52 / 89
51 ノンノン無双(side騎士団長)
しおりを挟む竜帝陛下の緊急事態宣言からわずか一時間弱。
皇城から次々と竜体となった騎士達が飛び立って行く。
ココから景緑国までは翔べば直線距離になるので一時間もかからないだろう。
皆、鍛え上げている上に竜体での本気の飛翔だ。
陛下も行きたがったが、宰相であるシュヴァルツ公爵閣下が言い負かしてお留守番になった。
最後までごねていたが、いや貴方、国のトップとしての自覚を持って下さいよ。
『つまんない』って、子供か?!
そんなこんなで着いた先では、一応形だけの『宣戦布告』をして王城へと突撃していった。
国民の大半はビビって腰を抜かしている。
そりゃあそうだ。
閉鎖的なこの国に竜人はいない。
竜体も当然見たことがないだろう。
そんな竜が何体も・・・いや十数体も空から現れて宣戦布告をしたのだ。
今頃は王城も混乱を極めているだろうな。
思った通り、慌てて集まってきた兵士達を竜人に戻ってあっさりと無効化していく。
呆気ない。
弱い。
その言葉に尽きるが、何処から湧いてくるのか結構な人数だ。
「団長、兵に混じって奴隷がおりますが、如何致しますか?」
「・・・ココの奴隷達はおそらく大半が首枷で無理矢理命令されている違法奴隷だろう。出来るだけ無傷で無力化、保護を。後で確認作業を行う」
「はっ」
───本当にクズだな。
正規の奴隷以外は解放してアフターケアが必要だな。
そんなやり取りをしながら、ふと打撃音のする方へ目を向けると、宰相閣下曰くのウサギのぬいぐるみが敵兵を殴り飛ばしているところだった。
「───は?」
ぬいぐるみだよな?
ふわっふわの真っ白い毛並みで柔らかそうなもこもこに見えるんだが?
・・・・・・そういえば、高速で翔ぶ竜体の宰相閣下の首元に自力でしがみ付いていたような・・・。
え?
見た目通りのぬいぐるみじゃ無いのか?!
そんでもってあの撲殺具合は間違いなく前騎士団総長!!
───まさか、本当に、乗り移って・・・?!
ソレからはノンノンの独壇場だった。
後から後から湧いて出る兵士達を殴る蹴る。
一応手加減はしているようだが、軒並み吹き飛ばされて建物や塀、樹木、果ては地面にまでめり込んでいく。
我等騎士団や宰相閣下お抱えの影達は、ノンノンの進んだ後をもっぱら捕縛していくだけ・・・。
ちなみに、その影達にも一体ずつ動物型のぬいぐるみが付いていて、それぞれが取り逃がした敵兵達や王城の貴族達を倒して捕縛していた。
アレ等もウサギのぬいぐるみと同じような性能なのだろう。
一体、何を如何したらあんなぬいぐるみが出来上がるんだ?!
あちらこちら吹き飛ばした敵兵達で破壊しながら淡々と進むノンノン。
一足先に王の間に着いてすでに制圧済みの宰相閣下と宰相補佐・・・ゼクス殿とアハト殿がウサギのぬいぐるみを見てにっこり笑う。
「やあ、ノイン。ご苦労様」
「ご苦労様です、母上」
「───ぶっ?!」
アハト殿、今、母上って言った?!
それでもって、ノンノン。
しゅたっと左手を上げてドヤってした!!
思わず噴き出した騎士団長。
「騎士団長、何か問題が?」
ゼクス殿に威圧的な笑顔で問われて速攻で顔を横に振る。
何も問題御座いません!!
そろーっと視線を逸らした先には、影達に捕縛され、真っ青な顔でガタガタと震えている景緑国の国王がいた。
「───お待たせしました。イツキを救出して参りました」
ちょうどタイミング良くシュルツ殿が、攫われた【管理者】殿と思われる小柄な方を片腕に抱いてその場に現れた。
そのご尊顔はマントで隠され窺い知れなかったが、おそらく眠っておられるのだろう。
この混乱極まりない騒ぎの中でもピクリとも動かなかった。
「イツキは無事か?!」
ゼクス殿がシュルツ殿に真っ先に確認する。
アハト殿も心配そうだ。
「・・・最悪は免れましたが、魔力封じの首枷に鎖でベッドに繋がれ、衣服が裂かれておりました」
「!! 本当にクズだな!!」
「イツキは如何した?」
シュルツ殿の言葉にゼクス殿とアハト殿は怒りを露わにする。
「今は魔法で眠らせております。俺が他に預けるのも触らせるのも耐えられないので・・・」
「そうだね。それが良い」
「じゃあ、役者が揃ったところで、このクズ共の後始末だな」
シュルツ殿は愛おしそうにマントの上から番い殿に口付けを落とす。
ゼクス殿とアハト殿はホッとしてから今回の元凶に向かってニタリと黒い笑みを浮かべた。
・・・・・・あの顔の宰相閣下達は絶対に敵に回してはいけない。
騎士団長は本能で恐怖を感じた。
450
お気に入りに追加
2,657
あなたにおすすめの小説
セカンドライフは魔皇の花嫁
仁蕾
BL
星呂康泰、十八歳。
ある日の夕方、家に帰れば知らない男がそこに居た。
黒を纏った男。さらりとした黒髪。血のように赤い双眸。雪のように白い肌。
黒髪をかき分けて存在を主張するのは、後方に捻れて伸びるムフロンのような一対の角。
本来なら白いはずの目玉は黒い。
「お帰りなさいませ、皇妃閣下」
男は美しく微笑んだ。
----------------------------------------
▽なろうさんでもこっそり公開中▽
https://ncode.syosetu.com/n3184fb/
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~
一ノ瀬麻紀
BL
僕は、些細な喧嘩で事故にあい、恋人を失ってしまった。
後を追うことも許されない中、偶然女の子を助け僕もこの世を去った。
目を覚ますとそこは、ファンタジーの物語に出てくるような部屋だった。
気付いたら僕は、前世の記憶を持ったまま、双子の兄に転生していた。
街で迷子になった僕たちは、とある少年に助けられた。
僕は、初めて会ったのに、初めてではない不思議な感覚に包まれていた。
そこから交流が始まり、前世の恋人に思いを馳せつつも、少年に心惹かれていく自分に戸惑う。
それでも、前世では味わえなかった平和な日々に、幸せを感じていた。
けれど、その幸せは長くは続かなかった。
前世でオメガだった僕は、転生後の世界でも、オメガだと判明した。
そこから、僕の人生は大きく変化していく。
オメガという性に振り回されながらも、前を向いて懸命に人生を歩んでいく。転生後も、再会を信じる僕たちの物語。
✤✤✤
ハピエンです。Rシーンなしの全年齢BLです。
11/23(土)19:30に完結しました。
番外編も追加しました。
第12回BL大賞 参加作品です。
よろしくお願いします。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる