【完結】雨を待つ隠れ家

エウラ

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終わりよければ全てよし(side神様?)

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そもそも神様に会えるの?

そう思った僕は可笑しくないと思う。
だって、会えるのならとっくに会ってる。
振り返りたくないけど、あの日々の中でどれだけ願ったことか。

でも一度としてそんな出来事は起こらなかった。
召喚されたあの時だけだ。
それもろくな説明もなく、後は知っての通り。

『会えます。今回は』

猫精霊さんの黒い方が言うには、普通は神は地上に関与しないが、今回の件はイレギュラーなのと、異世界人の僕に多大な迷惑をかけたので、お詫びも兼ねているそうだ。

「じゃあ、何で直ぐに会えなかったんだ?」

そうだよね? と、僕の代わりにアッシュが聞いてくれた。
それに答えたのは金色の猫精霊さん。
 
『リッカは我らを感じ取れぬうちに隷属の首輪で縛られてしまい、加護が働かなくなっていた。その加護が、我ら『精霊王の愛し子』で、その加護を持つ者は我らを通じて神と会うことが出来るのだ』

え、猫ちゃん達はただの精霊じゃなくて、精霊王?
こんなに可愛いもふもふなのに?!

『リッカ、何となく言いたいことは分かりますが、単にこの姿はリッカの思考から形作ったもので、本来の姿は人型ですよ』

もふもふ大好きなのは、イヤというほど分かりました。
と、若干遠い目をした。
・・・ごめんなさい。
反省はするが後悔はしない。

『さて、今更だが我らに名を与えて欲しい。今は仮の契約で、神と会うには正式な契約が必要だ。我は光の精霊王』
『私は闇の精霊王です。でも怖い存在じゃないですよ。夜の安らぎを与えたり、ね』
「・・・分かりました。えっと、光の精霊王さんは《ソル》で、闇の精霊王さんは《ルネ》でどうでしょう」

告げた直後、魔法陣が現れ、契約が成されたのが分かった。
何て言うか、心が繋がった感じがする。

アッシュがほっとした瞬間---。


《うわ~ん!! やっと会えたよゴメンねこの世界の馬鹿が馬鹿やらかして長い間助けられなくて---!!》

ノンブレスで聞こえた声に固まったのは許して欲しい。
何の前ぶれもなく目の前に推定神様(だよね?)が現れたんだもの。

ビックリした---!!

だけどアッシュ、気持ちは分かるけど、その殺気と剣は仕舞おうね?
僕は大丈夫だから。

《ごめんなさいごめんなさい! とにかくあの時は時間がなくて、焦ってたから、まさか肉体があんなになるとは思わなくて》

んん?・・・な、何か変な言葉を聞いたような。
あんなって、何だ?

「・・・詳しく」
《ひー--怖い! あのですね、アバターを基に構築してる時に焦ってですね、その、神力を込めすぎたみたいで》
「で?」
《現人神になっちゃった!》

てへぺろと言いそうな顔で言い切った神様に、その場にいた人は全員唖然とし、精霊王さんはorzの体制になった。
イヤ、元から四足だから分かり辛いが。

要するに、不老長寿になってるとのこと。
神にも一応寿命はあり、しかし怪我も負う事がなく、病気にもならないので、悪神になって他の神に滅ぼされない限りは大抵死なないそう。

とはいえ、ホンモノよりは寿命は短いので、ちゃんと寿命を迎えたら死ねるよ、と。

《でも、ゴメンね。死んだ後の輪廻の輪はこの世界になる。すでに体がこちらの人だから》

「それは仕方ないです。ただ、あの、一つ聞きたいんですけど」
《何でしょう?》
「あのですね、アッシュと番らしいんですが、け、結婚?とかしたら、寿命ってどういう風になるんです? いくら龍人が長生きっていっても、さすがに僕と同じでは、ないですよ、ね?」

そうしたら、また何百年か千年か、その先に僕は独りぼっち・・・?

《大丈夫です。リッカさん。番うときには寿命が長い方へすり合わせるんです。番に出会ったらその人しか愛せません。まあ、相手がすでに結婚していたり亡くなっていたら番システムからは外れるようになってますけど》

じゃないと、不幸になっちゃいますからねと。番ったら死ぬときも一緒になるんだって。
何てご都合主義。
じゃあ、ずっと一緒?

「ああ、一緒だ。ずっと側にいる。ずっとそう願って生きてきた」


僕は、もう、独りぼっちじゃない。
何て幸せ何だろう。

もう、雨を待つこともない。

晴れの日も
 
雪の日も

嵐の日だって

大好きな人がいる。

あなたがいるだけで、心が温かい。

「不束者ですが、末永くよろしくお願い致します」
「こちらこそ、任せろ」

俺の愛は重いから覚悟しろよ。
その爽やかな笑顔に、受けて立つよ、と言った僕の顔はちゃんと笑っていただろうか。

その日、晴れてアッシュと番った僕の涙は、嬉し涙で。

これから先も涙はきっと、嬉しい時に溢れるんだ。
そう思った。
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