優しい庭師の見る夢は

エウラ

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57 ノンノン、ナニかを生み出す 2

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「だーかーらーっ!! ホントなんですってば!!」
「『よっ!』って、『おっひさー』って言ったんです!!」
「あーはいはい。分かったから仕事しなさいね」
「「絶対、信じてなーい!!」」

執事長のスミスに適当に流されて、ぶうぶう文句を言いつつも仕事に戻っていく使用人達を見送り、溜息を吐く。

「まあ、喋っても不思議では無いのですが・・・」

本当にあのウサギのぬいぐるみは亡き奥方様に見た目も行動もそっくりなので有り得無い話では無いのですが・・・。

そもそも、あのウサギのぬいぐるみは【管理者】イツキ様が錬金術で造った上に、転移魔法陣を刻んだ魔石が万能霊薬エリクサーの材料の一つという稀少なモノ。

その事を知るのは公爵家当主と御子息様方二人、イツキ様の専属護衛の影5人、そして執事長である私のみ。

それ故、私達以外の者はただの動くぬいぐるみオートマタという認識のため、最初は皆、普通のぬいぐるみなのだと思っていました。

シュルツ坊ちゃまが旦那様のために奥方様に似せたぬいぐるみを御用意なされたのだとほのぼのとしていましたが・・・。

深夜の徘徊での不審者撃退や先頃のイツキ様奪還の様子に、奥方様降臨を疑いだした使用人達。

そこへ来て先ほどの「喋った」騒動・・・。

そして最近奥方様のお部屋へ出没しているとの影からの情報。

---影達も、あまり近付くと気配を察知されて威圧されるため、近寄れないのだとか。

ますます奥方様降臨説、有力ですね。

一体何をしておられるのか・・・。



一方その頃、生前ノインが過ごした公爵夫人の部屋で、ノンノンは一心不乱に手を動かしていた。

恐るべき速さで作成しているソレは、自分に似たウサギのぬいぐるみ二つ。

一つは金茶色に新緑色の瞳で、もう一つは薄い金色に右目が黒で左目が翠。
サイズは自分の身長の半分くらい。

---そう、イツキとギルミアにプレゼントするぬいぐるみ・・・自分の分身を縫っていたのだ。

生前のノインは武闘派だったが、実は裁縫が得意で、可愛らしいモノも大好きだった。

なので人形を作ったり、更には髪飾りや衣装などの小物も作って着せたりしていたのだ。

その腕を活かして息子達の可愛い番い達に自分のような、護衛も出来るぬいぐるみを作ろうと思い立ち・・・。

そのまま残っている公爵夫人自分の部屋で裁縫をしていたのだ。

幸いなことに材料もそのまま保管してあったので、気兼ねなくバンバン使う。
そして完成したぬいぐるみに入れるため、空の魔石に自分の魔力を分け与えた。

---この場合はノンノンの中の転移魔法陣を刻んだ魔石の魔力だが・・・。
そのお陰で、ノンノンよりは劣るが彼女と同じ戦闘センスを持つ動く小振りなウサギのぬいぐるみが完成した。

『コレを一度イツキちゃんに見せて、物理・魔法耐性と状態保存の魔法を付けて貰おうっと』

鼻唄でも出そうな感じでご機嫌になったノンノンは、早速二体の子ウサギを両脇に抱えてゼクスのいる執務室にのすのすと歩いて行くのだった。


ゼクスの執務室に到着すると、ノンノンは念話で叫びながら片脚でドアを蹴ってノックした。

・・・・・・両手が塞がっていたので。

『たのも---!!』

同時にドアの下をげしげし蹴る。

「---はいはい。・・・・・・ノイン、相変わらず口足癖悪いねぇ」
『しゃーない。そこは死んでも変わらんよー』
「・・・はは、やっぱりノインはノインだね」

ドアを開けると両脇に子ウサギを抱えているノインが可愛くて、以前のような口調も聞こえて、ゼクスは泣き笑いのような顔で微笑んだ。

「どうぞ中へ、愛しの奥様」
『・・・驚かないなー、ゼクスも相変わらずだね』
「いやだって、最初からソレっぽかったし?」
『えー、漸く喋れて、コレで驚かせられると思ったのにぃ・・・ちぇー』
「そういうところもノインだよ。・・・・・・お帰り、で良いのかな?」
『・・・・・・ふふっ、うん。ただいま、愛しの旦那様』

中に入ってひとしきり話して、二体の子ウサギのぬいぐるみの件を話すと、イツキの影に持っていって貰うことになった。

『じゃあ、魔法付与、頼むね。金茶で新緑色の子ウサギはそのままイツキちゃんのところに置いといて、オッドアイの子ウサギはギルミアちゃんにあげるから持って帰ってきてね』
『畏まり、奥方様』
『---あー、ノンノンで良いよ』
『・・・は、ノンノン』

そう言ってノンノンに触れると気配が消えた。

『・・・気に入ってくれると良いなー』
「君の作ったぬいぐるみだ、喜ぶよ」

何となく執務室にはほのぼのとした空気が流れていた。

「久しぶりに話すことがたくさんあるね。今夜は夜通し語ろうか」
『・・・・・・身体に悪いからソレはヤメロ』
「---ぷっ・・・そうだね。ほどほどにね」

そんなことも懐かしいやり取りだと、二人は笑った。




















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