優しい庭師の見る夢は

エウラ

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81 邸の探検という名のお散歩 1

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次の朝、スッキリ目覚めた樹希。

いつも朝は弱い樹希だが早めに寝たのと昨夜のの言葉を思い出してワクワクの気持ちが勝ったらしい。

「おはようシュルツ! ねね、今日はお邸の探検するんだよね?」
「ああ、昨日父上達に話しておいたから好きに出歩いていいそうだ」
「やった!」
「でも朝御飯のあと、少し休憩してからだぞ」
「はーい!」

見るからにワクワクの樹希を着替えさせて食堂に抱えていくシュルツ。
樹希は探検の方に気が向いていてシュルツにされるがままだ。

「おはよう、イツキ」
「おはようございます!」
「今日は探検するんだって?」
「そうなんです! 楽しみ!」

にぱっという言葉が当てはまるような笑顔で楽しそうな気持ちを隠さない樹希に、公爵家の皆が微笑ましそうに見つめていた。

そそくさとテーブルに着く(といっても安定のシュルツの膝の上)と、いつものようにあーんで給餌して貰い、足早に(といってもシュルツに縦抱っこで)食堂をあとにした。

部屋で紅茶を飲んで一休みしながらも落ち着かない様子の樹希に苦笑しながら、シュルツは樹希に一枚のカードを手渡した。

「なあに?」
「チェックシートだな」
「・・・・・・何の?」

反射的に受け取ってからマジマジと見ると、邸の見取り図みたいな図面が書いてある。

「この邸の色々な場所を探検したらチェックを入れて貰うんだ。例えばさっきの食堂に行ったら使用人の誰かがここに印を押してくれるように父達が調えてくれた」
「───おお! スタンプラリー!」
「スタンプラリー?」
「イベントとかでやるアレだね! ハンコをいくつ貰えたら○○プレゼントって感じのヤツだよ。うわあ、これだけでもテンション上がる!」

シュルツが聞き慣れない言葉にキョトンとしたのでザッと教えてあげた。
すると納得したようでポンと手を打った。

「それならプレゼントも用意して貰おう」
「えっ? いいの? 嬉しいけど大変じゃない?」
「こういうのはご褒美があった方が俄然ヤル気が出るだろう? 彼等なら喜んでやるさ。それに影警護ヌル達もいるしな。ちょっとここで待っててくれ」

そう言うとシュルツは部屋を出て行った。
側にはフェアたんがいるので寂しくはない。それに自分が言いだしたこととはいえ、何か貰えるなんて、嬉しすぎる。

「でも僕は別にクッキー一枚でも嬉しいんだけどな」

前世ではいつも遠巻きにされてて誰かに贈るとか貰うなんてなかったし。

「ここではお腹いっぱいなくらい貰ってばかりで申し訳なくて・・・・・・。何ならぎゅってしてくれるだけで幸せなんだけどなぁ」

フェアたんの頭に顎をのせてぎゅっと抱きしめながら呟く樹希だった。
それを警護していた影達がしっかり聞いていてシュルツ達に連絡しているとは知らずに、今度はフェアたんのお腹に顔を埋めてぐりぐり。

フェアたんはそんな樹希の頭をポンポンと撫でるのだった。




※ご無沙汰してます。
これに限らず、たまにアチコチの更新をします(作者の希望)。更新頻度は低いですがお待ち頂けると嬉しいです。

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