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雨を待つ隠れ家 中(sideリッカ)
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たった3日。
アッシュの側を離れた時間。
僕はかけがえのないモノを喪った。
『精霊の森』は見る影もなく、魔素に覆われた。
出来うる限りの力でもって動物や獣人達を逃がし、3日経って、何とか広範囲の浄化魔法で森を綺麗にし、勝手に檻の中に転移されてみれば・・・。
檻の側で、血塗れで、うつ伏せて、コッチに手を伸ばしたままの、息絶えたアッシュがいた。
見ると、後ろに血の跡が付いていて。
傷を負ったまま、必死に辿り着いたのは一目瞭然で。
何であと少し早く戻らなかったのかな?
そうだよ、戦は兵士が犠牲になる。
何で忘れてた?
だっていつも僕が独りで戦って、周りにほかの兵士は敵だけだった。
何百年もずっと。
気付くわけない。
呑気に森を綺麗にしてた時に、アッシュは痛い思いをしていた。
なのに、僕に会いに来てくれた。
助からなかったとしても、一目死に際に会えたんじゃないかって。
ねぇ、神様。
何でこの世界は僕の大切なモノを奪うの。
僕が悪いの?
全部、僕のせい?
ボクノ、セイ・・・?
誰も『リッカ』を知らない。
この世界に、もうその名を呼んでくれる人はいないから。
『リッカ』はこの時から『リッカ』じゃなくなった。
『リッカ』の心は『アッシュ』だけのモノに。心が壊れて、ただの奴隷になった。
国が滅んでも首輪は外れない。
王の血筋で誓約されてる。
その血が絶えるまでずっと。
王の命令の誓約は消えたようだけど、このままこの森の奥深く、この檻の中でずっと、この森だけ護って・・・。
いつか、精霊で溢れる森に戻っても、死なない僕は、独り・・・。
だった筈、なのに。
『リッカ』
優しい声が忘れた筈の僕の名前を呼ぶ。
ソレはアッシュに捧げた。
もう呼ぶ人はいない。
なのに。
『アッシュ』
目の前にアッシュがいる。
FFOのアバターのアッシュが。
え?
何で?
平々凡々な兵士で、頼りなさげなアッシュは、あの日死んでしまって。
FFOでフレンドだった龍人のアッシュにももう逢えなくて。
・・・ああ、夢だ。
幸せな夢。
こんな夢をずっと望んでいたんだ。
もう叶うことのない、幸せで、優しい夢・・・。
夢の中で目を閉じて夢を見る・・・。
なんて幸せな夢か。
死んでもいい。
死ねないけど。
『オイコラ、寝るな。夢じゃないぞ、リッカ』
その声に目を瞬いた。
擦った。
でも消えない。
現実じゃない。
いるわけない。
『やっぱり夢だな、消えな--』
『違う! いい加減夢から離れろ! 現実だ』
え?
・・・そういえば、なんか自分の声が幼児のそれじゃない。
低い。
強いて言えばFFOの頃の。
ん?
髪が長い?
あれ、手足も長い。
デカい。
『、っ』
咄嗟に首を触る。
ない。
首輪が、ない。
え、夢じゃないの?
そんな気持ちでアッシュを見上げる。
『ああ、お前は自由だ』
にっこり笑った顔はFFOでは見慣れた顔で、でも、あの日死んでしまったアッシュの顔でもあって。
多分、僕の顔は無表情のまま、滂沱の涙で濡れている気がするけど、気にしたらダメだ。
大人なのにえぐえぐ言ってるけど。
なんか目の端に獣人さんらしき人が生温かい目で見てるのが見えるけど。
全部気にしないったら気にしないんだ!
たとえ夢だったとしても、こんな夢なら永遠に見ていられる・・・。
アッシュの側を離れた時間。
僕はかけがえのないモノを喪った。
『精霊の森』は見る影もなく、魔素に覆われた。
出来うる限りの力でもって動物や獣人達を逃がし、3日経って、何とか広範囲の浄化魔法で森を綺麗にし、勝手に檻の中に転移されてみれば・・・。
檻の側で、血塗れで、うつ伏せて、コッチに手を伸ばしたままの、息絶えたアッシュがいた。
見ると、後ろに血の跡が付いていて。
傷を負ったまま、必死に辿り着いたのは一目瞭然で。
何であと少し早く戻らなかったのかな?
そうだよ、戦は兵士が犠牲になる。
何で忘れてた?
だっていつも僕が独りで戦って、周りにほかの兵士は敵だけだった。
何百年もずっと。
気付くわけない。
呑気に森を綺麗にしてた時に、アッシュは痛い思いをしていた。
なのに、僕に会いに来てくれた。
助からなかったとしても、一目死に際に会えたんじゃないかって。
ねぇ、神様。
何でこの世界は僕の大切なモノを奪うの。
僕が悪いの?
全部、僕のせい?
ボクノ、セイ・・・?
誰も『リッカ』を知らない。
この世界に、もうその名を呼んでくれる人はいないから。
『リッカ』はこの時から『リッカ』じゃなくなった。
『リッカ』の心は『アッシュ』だけのモノに。心が壊れて、ただの奴隷になった。
国が滅んでも首輪は外れない。
王の血筋で誓約されてる。
その血が絶えるまでずっと。
王の命令の誓約は消えたようだけど、このままこの森の奥深く、この檻の中でずっと、この森だけ護って・・・。
いつか、精霊で溢れる森に戻っても、死なない僕は、独り・・・。
だった筈、なのに。
『リッカ』
優しい声が忘れた筈の僕の名前を呼ぶ。
ソレはアッシュに捧げた。
もう呼ぶ人はいない。
なのに。
『アッシュ』
目の前にアッシュがいる。
FFOのアバターのアッシュが。
え?
何で?
平々凡々な兵士で、頼りなさげなアッシュは、あの日死んでしまって。
FFOでフレンドだった龍人のアッシュにももう逢えなくて。
・・・ああ、夢だ。
幸せな夢。
こんな夢をずっと望んでいたんだ。
もう叶うことのない、幸せで、優しい夢・・・。
夢の中で目を閉じて夢を見る・・・。
なんて幸せな夢か。
死んでもいい。
死ねないけど。
『オイコラ、寝るな。夢じゃないぞ、リッカ』
その声に目を瞬いた。
擦った。
でも消えない。
現実じゃない。
いるわけない。
『やっぱり夢だな、消えな--』
『違う! いい加減夢から離れろ! 現実だ』
え?
・・・そういえば、なんか自分の声が幼児のそれじゃない。
低い。
強いて言えばFFOの頃の。
ん?
髪が長い?
あれ、手足も長い。
デカい。
『、っ』
咄嗟に首を触る。
ない。
首輪が、ない。
え、夢じゃないの?
そんな気持ちでアッシュを見上げる。
『ああ、お前は自由だ』
にっこり笑った顔はFFOでは見慣れた顔で、でも、あの日死んでしまったアッシュの顔でもあって。
多分、僕の顔は無表情のまま、滂沱の涙で濡れている気がするけど、気にしたらダメだ。
大人なのにえぐえぐ言ってるけど。
なんか目の端に獣人さんらしき人が生温かい目で見てるのが見えるけど。
全部気にしないったら気にしないんだ!
たとえ夢だったとしても、こんな夢なら永遠に見ていられる・・・。
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