優しい庭師の見る夢は

エウラ

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55 遅い春と早い春(sideギルミア)

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僕はギルミア。

エルフとダークエルフのハーフで、つい最近まで違法奴隷だった。

名前は首枷で隷属化されたときに消された。
以来、僕は「おい」とか「お前」とか「クロ」とか呼ばれるようになった。

転移魔法の適性があったようで、そういう方に重点を置かれていろんな場所を命令で跳んだ。

ダークエルフの見た目が強かったせいで蔑んだ目を向けられることも多かったけど、首枷で感情を抑えつけられて、言葉も反抗できないように禁じられていた。

命令にと応えるときだけ話せた。
・・・話せたとは言えないか。

まだ小さかった僕は見た目もあっていやらしいこともされずにたぶん今は9歳。

そんなある日、精霊の森の【管理者】を転移で攫って、僕のような首枷を付けろと言われた。

精霊の森・・・管理者・・・。
物心ついたときに両親が何時も言ってた。
悪いヒトは入れない森で、管理者は森やこの世界にとって大切なヒトだと。

ソレを攫うの?

でも僕はタダの奴隷。
言うことを聞いて動くしかなかった。

難なく入れた森の中、小屋のところで寝ているエルフの子が見える。
たぶんあの子がそうなんだろう。

転移でその子を掴んで再び転移するとき、大きな男の人が見えた。
直感でこの子の大切なヒトだと思ったけど、今の僕にはどうしようもない。

城に着いてこの子に首枷を付けると、元いた場所・・・地下牢獄に転移した。

命令が済むと、ここに戻るように首枷で命令されてるから。
後はずっとココにいるだけ。

城内が騒がしくても関係ない。
次の命令があるまでは動けない。

ソレからどれくらい経ったのか、不意にご主人の『我を助けろ』というキーワードが聞こえて転移すると、目の前にはあの子の大切なヒトに良く似たヒト。

ドキッとした。
何でだろう。
そのヒトと一緒に、ご主人を置いて転移しちゃった。

その後の優しい言葉、壊された首枷にぼろぼろ涙が止まらなくなっていって、ありがとうと口パクしたらだと言われて口にチュッとされて。

一緒に住もう、大切にするからって。
昔の記憶の中、朧気に覚えてた、番いの事。
たった一人を愛し続けるって。
僕がそうなの?
僕だけ愛してくれるの?

聞き間違いでもいいって思って、コクコクと頷いた。

夢なら醒めないで。



───今、僕は夢の続きを見てる。

温かいお風呂で身体中モコモコ泡で洗って貰って、美味しい果実水?を飲んで。
大きいけど清潔なシャツを着せて貰って(彼シャツと言うらしい)。

全部、このヒトがやってくれた。

優しく大きな手で髪を梳いてくれて、うとうと・・・。

「おやすみ。良い夢を」

そう耳元で囁くこのヒトは僕を助けてくれたヒト。
竜人さんなんだって。

僕は気持ち良くてそのままふかふかなお布団にぽすん。

次に目が覚めても夢はずっと続いてるみたい。

「俺は竜帝国のシュヴァルツ公爵家の嫡男・・・えーと、長男でアハトと言うんだ。・・・君の名前は?」
「な、まえ、ない。どれい、なって、なく・・・なた」
「───っそうなのか? 辛かったな」
「なまえ、・・・あは、と、さん、つけ、て?」
「っああ、俺で良いなら喜んで! そうだな・・・綺麗なオッドアイの瞳だから、ギルミアはどうだ? 輝く宝石という意味があるんだ。君の瞳はそれぞれ宝石のようにキラキラしてるから」

ソレを聞いた僕は、嬉しいと目一杯の笑顔で応えたのだった。


───そして名前を貰って、漸く、コレが現実で僕はアハトさんの番いで、ずっと側にいて良いんだと認識したのだった。





※書き上がったので更新します。
明日、明後日は出来ないかもしれません。


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