえば桜雅も僕も血塗れだった。

洗浄魔法クリーンで綺麗にして・・・・・・ああ、生活魔法の一種の洗浄魔法は体や物を清潔に綺麗にするモノだから大丈夫だよ。
ヤバいのは聖魔法の浄化魔法ピュリフィケーションだからね。

アレは僕や桜雅は死なないけど、そこそこ低位の魔族系は浄化されて消えるから。
地味に痛いし、陽光浴びるのと変わらないから気を付けてね。

・・・・・・え?
誰に話してるって?
独り言だけど、地球では寝ているうちに学習する睡眠学習ってのがあるんでしょ?
ソレだよ。

桜雅が変容中に刷り込んでおかないとね。
でも僕も世間一般の常識なんて知らないから、取りあえず記憶は真っ新にして、と。

ああでも、名前と今の歳くらいは憶えていても良いよね、ヘンな名前つけられたらイヤだし。
僕が桜雅の名前、気に入ってるから。


取りあえず、ココの騎士団は優秀だし色んな種族がいるから、きっと馴染んで大事にして貰えるはず。
ココで御世話になって常識を身につけてね。

「───って思って預けたのに、何で?」

たまたま?
いいや、必然的に桜雅の好きなタイプをあてがったのに。

「・・・・・・何で桜雅が傷付いてるのかな? ねぇ、何で?」
「───ぅ・・・、や・・・・・・その・・・ッ」

お前が傷付けた。

アッチの世界で傷付いたから、コッチでは幸せになって欲しくて吸血鬼ノスフェラトゥにして連れ還って来たのに。

「ねぇ、何故、僕の半身を傷付けたの? 桜雅は吸血鬼になりたてで、弱っていたのに。護って欲しくてココに連れて来たのに、ねぇ何で? ・・・・・・応えろよ」
「ぅぐっ・・・っ」

感情ののらない顔で淡々と話す。
襟元をつかみ上げると苦しそうに呻いた。
僕より大きくてゴツいけど、片手で持ち上げられるよ。

「す、すみませ・・・っ俺が、早とちり・・・して」
「だからって許されると思ってんの?」

思わず眉を寄せて力を込めた瞬間───。

「・・・・・・ファティマ?」

食堂からの帰り道、微かな気配を感じてやって来た部屋で桜雅達が見たものは、片手で掴み上げられたアルス副団長と、アルスを掴み上げている桜雅に瓜二つの吸血鬼ノスフェラトゥだった。








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