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75 シュヴァルツ公爵家騎士団 2
しおりを挟む騎士団の詰め所は公爵家の裏手にあるそうで、そちらに併設して訓練場というか鍛錬場というか、公爵邸の三倍くらいの広さのグラウンドがあるんだって。
そこで日々、鍛錬をしているそうな。
もちろん半分は魔法の訓練用で、グラウンド全体に結界魔法が施してあって、よっぽどの事が無ければ結界に罅が入ることも無いそう。
だから安心して思い切り訓練出来るんだって。
「まずは自己紹介だよね、シュルツ」
「・・・・・・・・・・・・そうだな。不本意だが挨拶は必要だな・・・」
「・・・めちゃくちゃ間があったんですけど」
「気のせいだ」
そんなやり取りをしていると、いつの間にか騎士達が整列していてびっくりした。
『やっほー! イツキちゃん、さっき振り---!!』
「え、母様?」
「・・・・・・やはりいましたか・・・」
シュルツがそう言って騎士達を見回すと、ウン・・・なんか、ぼろぼろだった。
---アレか、噂の『地獄』をみたってヤツ・・・。
シュルツは彼等のハイライトの消えた暗い瞳を見て、心の中でご愁傷様としか言えなかった。
「こんにちは、母様。どうしてここに?」
『そりゃあ当然、指導するためだよね?』
「・・・・・・何を指導するの?」
『え? 組み手やら剣術やら魔法やら?』
「ん?」
『え?』
樹希が疑問符を浮かべて首を傾げた。
樹希の疑問に当たり前のように応えたノインだったが、樹希の『ん?』に同じように首を傾げる。
「---母上、イツキは分かっていないので、ソレでは伝わらないと思いますよ」
『んえ? ・・・・・・ああっ、そうゆうこと!!』
「? なあに?」
シュルツが助け船を出して、漸くノインが気付いた。
樹希はちんぷんかんぷんだ。
「あのな、母上は生前、この竜帝国の騎士団総長を任されていたんだ。そしてここの騎士団の訓練も引き受けていた」
『イツキちゃんがボクを作った時に戦闘出来るようにしてくれたじゃない? アレ、元々ボクが武闘家だったから出来たんだよ』
「・・・ああっ、だからかー! 僕、そういうのからっきしなんで上手くいくか心配だったんだけど、もの凄くしっかり動いてたからびっくりしたんだよねぇ」
シュルツの説明の後にノインが教えてくれて納得した樹希。
「・・・・・・ところで騎士団総長って、どんな役職?」
「---っはは、そうだよな、分からないよな」
『えーとね、騎士団でも第一とか第三とか色々と別れていっぱいあるんだよ。それらをぜーんぶ纏めた組織のトップって事』
「・・・ああ、軍隊でいうところの大将軍みたいな・・・えっ?! そんなに凄いの?! こんなに可愛いのに、強いの?!」
『強いんだよー! 可愛い子から可愛い貰った!!』
「・・・良かったですね」
そんな三人?のやり取りを直立不動で見ていた騎士達は思っていた。
---良いから早く紹介してくれ!!
すでにノインの特訓で死にかけている者、多数だった。
シュルツが空気を読んで軌道修正してくれて、漸く挨拶に入る樹希だった。
「こんにちは。精霊の森の【管理者】を任されました、樹希です。ハイエルフです。後、ココにいるシュルツのつ・・・番い、です。よろしくお願いします!」
シュルツに下ろして貰って、挨拶をするとペコリとお辞儀をする。
シュルツの隣に並ぶと背の低さがもの凄く強調されて、子供にしか見えない。
ここで騎士の一人がうっかり地雷を踏む。
「---あの・・・その、管理者殿は随分と、小柄ですが・・・」
「・・・・・・19です」
「・・・・・・え?」
「19歳です! とっくに成人してます! もう育ちません!!」
騎士の言わんとする事に気付いてヤケクソ気味に自己申告する樹希。
涙目になっている。
ソレを見たシュルツとノインが一斉に威圧をして、辛うじて立っているが、騎士達は全員ブルブルと震えて顔が真っ青だった。
---この馬鹿ヤロウ! 空気を読めよ! 事前情報聞いてたろう!!
他の騎士達は、うっかり発言をした新人騎士を心の中で罵倒した。
---この後、更なる地獄を見る事になる。
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