66 / 89
65 お茶会前日のシュヴァルツ公爵家からの 1
しおりを挟むシュルツの番いであるイツキがお茶会で初めて公爵家を訪れるという前日。
ここ公爵家では迎え入れる準備とお茶会の準備で大忙しだった。
ゼクスは休暇申請時の直談判で今日から5日間の休暇をもぎ取った。
たった5日と言うなかれ。
宰相職が連休を、ソレも5日も取れること自体稀なのだ。
そしてアハトは言わずもがな。
ギルミアを得てから城には出仕していない。
一応、ギルミアを側に置いて公爵家に持ち込んだ書類などを捌いてはいるが、今のアハトの優先度は第一が番いであるギルミアの世話、第二が公爵家の執務、そして宰相補佐が最後なのだ。
何故公爵家の執務が二番目なのかというと、単にギルミアと一緒の時間が取れるから・・・という至極単純な理由なのだが。
いずれにせよ、番い最優先なのは竜人ならではなので、苦笑はされども苦言は言われない。
そしてアハトも父である宰相と同じく、イツキとの茶会の為に5日、仕事を空けてある。
その分、だいぶ先までの急ぎの仕事を終わらせてあるが。
「アハト、僕は、準備・・・何すればいい?」
着替えをさせられて朝ご飯をアハトの膝の上で給餌されたギルミアが、明日のお茶会の事を聞いた。
アハトに助けられてからずっと、何をするにもアハトが世話を焼いてくれるため、公爵家のことは元より、お茶会なんて事も分からない。
なので何をするにしてもギルミアはアハトに聞くのが当たり前になっていた。
アハトに聞けば間違いない。
ギルミアはアハトに絶対の信頼を寄せていた。
---依存しているとも言えるだろう・・・。
しかしソレも仕方のないこと。
自分を絶望の淵から掬い上げてくれた、しかも番いだという竜人。
幼かったギルミアは、両親からの愛情を絶たれた上に、首輪で長い年月、感情を抑えつけられていた。
そこに自分だけに愛情を注いでくれる存在を得て、ギルミアの心はアハトへと一気に傾いた。
こうしてギルミアにとってもアハトにとってもWinWinな関係になったのである。
番いに重い愛情を向け、番いがソレを当たり前のように受ける。
まさに竜人にとっては最高の相手である。
---まあ、シュルツとイツキも似たようなモノ同士だが。
「ギルミアが出来る準備は、体調を整えて明日の衣装を試着することかな?」
にっこり笑ってそう言うアハトに、何の疑いも持たずに頷くギルミア。
アハトは食休みの後、ギルミアに明日着る予定の衣装を着せ付けた。
「・・・・・・可愛い」
奇しくもシュルツと同じ感想だった。
ギルミアの衣装もノインの手作りで、しかもイツキとお揃いだった。
故に、膝小僧の見えるハーフパンツでこちらは完全なるショタッ子なのだが。
もちろんアハトはお触りは控えめである。
・・・何処まで、とは聞かないで欲しい。
アハトは可愛いギルミアの姿を自分が真っ先に見られたことに大満足して、いそいそと衣装を脱がせて違う服に着替えさせると、使用人の邪魔にならないところから準備の様子をギルミアに見せてやる。
「明日は朝のウチにシュルツがイツキを連れて公爵家に転移してくるから、お互い、支度が済んでから顔合わせをしよう」
「・・・うん、楽しみ」
アハトに明日の予定を聞かされて、ウキウキ気分のギルミア。
夜、わくわくして眠れないかと思ったが、昼間の準備で疲れたのか、ベッドに入るとストンと眠りに落ちた。
---翌朝、シュルツが眠ったままのイツキを連れて転移してきたらしい、と聞いたのは、起きてすっかり支度の済んだ後であった。
437
お気に入りに追加
2,657
あなたにおすすめの小説
セカンドライフは魔皇の花嫁
仁蕾
BL
星呂康泰、十八歳。
ある日の夕方、家に帰れば知らない男がそこに居た。
黒を纏った男。さらりとした黒髪。血のように赤い双眸。雪のように白い肌。
黒髪をかき分けて存在を主張するのは、後方に捻れて伸びるムフロンのような一対の角。
本来なら白いはずの目玉は黒い。
「お帰りなさいませ、皇妃閣下」
男は美しく微笑んだ。
----------------------------------------
▽なろうさんでもこっそり公開中▽
https://ncode.syosetu.com/n3184fb/
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~
一ノ瀬麻紀
BL
僕は、些細な喧嘩で事故にあい、恋人を失ってしまった。
後を追うことも許されない中、偶然女の子を助け僕もこの世を去った。
目を覚ますとそこは、ファンタジーの物語に出てくるような部屋だった。
気付いたら僕は、前世の記憶を持ったまま、双子の兄に転生していた。
街で迷子になった僕たちは、とある少年に助けられた。
僕は、初めて会ったのに、初めてではない不思議な感覚に包まれていた。
そこから交流が始まり、前世の恋人に思いを馳せつつも、少年に心惹かれていく自分に戸惑う。
それでも、前世では味わえなかった平和な日々に、幸せを感じていた。
けれど、その幸せは長くは続かなかった。
前世でオメガだった僕は、転生後の世界でも、オメガだと判明した。
そこから、僕の人生は大きく変化していく。
オメガという性に振り回されながらも、前を向いて懸命に人生を歩んでいく。転生後も、再会を信じる僕たちの物語。
✤✤✤
ハピエンです。Rシーンなしの全年齢BLです。
11/23(土)19:30に完結しました。
番外編も追加しました。
第12回BL大賞 参加作品です。
よろしくお願いします。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる