優しい庭師の見る夢は

エウラ

文字の大きさ
上 下
78 / 89

77 シュヴァルツ公爵家騎士団 4

しおりを挟む

---それからおよそ30分後。

多くの騎士達が死屍累々たる有様だった。
闘技場は倒れた騎士達で埋め尽くされていた。

数人、何とか立っているが、満身創痍の状態。
それを武器も持たずに両手でくいくいと呼ぶように動かして挑発するウサギのぬいぐるみ達。

「・・・・・・カオス」

シュルツに指示されて何度か治癒魔法を使ったが、さすがに傷は癒えてもこうも力量に差があると挫けちゃうでしょ、と内心思う樹希。

『かかってこいや---!!』
「「「ウオオオオ---!!」」」

最後の力を振り絞って突撃するも、スパコーンッ!!という小気味良い音で場外に吹き飛ばされる騎士達・・・。

それで漸く決着が着いたようである。

「・・・・・・うえぇ、痛そう・・・」

思わず樹希が顔を顰めると、シュルツが気付いて頭を撫ぜた。

これで終わりだから、皆に治癒魔法をかけてくれるか?」
「---うん、分かった!」

樹希はこれでやっと痛そうなのから解放されると、張り切って治癒魔法をかけた。
しかし傷は直っても砕けた精神は元に戻らず。
騎士達は暫くその場で倒れたままだった。

だが樹希は気が抜けた上にお菓子でお腹が膨れて、更にはちょうど午睡に良い時間になったため、うとうと・・・。

「イツキ、眠ってて良いぞ」
「・・・・・・ぅん・・・・・・じゃあ・・・おやすみ、なさい・・・」

すうっと眠りに落ちたイツキに更に眠りの魔法をかけてから、シュルツがマジックバッグから出したカウチベッドに寝かせる。

「母上、フェアグリン、イツキをお願いします」
『らじゃ!』

シュタッ!!

ノインが返事をして、フェアグリンが右手をビシッと挙げた。
そそそっとイツキに寄り添うのを確認してから、シュルツは模擬戦用の大剣を持ち、倒れたままの騎士達に向かってニヤリと笑った。

「---さあて、ここからは俺が相手だ」

それを聞いた騎士達は、この世の終わりのような顔で震え上がったという。


それから小一時間、シュルツはツッコんでくる大勢の騎士相手に一歩も動かず、大剣をブンブン振り回して弾き飛ばしていたそうな・・・。

樹希が起きたときには、午睡する前に見たまんまの光景が広がっていてその事に全く気付かず・・・。
シュルツにもう一度治癒魔法をかけてくれと言われたときも『何でまた?』と思ったくらい。

それを聞いて、樹希は思わず至極残念そうに言った。

「シュルツの戦ってる姿、見たかったな・・・。森だと一瞬で終わっちゃうからさあ・・・。きっと格好良かったよねー」

それを聞いたシュルツがもう一戦しようとして騎士達が震え上がった。

さすがに樹希も気付いて思わずシュルツを止めた。
幾ら訓練だとしても、アレだけボロボロで痛そうだったのだからもう良いよ、と。

「それがお仕事だなんて凄いよね。僕はそういうことは全く出来ないから尊敬します。毎日ありがとう。怪我しないように気を付けて頑張って下さい」

そう言って訓練場をあとにした。



「---可愛い」
「---なんてお優しい・・・」
「ここにいる間だけでもしっかり御守りせねば・・・・・・」
「「「おう---!!」」」

樹希達が去ったあとの騎士達はヘンなテンションで大盛り上がり。

そして滞在中は樹希の行動に逐一目を配り、早い段階で各々一つクッションを持ち歩くようになる。

---ありとあらゆる場所で樹希が転けるので・・・。

もちろんシュルツがいるときやノインやフェアグリンがいるときは心配ないが、結構な頻度で転けたり階段から落ちかけるので、騎士以外に使用人達も密かにクッションを持ち歩いていたのだったが・・・。

その事に樹希は気付かない。






※遅くなりました。






しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

セカンドライフは魔皇の花嫁

仁蕾
BL
星呂康泰、十八歳。 ある日の夕方、家に帰れば知らない男がそこに居た。 黒を纏った男。さらりとした黒髪。血のように赤い双眸。雪のように白い肌。 黒髪をかき分けて存在を主張するのは、後方に捻れて伸びるムフロンのような一対の角。 本来なら白いはずの目玉は黒い。 「お帰りなさいませ、皇妃閣下」 男は美しく微笑んだ。 ---------------------------------------- ▽なろうさんでもこっそり公開中▽ https://ncode.syosetu.com/n3184fb/

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

スキルも魔力もないけど異世界転移しました

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!! 入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。 死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。 そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。 「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」 「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」 チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。 「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。 6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!! CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け 相手役は第11話から出てきます。  ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。  役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。  そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。

【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~

一ノ瀬麻紀
BL
僕は、些細な喧嘩で事故にあい、恋人を失ってしまった。 後を追うことも許されない中、偶然女の子を助け僕もこの世を去った。 目を覚ますとそこは、ファンタジーの物語に出てくるような部屋だった。 気付いたら僕は、前世の記憶を持ったまま、双子の兄に転生していた。 街で迷子になった僕たちは、とある少年に助けられた。 僕は、初めて会ったのに、初めてではない不思議な感覚に包まれていた。 そこから交流が始まり、前世の恋人に思いを馳せつつも、少年に心惹かれていく自分に戸惑う。 それでも、前世では味わえなかった平和な日々に、幸せを感じていた。 けれど、その幸せは長くは続かなかった。 前世でオメガだった僕は、転生後の世界でも、オメガだと判明した。 そこから、僕の人生は大きく変化していく。 オメガという性に振り回されながらも、前を向いて懸命に人生を歩んでいく。転生後も、再会を信じる僕たちの物語。 ✤✤✤ ハピエンです。Rシーンなしの全年齢BLです。 11/23(土)19:30に完結しました。 番外編も追加しました。 第12回BL大賞 参加作品です。 よろしくお願いします。

処理中です...