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2 俺は・・・何ですか?
しおりを挟む寝ぼけまなこのぽーっとした頭で考えても何にも浮かばない。
でも確か、ベンチで力尽きた気はする。
・・・じゃあこの人、もしかして俺を助けて運んでくれたのかな?
───そういえば、あんなに辛くて苦しかった飢餓感が消えてる。
寝てる間に何か食べさせて貰ったのかなあ?
全っ然記憶にないんだけど・・・?
「・・・・・・」
「・・・・・・おはよう、ございます?」
ぽけっと考え事をしていたら、いつの間にか隣のイケメンが綺麗なアイスブルーの切れ長の瞳を開いていた。
暗くてよく分からないけど、銀髪・・・かな。
精悍な顔つきの美丈夫さんだった。
「・・・・・・おはよう。よく眠れたようだな、良かった」
そういってにっこり笑って、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「あの、もしかして助けてくれました?」
「・・・ああ、広場のベンチで倒れていたから連れ帰ってきたんだ。ちなみにここは騎士団の宿舎の俺の部屋だ」
「・・・・・・騎士団?」
横になったまま、首はかしげられないので目をぱちくり。
お相手のイケメンさんもぱちくり。
「・・・知らない? この街どころかそこら中で知らないヤツはいないと思うけど・・・」
「───あ、の・・・俺、自分の名前と歳くらいしか覚えて無くて、その・・・俺って、何なんですか?」
「───え・・・」
戸惑いつつもそう自己申告すれば、ちょっと言葉を失ったイケメンさん。
・・・どうしよう。
困らせちゃった?
騎士団って、お巡りさんのようなこと?
ん?
お巡りさんって、何・・・?
その時ずきりと頭が痛んだ。
思わず手で頭を抱える。
「っおい、痛むのか? 大丈夫か?!」
「・・・・・・っぃたいっ・・・何で・・・」
痛みで涙目になった俺を見て、イケメンさんは自分の胸に俺の頭を抱き込んで、つむじにキスを落としながら「大丈夫」と繰り返し言って頭を擦ってくれた。
徐々に痛みが和らいで、痛みが消えると同時に、さっきの言葉を忘れていた。
「・・・・・・落ち着いたか?」
「は、い。あり、がとう、ございます」
頭を抱える腕を緩めてくれたので、ぷはっと息を吸って離れた。
「ええと、順番がおかしくなったが、俺はここの騎士団の団長でオルヴァ・ベオウルフと言う。呼ぶなら名前のベオウルフで良い」
「ご丁寧にありがとうございます。羽柴桜雅と言います。桜雅と呼んで下さい。歳は19歳だと思います。たぶん・・・・・・そう記憶してるので・・・」
年齢はちょっと自信がない。
そう言ったが、気にせず笑ってくれた。
「他は覚えて無いのか?」
「うーん・・・なんとなーく、一度死んでるような、死にかけたような・・・? で、気が付いたら外れの林で倒れてて・・・街中を目指していたらもの凄くお腹が空いていて、限界が来て、そこで倒れたんだと思いますが・・・」
「自分が何者か分からないと?」
「はい。なので誰かに聞こうと思って歩いてきました」
そう言うと、ベオウルフは渋い顔になって少し黙った。
「───おそらくだが、いや、もうすでに体験済みだが・・・」
「───? 体験済み?」
・・・ってなんぞ?
「君は吸血鬼だよ」
「───は?」
吸血鬼って・・・・・・吸血鬼ぃ───?!
「・・・・・・え、じゃあもしかしてもしかしなくても、俺の空腹って・・・まさか・・・」
「あ、そこは本能で分かったんだ? うん、そう。俺の血を飲んで満足したから」
にっこり爽やかに笑っているけど、それって大丈夫なの?!
いやいや大丈夫じゃ無いのは俺の方!!
え、俺、この人に無意識にガブッといっちゃったわけ?!
命の恩人に?!
心の声ダダ漏れで顔をサーッと青ざめさせた俺に気付いて慌てて言い募るベオウルフ。
「誤解させた、すまん!! ガブッとしてないから! こう、指先にちょっと傷付けて吸わせただけだから!」
そういって右手親指を見せてくれた。
でも傷なんて無いけど?
「治癒魔法やポーションですぐ治るし、俺は自己再生能力も高いからすぐに塞がる。・・・ほら」
俺の疑問に応えるように指先を尖った爪で切るとぷっくり赤くて美味しそうな血が・・・・・・。
「───あ、あー、すまん」
「勿体ない・・・良い匂い・・・はむっ」
匂いに釣られて思わずベオウルフの指を口に含んでちうちう吸って、舐めて・・・。
ああ、なんて美味しい・・・・・・。
こんなの初めて・・・。
「───うあ、やば・・・っ。起きてるときのこれは・・・・・・えっろ・・・視覚の暴力・・・・・・堪えろ、俺、堪えろぉ・・・!!」
この時の俺は、目が潤んで、しかも吸血鬼特有の興奮状態になっていて蒼い瞳がルビーのように紅くなっていた。
しかも相当美味かったらしくて陶酔して酩酊状態。
トロンとした色気ダダ漏れだった・・・・・・らしい。
自分じゃ全っ然分からないけど。
指の傷はあっと言う間に塞がり、お腹もいっぱいなのに酩酊している俺は、出ない指を何時までも咥えてちうちう吸っていた。
ベオウルフは顔を赤くして何とか堪えていたが、そろそろ限界が・・・。
だがここで手を振り払う勇気は無い。
ヤバいヤバい、どうしよう!
───と焦っていたとき。
「おおい団長───! 起きてるか───い?!」
バタンとけたたましい音がして扉が開き、ベオウルフと桜雅は同時にハッと我に返った。
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