72 / 89
71 お茶会当日の朝のシュヴァルツ公爵家 1(side使用人)
しおりを挟むココは使用人達の控室。
手の空いている使用人達が、シュルツ様のお部屋へ誰が朝食を運ぶのかを決めるため、静かに闘志を燃やしております。
---いつの間にか早朝にひっそりと邸に帰っていらしたシュルツ様が大事そうに抱えている小柄な方。
その方がシュルツ様の番い様で精霊の森の【管理者】様ですね。
眠っていらっしゃるのか、シーツで包まれています。
そのシーツがシュルツ様が歩き出すとひらりとはだけて、そのご尊顔がちらっと見えました!
---なんて可愛らしい・・・!!
シュルツ様の掌に収まりそうな小さなお顔に薄紅の小さな唇。
真っ白な肌に薄金茶色のふわふわ柔らかそうな髪。
ああっ!!
その閉じた瞳の色が気になります!!
シュルツ様はシーツをかけ直し、こちらをちらっと見てから無言でご自分の部屋へ入ってゆかれました。
---と、戻ってきた先輩使用人が興奮してその様子を使用人控室で話すものだから、皆、その話題で持ちきりに・・・。
そのうち旦那様方の朝食の時間となりました。
食堂では旦那様がノンノンと共にテーブルに着き、アハト様は何時ものように番い様とご自身のお部屋で、シュルツ様もご自身のお部屋で摂られるだろうというので、その準備に取りかかります。
そこで冒頭のように、シュルツ様の元へ誰が向かうかという朝食争奪戦になるのです。
「ココは一度面識のある私が!」
「いやいや、一度見たんだから別の人にするべき!」
「じゃあじゃんけんで!!」
「負けるが勝ちで! じゃんけん---」
「何をしているのです」
「え」
「あっ」
「げっ」
不意に現れた執事長に驚き固まった使用人達。
そこに物理的に魔法の雷が落ちました。
執事長の雷魔法のサンダーですね。
ピンポイントで落ちるのでこちらには被害はありません。
私?
私はあの争奪戦には加わっておりませんでしたので無事ですが。
彼女達は純粋な竜人なので、私には太刀打ち出来ませんし。
そこに執事長がこちらを見て指示を出します。
「そこの貴方・・・新人のエリン。シュルツ様のお部屋に朝食を運びなさい。後はシュルツ様の指示に従って深入りしないように。くれぐれも良いですね?」
「---は、はい!! すぐにお持ちします!!」
私は急いで厨房に向かい、ワゴンを受け取ると静かにシュルツ様のお部屋をノックする。
扉を開けるシュルツ様に緊張しつつ部屋の中へ入れて貰うと、奥の椅子に座っている番い様が見えた。
---うっわ---顔小っさ!!
お人形さんみたい。
瞳が新緑色で綺麗・・・。
「後は俺がするから戻って良いぞ」
シュルツ様に言われてハッとする。
片付けのことをシュルツ様に話した後、ふと視線を感じて目を向けると番い様と目が合って微笑まれた。
---かっ可愛い---!!
思わずぽっとしてしまい、慌ててお辞儀をして部屋を辞した。
ソレから控室に戻ると先輩方から質問攻めにあい、その騒ぎで再び執事長から物理的に雷が落とされるのでしたが・・・。
---え?
私は落とされませんでしたよ。
何故でしょう?
ちなみに私は男の娘なので、執事長の『貴方』呼びは合ってますよ。
仕事以外では一人称『僕』なので。
女装は趣味です。
この職場ってそういうの許してくれるから大好きです。
私は人族なので番いの感覚は分かりませんが、たった一人を愛する心が羨ましいです。
---私は孤児院に捨てられて、15歳で孤児院の慰問にいらっしゃった公爵様に運良く雇われて、はや1年。
公爵家に仕える使用人として恥ずかしく無いように教育を施されて、最近、漸く新人デビューしたばかり。
そんな私の教育係を務めて下さった執事長が実は私のタイプなんですけどね。
いまだにお若い見た目でイケボなイケオジです。
人族での40代くらいに見えます。
ほっほ、なんてお爺さんっぽい笑いもギャップです。
包容力がありまくりな感じが最高なんです。
・・・まあ、竜人族ですから、聞いたことはありませんがあの方にも奥方様か番い様がたぶんいらっしゃるでしょうから・・・。
私の淡い恋心はそのうち消えるでしょう。
---なんてしんみりした気持ちが、この後のお茶会で霧散するとはこの時は思いもしませんでしたが・・・。
※何となく察した方もいるんじゃないですかね?
次も使用人視点の予定です。
夏休みの宿題の追い込みで執筆が滞ってます(作者の宿題ではありません(笑))ので、更新不定期です。
スミマセン。
414
お気に入りに追加
2,657
あなたにおすすめの小説
セカンドライフは魔皇の花嫁
仁蕾
BL
星呂康泰、十八歳。
ある日の夕方、家に帰れば知らない男がそこに居た。
黒を纏った男。さらりとした黒髪。血のように赤い双眸。雪のように白い肌。
黒髪をかき分けて存在を主張するのは、後方に捻れて伸びるムフロンのような一対の角。
本来なら白いはずの目玉は黒い。
「お帰りなさいませ、皇妃閣下」
男は美しく微笑んだ。
----------------------------------------
▽なろうさんでもこっそり公開中▽
https://ncode.syosetu.com/n3184fb/
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~
一ノ瀬麻紀
BL
僕は、些細な喧嘩で事故にあい、恋人を失ってしまった。
後を追うことも許されない中、偶然女の子を助け僕もこの世を去った。
目を覚ますとそこは、ファンタジーの物語に出てくるような部屋だった。
気付いたら僕は、前世の記憶を持ったまま、双子の兄に転生していた。
街で迷子になった僕たちは、とある少年に助けられた。
僕は、初めて会ったのに、初めてではない不思議な感覚に包まれていた。
そこから交流が始まり、前世の恋人に思いを馳せつつも、少年に心惹かれていく自分に戸惑う。
それでも、前世では味わえなかった平和な日々に、幸せを感じていた。
けれど、その幸せは長くは続かなかった。
前世でオメガだった僕は、転生後の世界でも、オメガだと判明した。
そこから、僕の人生は大きく変化していく。
オメガという性に振り回されながらも、前を向いて懸命に人生を歩んでいく。転生後も、再会を信じる僕たちの物語。
✤✤✤
ハピエンです。Rシーンなしの全年齢BLです。
11/23(土)19:30に完結しました。
番外編も追加しました。
第12回BL大賞 参加作品です。
よろしくお願いします。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる