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56 ノンノン、ナニかを生み出す 1
しおりを挟むシュルツとアハトにそれぞれ番いが見つかり、幸せの中、シュヴァルツ公爵家では心配事が絶えなかった。
それは息子二人の番いであるイツキとギルミアの事である。
イツキはめちゃくちゃ可愛いハイエルフで、記憶は無いが、過去、違法奴隷として育ったせいで稀に見る鈍臭さ、常識の無さ故に常に誰かしら影から見守っている。
ギルミアはアハトが名付けたエルフとダークエルフの可愛いハーフで、元から転移魔法を使えてエルフ特有の運動神経も良いが、まだ9歳という幼さに加え違法奴隷だったことも有り、世間知らず。
二人とも竜人の番いだと公表しているにも関わらず、可愛さ故か、エルフ故か・・・未だにちょっかいをかける輩がいるのだ。
「───懲りないねえ・・・」
ゼクスは溜息を吐く。
アハトも眉をひそめる。
ここにシュルツがいれば同じように呆れただろう。
「景緑国の出来事を知らぬ訳では無いでしょうに・・・」
「それだけ魅力的なんだろう。それか、お近づきになって政治的に利用したいのかもな」
「盟約で禁止されてますが?」
ゼクスの推測にアハトがすぐに反論するが・・・。
「ソレを知ってて手を出してくる時点で普通じゃないからな」
「・・・確かに・・・」
悩ましげに考え込んでいれば、ゼクスがふと思い出したように言った。
「───そういえば、ウサギが何やらコソコソやってたような・・・」
「・・・把握してないんですか、父上?」
「いやあ・・・ノイン、機嫌を損ねると、恐ろしいからなあ・・・」
「・・・もう完全に母上ですよね」
「そうだね」
苦笑しながらも嬉しそうなゼクスに、若干諦めのアハト。
「ウサギのぬいぐるみがコソコソって、何をやってるんでしょうね?」
「まあ、悪いことはしてないと思うよ? ・・・たぶん・・・」
「・・・・・・」
ちなみに今はギルミアはお昼寝タイムで、本当は目を離したくないが、裏黒い事を話すのにはちょうど良いというので執務室に集まったのだった。
「じゃあ、俺はギルミアの元に戻ってますから」
「・・・はいはい」
そそくさと戻る準備を始めるアハトに呆れつつ声をかけるゼクス。
そして思い出したようにニヤリと笑って続けた。
「良かったねえ、育て甲斐があって」
「ええ、そこは本当に感謝ですね。今更、数年待とうが竜人にとっては一瞬ですからね。可愛い幼少期を愛でられて最高です」
真顔で言い切られて一瞬呆気にとられるゼクスだが、すぐににっこり笑った。
「───うん。羨ましいよ。でもあんまり他所で言ってると変態って言われるからね?」
「言いませんよ。可愛い番いの様子を赤の他人に知られたくはありませんし」
「・・・公爵家は良いんだ?」
「家族ですから。使用人達は・・・まあ・・・・・・仕方ないので」
その言動にやはり竜人の独占欲や嫉妬が端々に感じられて、ゼクスは思う。
───シュルツよりもアハトの方がヤンデレっぽいなあ。
「・・・・・・大丈夫かな、ギルミアちゃん。なんか、アハトに良いように育てられそうなんだけど・・・」
あの様子だとアハトは間違いなく自分好みの子に躾けそうだな・・・。
あの子もイツキと境遇が似ている上に性格も優しげだから、なんか流されそう・・・。
「でもまあ、お互いが良いなら周りが口出す事じゃないかな。万が一、道理に外れるようなら肉体言語で矯正だが・・・・・・ノインが・・・」
───亡き妻の代わりのようなウサギ。
いやもう、ノインが乗り移った感じだから本人で良いよね。
彼女が何かコソコソやっているのが気になるけど、面白そうだから放っておこうかな。
「───え? ノンノンですか? そういえば奥方様のお部屋で何かしてましたね」
「うーん、でも何か悪さをしている様子は無いですよ? というか、あのお部屋の配置を把握してますよね? 公爵様が教えて差し上げたのですか?」
「───いや? ・・・でもそうか。そういうことならば、やはり・・・」
「・・・・・・奥方様降臨説、ありよりのあり・・・って事ですか?」
使用人の言葉に、ゼクスはニコッと笑って言った。
「それこそ『神のみぞ知る』だよ。仕事中、済まなかったね、ありがとう」
そういって去って行った公爵様を見つめて、使用人達はコソッと話をした。
「ぜーったい、奥方様だよね!」
「間違いなく。だって行動が全く一緒」
「その内『よっ!』って声かけられても不思議じゃないよねー」
『・・・よっ!』
「そうそう、こんな感じにね・・・えっ?」
「えっ?!」
今、この二人しかいないはずなのに、第三者の声がして思わず振り向けば、そこには左手を上げたノンノンが・・・。
『おっひさー』
「・・・・・・お、」
『お?』
「・・・・・・奥方様───っ?!」
キャーキャー叫びながらはしたなく駆けて消えた使用人達をポカンと見送るノンノン。
『・・・・・・ま、いっか』
頬をぽりぽりかく仕草をして、のすのすと奥方様の部屋に歩いて行くウサギだった。
※ちなみに口はパクパクしません。念話っぽい感じだから。
筆がノッたので更新します。
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