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それは愛しい日々へと(side光の精霊王)
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それは、我らが神のお言葉から始まった。
『禁呪の召喚を行った馬鹿どものせいで、異世界の人間が魂のみでこちらに来た』
『なんと?! それでその者は?』
『取り急ぎ肉体を構築し加護を与えたが、しっかりと馴染む前に召喚先に行ってしまったのだよ。地上に降りてしまったので、私は手が出せない。そこでお前達に頼みたい』
お前達、とは我とここにいる闇の精霊王だろう。二人見合わせて、頷く。
『何なりと、我らが神よ』
『助かる。我が加護と、【精霊王の愛し子】を授けた。今は使えぬだろうが、体が馴染めばお前達を視ることが出来るはず。その時は私を呼び出しておくれ』
『御意』
神はホッとしたように微笑んで神界へと帰って行かれた。
残された我らは神の言葉に従い、急いで人族の国へ向かった。
そこで見たモノはーーー。
隷属の首輪を嵌められた、意識のない子供で。
窓のない、離れの塔の地下の牢獄の、冷たい石造りの床に投げ出されて。
ピクリともにしないで横たわっていた。
『何という・・・』
『酷いね。それに首輪のせいで、魂が体に馴染みきる前で止まってしまっている。これでは私達を視られないでしょう』
歯痒い思いで子供を見つめる。
『せめて、近くで寄り添ってあげよう』
そう二人で誓い、見守ることになった---のだが。
それが悲劇の始まりだったのだ。
3日後、意識が戻ったその子は無表情で無感情で、ただ虚空を見つめていた。
我らが移動すると、気配を感じるのか目線が移動するが、しかしやはり見えないのだろう。
視線が交わることはなかった。
『どうしようか?光の』
『どうしたもんかな?闇の』
忌々しいことに、我らは首輪に触れられても破壊することは出来なかった。
首輪が子供の魔力を使っているのだろう。その魔力量が凄まじく、我らの力を上回っていて破壊できぬ。
この子の魔力量を上回る者など神くらいしか。だがその神を呼ぶための加護が発動しない。
八方塞がりであった。
そうして戦争に駆り出されたり魔物退治に行かされたりと、散々な扱いをされた。
我ら精霊は必要ないが、人間はなにかしら食べねば死ぬ。
しかしその子は何故か食べずとも、更には傷を負おうとも死なず。
ソレを知った奴らが更に子供を酷使する姿に見ていられなくなった。
精霊の森もいつしか精霊が離れ、魔素のバランスが崩れて魔物が増えていった。
そんな日々に子供は壊れていった。
やがて300年程経った頃だった。
転機が訪れた。
人族の兵士が一人、世話をしに現れたのだ。
そしてあろうことか、その子に話しかけた。
『リッカ』と。
どうやら同じ世界で知り合いだったらしいその兵士は転生者らしく、雨のたびに向こうの話をリッカに聞かせた。
我らが知り得なかったその子の名前をことあるごとに呼んで、愛しそうに笑っていた。
リッカは静かに心を取り戻していった。
このまま穏やかに・・・・・・。
そう願っていた。
あの運命の日。
あの慟哭を我らは忘れられない。
---あれから200年。
心を閉ざしたリッカは、淡々と首輪の誓約通りに国であったソコを、森を、守り続けていた。
そして、二度目の奇跡が起きる。
神が少なからず関わったであろうソレを、確実にモノにしたあの兵士の生まれ変わりは、今のリッカを上回る魔力で首輪を破壊し、リッカに自由をもたらした。
ここからは我らの役目。
リッカに名をもらい、許しを得て、神を呼び寄せた。
・・・・・・神の威厳が、少々、いやかなり・・・うむ。我らは何も見てない聞いてない。
それにしても、我らはこの姿のままがよいのだろうか?
我らにも威厳というモノが・・・、いや、ナンデモナイ。
だから威圧するな、龍王弟よ。
『禁呪の召喚を行った馬鹿どものせいで、異世界の人間が魂のみでこちらに来た』
『なんと?! それでその者は?』
『取り急ぎ肉体を構築し加護を与えたが、しっかりと馴染む前に召喚先に行ってしまったのだよ。地上に降りてしまったので、私は手が出せない。そこでお前達に頼みたい』
お前達、とは我とここにいる闇の精霊王だろう。二人見合わせて、頷く。
『何なりと、我らが神よ』
『助かる。我が加護と、【精霊王の愛し子】を授けた。今は使えぬだろうが、体が馴染めばお前達を視ることが出来るはず。その時は私を呼び出しておくれ』
『御意』
神はホッとしたように微笑んで神界へと帰って行かれた。
残された我らは神の言葉に従い、急いで人族の国へ向かった。
そこで見たモノはーーー。
隷属の首輪を嵌められた、意識のない子供で。
窓のない、離れの塔の地下の牢獄の、冷たい石造りの床に投げ出されて。
ピクリともにしないで横たわっていた。
『何という・・・』
『酷いね。それに首輪のせいで、魂が体に馴染みきる前で止まってしまっている。これでは私達を視られないでしょう』
歯痒い思いで子供を見つめる。
『せめて、近くで寄り添ってあげよう』
そう二人で誓い、見守ることになった---のだが。
それが悲劇の始まりだったのだ。
3日後、意識が戻ったその子は無表情で無感情で、ただ虚空を見つめていた。
我らが移動すると、気配を感じるのか目線が移動するが、しかしやはり見えないのだろう。
視線が交わることはなかった。
『どうしようか?光の』
『どうしたもんかな?闇の』
忌々しいことに、我らは首輪に触れられても破壊することは出来なかった。
首輪が子供の魔力を使っているのだろう。その魔力量が凄まじく、我らの力を上回っていて破壊できぬ。
この子の魔力量を上回る者など神くらいしか。だがその神を呼ぶための加護が発動しない。
八方塞がりであった。
そうして戦争に駆り出されたり魔物退治に行かされたりと、散々な扱いをされた。
我ら精霊は必要ないが、人間はなにかしら食べねば死ぬ。
しかしその子は何故か食べずとも、更には傷を負おうとも死なず。
ソレを知った奴らが更に子供を酷使する姿に見ていられなくなった。
精霊の森もいつしか精霊が離れ、魔素のバランスが崩れて魔物が増えていった。
そんな日々に子供は壊れていった。
やがて300年程経った頃だった。
転機が訪れた。
人族の兵士が一人、世話をしに現れたのだ。
そしてあろうことか、その子に話しかけた。
『リッカ』と。
どうやら同じ世界で知り合いだったらしいその兵士は転生者らしく、雨のたびに向こうの話をリッカに聞かせた。
我らが知り得なかったその子の名前をことあるごとに呼んで、愛しそうに笑っていた。
リッカは静かに心を取り戻していった。
このまま穏やかに・・・・・・。
そう願っていた。
あの運命の日。
あの慟哭を我らは忘れられない。
---あれから200年。
心を閉ざしたリッカは、淡々と首輪の誓約通りに国であったソコを、森を、守り続けていた。
そして、二度目の奇跡が起きる。
神が少なからず関わったであろうソレを、確実にモノにしたあの兵士の生まれ変わりは、今のリッカを上回る魔力で首輪を破壊し、リッカに自由をもたらした。
ここからは我らの役目。
リッカに名をもらい、許しを得て、神を呼び寄せた。
・・・・・・神の威厳が、少々、いやかなり・・・うむ。我らは何も見てない聞いてない。
それにしても、我らはこの姿のままがよいのだろうか?
我らにも威厳というモノが・・・、いや、ナンデモナイ。
だから威圧するな、龍王弟よ。
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