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34 春が来た!(sideシュヴァルツ公爵家&精霊王)
しおりを挟む本日のイツキの影警護担当のゼロとドゥエから宰相の執務室にいたゼクスに通信が入ったのはお昼前。
『主様。良い知らせです。シュルツ様がとうとうイツキ様と両想いになられました』
そう聞こえて、一瞬ポカンとしたゼクス。
側で補佐を務めるアハトにも聞こえていたようで、同じようにポカンとした。
「───っそれは、本当か?!」
「冗談じゃないよね?!」
通信魔導具に思わず詰め寄って叫んでいた。
たまたま居合わせた文官が驚いてソファに蹴躓いていたが、そんなこと構っていられなかった。
『本日、少し前にちゃんとはっきり言葉で熱烈な愛の告白をしまして。ソレを反芻して漸く理解し、自覚したイツキ様も同じように愛の言葉を返してらっしゃいました』
『おかげで、用事が済んだらさっさと家に帰りました。これからいちゃいちゃらしいです』
影の割と明け透けな物言いに、身の置き場が無くなっていた文官が顔を赤らめる。
「ヨシ分かった! お前たちは邪魔にならぬように護衛を続けろ。邸には祝いの料理を頼んでおけ。我等もなるべく仕事を片付けて戻るからな!」
『畏まり』
「・・・聞いたな、アハト。全力で片付けて定時で帰るぞ!」
「はい!」
「・・・・・・あのぅ・・・、もしや宰相閣下の下の御子息様に番い様が・・・?」
おずおずと声をかける文官にハッとしたゼクスは、居住まいを正すと頷いた。
「ああ、すまんな。実はそうなんだ。なかなか進展せずにヤキモキしていたのだよ。いやあ、良い日だ!」
「ソレはおめでとうございます! あの、他所でこの話をしてもよろしいでしょうか?」
「ああ・・・お相手の詮索はするなと釘を刺してくれるなら・・・。繊細な方なのでな」
「もちろんですとも! 慶事です。不躾な事は言いませんよ!」
「じゃあ頼むぞ」
「はい、では失礼致します」
嬉々として執務室をあとにした文官がこの話一大ニュースを城内に広めるのはあっと言う間だった。
後日、詳しく聞かせろと皇帝陛下からせっつかれるのはもう少し後。
───一方、精霊の森でも大騒ぎだった。
『精霊王様───! やっとくっつきました───!』
『竜の人がちゃあんと告白してーイツキも考えてーお互いラブラブ?』
『竜の人嬉しそうだった』
『イツキは真っ赤っかだった!』
『『『『可愛かったよね───!』』』』
イツキにくっついている精霊達がきゃいきゃい騒ぎながらそう報告してきたのだ。
『真か?! ───はあ、ようやっとか!』
『マジで?!』
『うーむ、思ったよりは早かったな』
『竜の子はイツキの鈍さに耐えておったが、番いだしのう。堪えきれなかったか』
『耐えてたほう』
『寧ろ良くここまで耐えたよな。竜の子のイツキを大切に想う心は素晴らしいものだ』
一堂に会した精霊王達はめいめいにそう語った。
皆、一様にニコニコしている。
シュルツがやって来てからの数日間は、精霊王にとっては瞬きにもならないくらいの時間だ。
様子を見ていたが、イツキの恋愛経験の無さからこの先、かなりの長期戦を覚悟していた。
精霊王にとっての長期戦とは年単位を表す。
ソレが僅かな期間で一応、両想いになれたのだ。
シュルツは相当グイグイと押したのだろう。
まあ、イツキにはそれくらいがちょうど良い。
『しかし、問題はこの後よな』
『そうだな・・・・・・気持ちが通じ合った後の行為・・・イツキはたぶん分かってないだろうな』
『初心だしのう』
『や、俺等も精霊だから知識しか知らんけど』
『竜人って、番い以外には発情しないんだっけ?』
『出来なくもないが、子を孕ませやすいのは番いとの発情期だと聞いている。誰も彼もが番いを得られる訳ではないからの』
『まあ、竜の子が上手くやるんじゃない?』
『だな。我等は喚ばれたらいけば良い』
暫くは二人っきりにしておいてやろう・・・。
精霊王や、精霊達はそう結論づけた。
気の済むまでいちゃいちゃしてくれ。
※寝落ちました(最近多いな)。スミマセン。
酷暑ですが皆様も御自愛下さい。
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